賃貸住宅へのスマートロック導入が加速している。野村不動産(東京都新宿区)は、同社が開発する賃貸住宅650戸へ採用していく。大手管理会社も既存物件への設置に取り組む。物件の価値向上に加え、業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を進めたい管理会社の狙いがある。
開発する賃貸物件650戸に採用
賃貸住宅へのスマートロック導入の動きが活発化している。
新築での標準設備として物件開発を進めるのが、野村不動産だ。同社の展開する賃貸住宅シリーズ「プラウドフラット」9棟650戸の共用部や専有部各戸にスマートロックを設置する。6月と7月に竣工した2棟には採用済みで、これから建築する7棟にも順次導入していく。
既存物件へ採用推進
既存の管理物件への設置に注力する大手の動きも出てきている。
管理戸数56万7000戸超のレオパレス21(東京都中野区)は、管理物件44万戸を対象に、スマートロックへの切り替えを6月から本格的に始動。8月24日時点で約2500戸へ導入した。
設置費用は同社が負担する。「物件の付加価値が増し、稼働が向上した結果として、家賃が上昇する可能性があると考えている。鍵管理に関わる業務がほぼなくなるDXの効果も見込む」(経営企画部広報IR・広告宣伝グループ担当者)
グループで約9万2000戸を管理するパナソニック ホームズ不動産(大阪府豊中市)は、5月から既存の管理物件へスマートロックを導入。初年度7000台の設置を目指す。「スマートロックの普及は徐々に進んでいくと考える。入居希望者のセルフ内見が可能となることで、募集業務のデジタル化が進み、管理会社の業務も効率化すると思う」(事業企画部川見竜一部長)
管理会社の相談10倍
「管理会社からの問い合わせ件数は、2021年と比べ10倍以上の月もある」と、反響の多さを実感しているのが、スマートロック開発・販売のビットキー(東京都中央区)だ。
スマートロックの操作イメージ(ビットキー提供)
大手を中心に案件が増え、管理会社の取引先は約100社になった。賃貸住宅への導入実績数は非公開だが、分譲・賃貸含めた集合住宅6000棟で受注している。
福澤匡規COOは「電子契約の全面解禁で、デジタル化の最後の障壁が実物カギとなった。スマートロックにすることで、鍵の受け渡しの業務がなくなる。業務のデジタル化がワンストップでできるようになることで、管理会社の関心が高まっている」と話す。
商機を見出し、攻勢をかけるメーカーもある。大崎電気工業(東京都品川区)は、同社のスマートロック「OPELO(オペロ)」と三菱地所(東京都千代田区)のスマートホームサービス「HOMETACT(ホームタクト)」のシステム連携を8月に発表。空室時の鍵の受け渡しや鍵管理業務を効率化できるサービスとして、デベロッパーや管理会社に提供していく予定だ。
(2022年9月5日1面に掲載)