居住快適性と高利回りを両立【資産価値を高める建築設計・商品紹介】

アトリエボーヌ・丸山保博建築研究所,髙松建設,三井不動産レジデンシャルリース,奥井組,アーキテクト・ディベロッパー,アヴェントハウス,一般社団法人日本建築学会

商品|2023年02月21日

 競合物件がひしめく中、これからの賃貸住宅には、優れた設計コンセプトや高い居住性能が求められる。ここでは賃貸住宅の設計・建築を手がける5社の設計事例や規格商品を取り上げ、その特徴を探る。

アトリエボーヌ・丸山保博建築研究所、自然とのつながり生む中庭

経年を味わえる賃貸住宅

 「そこに住む人が、生活している喜びを感じられるような空間を提供する」。賃貸住宅の設計コンセプトをこのように掲げるのが、アトリエボーヌ・丸山保博建築研究所(東京都杉並区)の丸山保博代表だ。

 丸山代表が手がける賃貸住宅の最大の特徴は、自然光が差し込む緑豊かな中庭を有する点にある。常緑樹や季節ごとに花を咲かせる植物が植えられた中庭は、自然とのつながりや他者とのコミュニケーションが生まれる場所として機能する。入居者はこの中庭を通って住戸に入っていく。

アトリエボーヌ・丸山保博建築研究所 東京都練馬区の物件の中庭の写真

東京都練馬区の物件。中庭は入居者にとって特別な空間だ

 賃貸住宅に中庭を取り入れる設計は、賃貸経営において重要指標となる利回りの改善においても大きく影響している。建築費の1~2割程度を占める共同廊下を排することができ、かつ居室面積も広くできるからだ。これは、丸山代表がもう一つの設計コンセプトとしている「経営的観点で建物の高利回りを持続可能とする空間の提供」に通じる。

 二つのコンセプトは建物に使用する素材にも反映されている。建物の外壁には、白色セメントに土を混ぜた土壁を採用。自然との一体感を持たせた設計ゆえに、経年による汚れも味わいだと感じられる。汚れが気になる場合は高圧洗浄で清掃でき、ヤスリで軽く削って上から塗り直すことでも補修できる。

 居室は床にパインの無垢材を使用し、外壁同様、経年による味わいの変化を楽しめるようにしている。壁は左官職人が仕上げる漆喰壁だ。いずれもメンテナンス性に優れながら、自然と手仕事のぬくもりが感じられる空間を具現化している。

アトリエボーヌ・丸山保博建築研究所 物件の内装写真

無垢材と漆喰壁で仕上げた内装

 2022年6月に竣工した東京都練馬区の物件は、全14戸の居室にカフェを併設した。繁忙期が過ぎてから入居者を募集したにもかかわらず、2カ月程度で13戸の入居が決まり、その後満室になった。

髙松建設、中層階のRC造マンション

耐震性を高める独自基準

 主にRC造マンションの建築を手がける髙松建設(大阪市)は、関東・関西・中部を中心に中層階の賃貸マンションの建築提案から賃貸管理まで行っている。

 長期的な賃貸経営を実現させるため、資産価値が下がりにくい物件を手がけるのが特徴だ。その一つとして、独自の耐震基準を設けている。建築基準法で定められる1.15倍の地震力でも耐えられる耐震基準を設定。災害への耐久性を上げ、不動産の資産価値を損なうリスクを軽減する。

 エリアマーケティングやオーナーの希望に合わせて外観や内観、導入設備などをオーダーメードで設計するのも強みの一つだ。エリアの担当者が賃料相場などのデータを収集し、分析して物件の企画を行う。

 同社が手がけた物件は、完成内覧会「プレミアム建物博覧会」として一斉公開されている。2022年12月21日から23年4月1日まで、同社が関東や関西、中部エリアで設計・施工を行った物件のうち計30棟を内覧できる。内覧は事前予約制だ。入居希望者だけでなく、土地活用を検討するオーナーの参加も多い。

髙松建設 南麻布仙台坂レジデンスの外観写真

南麻布仙台坂レジデンスの外観

 公開された「南麻布仙台坂レジデンス」は、オーナーの要望により防災設備を充実させた。太陽光パネルや蓄電池、防災用の井戸や倉庫を備える。東京メトロ南北線麻布十番駅から徒歩5分の立地で、三井不動産レジデンシャルリース(東京都新宿区)が管理。外国人や高所得者層向けの賃貸マンションとして同社と共に髙松建設が企画した。

 営業部の古川将大課長補佐は「これから土地活用を検討していくオーナーや既存顧客に向け、髙松建設の総ざらいとして、プレミアム建物博覧会の開催を続けていく」と語る。

髙松建設 南麻布仙台坂レジデンスの内観写真

南麻布仙台坂レジデンスの内観の事例

奥井組、スチール躯体のガレージ賃貸

1階部分を趣味に活用

 物流・倉庫事業を展開する奥井組(埼玉県入間市)は、2022年4月よりCFS(コールド・フォームド・スチール)工法でのガレージハウスを展開している。

 商品名は「OKUIE(オクイエ)賃貸ガレージハウス」。各部屋の1階スペースにあるガレージは車庫以外にも趣味を楽しむためのスペースとして活用することができる。

奥井組 ガレージハウスのイメージ画像

ガレージハウスのイメージ画像

 CFS工法とは、2×4(ツーバイフォー)工法による躯体にスチール素材を用いた工法のこと。木造に比べて耐久性や耐火性に優れており、RC造や重量鉄骨造に比べて費用が安いといった特徴がある。

