電気代削減で物件価値向上へ
買電を最適化
ボルタ(大阪市)が展開する家庭用蓄電システム「ENELEAGE Zero」は、太陽光発電設備を必要とせずに、電気料金の削減を実現する新しい蓄電システムだ。これまで太陽光発電設備の設置が難しかったマンションや賃貸住宅にも導入できることから、新たな蓄電池市場の開拓を目指す。
「電気代の安い物件」という新たな付加価値を提供できることが、ENELEAGE Zeroの最大の強みだ。太陽光発電設備がなくても電気料金の削減を実現できるため、従来は導入が難しかったマンションや賃貸住宅でも採用しやすい。一般社団法人日本卸電力取引所(JEPX)と連動する独自EMS(エネルギーマネジメントシステム)が30分ごとに変動する卸電力価格を自動で判断し、安い時間帯に充電、高い時間帯に放電することで、購入電力量を最適化。これにより、地域や利用状況によって異なるものの、電気料金を20~50%程度削減できるという。
山本武典社長は「大型の系統用蓄電池では同様の仕組みはあるが、それを一般家庭向けまで小型化し、利用者が直接メリットを受けられるようにした」と説明する。系統用蓄電池は電力売買による利益確保を目的とするケースが多い一方、同製品は「買電の最適化」に特化することで、利用者がより安価に電気を利用できる仕組みとした。
施工性も強みだ。ENELEAGE Zeroの設置工事は2~3時間、長くても半日程度で完了する。床置きの室内設置型で、本体サイズは高さ95cm、幅58cm、奥行き17.5cm。主に分電盤の近くに配置するため、洗面所や廊下などにも設置しやすい。最大8台まで並列接続でき、電力使用量の多い店舗や小規模事業所にも対応する。
マンションに展開
こうした製品開発の背景には、既存の家庭用蓄電池市場が抱える問題があった。従来は太陽光発電との組み合わせが前提となるため、屋根の形状や建物の構造、日照条件などによって設置できる住宅が限られた。
開発のきっかけとなったのは、日本卸電力市場の存在を知ったことだった。「再生可能エネルギーの導入が進む九州では、昼間に発電量が需要を上回り、年間約30万世帯分に相当する電力が利用されずに捨てられていた」(山本社長)。この余剰電力を市場価格の安い時間帯に蓄え、高い時間帯に利用する仕組みを家庭向けに実現できれば、太陽光パネルがなくても電気料金を削減できる。そうした発想から開発が始まった。
今後はマンション市場への展開を重点戦略に据える。太陽光発電設備の設置が難しい集合住宅でも導入できることから、分譲・賃貸を問わず幅広い需要を見込む。山本社長は「将来的にはマンションの各住戸に1台ずつ蓄電池が設置される世界を目指したい」と話す。入居者にとっては電気料金の削減が、オーナーにとっては物件の差別化や資産価値向上につながる設備として位置付ける。
販売面では、工務店やリフォーム会社、住宅設備会社に加え、賃貸住宅向け設備を扱う事業者との連携も強化する考えだ。代理店を通した販売価格は200万円前後。入居者の生活コストと防災性能の両面から賃貸住宅の価値を高める設備として普及させていく。
停電時も瞬時に切り替え
ENELEAGE Zeroは、災害時に入居者の安全を支える非常用電源としても機能する。停電を検知すると約0.01秒で自立運転に切り替わる。一般的な蓄電池では切り替えに5~30秒かかる場合があるが、同製品は照明やエアコン、パソコンなどへの電力供給をほぼ途切れさせない。冷蔵庫や照明、スマートフォンの充電など、1日1.79キロワットアワーの使用を想定した場合、約5.37キロワットアワーで72時間分の最低限のライフラインを確保できる設計だ。
高齢者や在宅介護を行う世帯、ペットを飼育する入居者への訴求材料にもなる。
ボルタ
山本武典社長
(2026年9月7日面に掲載)





