管理戸数58万戸の大和リビング(東京都江東区)が、生活まわりの機器を音声操作できる「AIスピーカー」を今後数年で管理30万戸分に導入する。スケールメリットを生かしてビッグデータを構築し、入居者の生活が便利になる新サービス創出につなげる。数十万戸規模の端末導入を明かした例は、業界で初めて。IoT戦略で先行したい同社の姿勢が鮮明になった。
家電ごとの電気使用量を測定
大和リビングが取り扱うAIスピーカーは、米グーグルの『Google Home Mini(グーグルホームミニ)』に独自開発の機能を加えたもの。本来備わっている照明・給湯器やウェブ検索などの音声操作のほか、「赤外線対応機器(テレビやエアコン)」「温度・湿度・照度センサー」「電力センサー」との連携を可能にしている。
親会社の大和リビングマネジメント(東京都江東区)の事業企画グループ長・山本浩司氏は「貸主と借主から成る賃貸住宅は、持ち家よりも普及のハードルが低い」と語る。同社が貸主となるサブリース戸数は50万戸強と管理の大半を占める。
AIスピーカーを軸に蓄積するデータは、あくまで生活の利便性を向上する新サービス創出に向けて、分析に役立てるものだ。
IoTの推進で同社が実現したい生活の理想像は「入居者のことを気遣えるコンシェルジュがいる状態」(山本氏)という。例えばAIが入居者に「寒くなったから、エアコンつけましょうか?」などと自発的に提案できる環境をイメージしている。
その意味で重要なのがAIスピーカーと「電力センサー」との連携だ。家電ごとの電力データをAIが解析し、時間帯別にどの家電がどの程度使われたかを分析できるようになる。
入居者から見れば、電気使用量の見直しが簡単になる。アプリ上で、家電ごとの電力使用量や月末使用予測値などが確認できる。また無駄な電力消費をAIが自動制御する機能もあり、電気代の削減に役立てることが可能だ。
同社のIoT構想は4段階あり、順に「家電コントロール」「IoT電力事業」「睡眠改善プログラム提供」「IoT事業推進(周辺事業の展開)」と続く。現在は2段階目の「IoT電力事業」を進めている。まもなく3段階目に着手する予定だ。
プリンシプル住まい総研(東京都港区)の上野典行所長は「(AIスピーカーの設置で)企業の空室対策そのものが進化する可能性が出てきそうだ」とコメントした。