 奥井組ではCFS工法での建築を19年から関東地方を中心に展開しており、賃貸物件や介護施設など約120棟での実績がある。躯体の製造から施工まで一貫して行うことで工期も短縮できる。

 ガレージハウスの提案を開始した背景には、駅から離れた土地を所有しているオーナーからの土地活用の相談が多かったことがある。郊外でも車などの趣味を楽しみたい入居者や、セカンドハウスの需要があると見込む。

 第1号案件として、23年5月に埼玉県東松山市で全7戸のガレージハウスが着工する。今後は客付けや管理を含めたサービスを展開する予定だ。

アーキテクト・ディベロッパー、耐震、耐火に優れた鉄骨造商品

工場内加工で短工期実現

 土地活用・不動産開発事業を手がけるアーキテクト・ディベロッパー(東京都中央区)は、賃貸住宅ブランド「LivLi(リブリ)」を展開する。同ブランドの中でも主力商品となるのが、耐震・耐火・耐久性に優れた鉄骨造パネル工法の「逸鉄 ITTETSU(イッテツ)」だ。

アーキテクト・ディベロッパー 逸鉄 ITTETSUの内装イメージパース

逸鉄 ITTETSUの内装イメージパース

 鉄骨ブレースを施した耐力壁を建物の要所に配置し、地震などの横方向の揺れを低減。極めてまれに発生する大地震でも倒壊しない耐震等級1を保持している。オプションの選択により、標準仕様より高い耐震等級とすることもできる。

 1時間準耐火および1時間耐火構造を標準仕様とした耐火性能も併せ持つ。1時間耐火構造の建物は、防火地域に定められた場所で建設可能だ。

 入居者の生活に配慮した設計も強みだ。隣戸との境の壁に、吸音効果のある断熱材を充填(じゅうてん)。また、両面二重張りの石こうボードの下地を配置することで、音の振動を伝えにくくする。床には木材と、遮音性に優れた軽量気泡コンクリート(ALC)を重ねた二重床構造を採用。2階以上の居室の床下にはグラスウールを敷くことで遮音性を高めた。

 主要な構造部材は工場内で加工しており、高い品質を維持する。現場での施工はボルト接合のみであるため、工期の短縮にもつなげている。

アーキテクト・ディベロッパー さいたま市の物件の外観写真

さいたま市の物件外観

 逸鉄 ITTETSUは2009年に販売を開始し、23年1月31日時点で1712棟の施工実績を持つ。ほかの規格商品も含めると、累計3万戸を開発してきた。22年度の着工件数は全商品で85棟1358戸を見込む。東京都足立区、葛飾区などのほか東京郊外での開発がメインだ。立地は最寄り駅から10分程度以内。入居者は20~30代の単身者が中心で、25㎡程度の1Kの供給が多い。

アヴェントハウス、天空率確保で敷地生かす

遮音性能にもこだわり

 主として賃貸住宅の設計・施工を行うアヴェントハウス(東京都中央区)は、2022年9月に「Cocoa(ココア)新中野」を竣工した。敷地を最大限活用し、高い遮音性能で住み心地にこだわった物件だ。

アヴェントハウス Cocoa新中野の外観写真

Cocoa新中野の外観

 ある地点から空を見上げたときの建物と空の面積の比率である天空率を確保して、道路斜線制限を超える高さの3階建てを実現。1フロア1戸の室内には全方位に開口部を設け、自然光を多く取り入れるよう設計した。

 床・壁には遮音性能を向上させるオプション「QUIETO(クイエート)50」を採用。鉄骨造でありながら、床は一般社団法人日本建築学会(東京都港区)が示す遮音性能に関する適用等級1級、壁は特級の水準を満たす。

 施工費は標準仕様と比べて2~3%上がるが、入居者ニーズの高い遮音性能の向上で長期的運営に寄与する。22年に同社で手がけた物件のうち3割以上がQUIETO50を採用している。

アヴェントハウス Cocoa新中野の内観写真

全方位に窓を設け、明るい印象の室内

 同社技術部の福田明部長は「建物構造に関わる遮音性能向上のための施工は、後からはできなかったり新築時よりコストがかかったりする場合がある。性能重視で建物自体の価値を上げていただくようオーナーに提案している」と話す。

 同物件は東京メトロ丸ノ内線新中野駅から徒歩4分の場所に立つ。各戸の専有面積は48.13㎡、賃料は19万5000円~22万5000円だ。

(2023年2月20日8・9面に掲載)

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