賃貸業界で大型M&Aが増加
賃貸業界でこれから大手による企業買収の嵐が吹き荒れるかもしれない。
9月30日、東急不動産ホールディングス(以下、東急不動産HD:東京都港区)は学生情報センター(以下、学情:京都市)の買収を発表した。
今年に入ってからは長谷工ライブネットが総合地所の管理部門を組み込み、事業をスタートするなど、大型のM&Aが進んでいる。
東急不動産HDと学情は9月28日に株式譲渡契約を締結した。
今後は、学生情報が7月に設立した子会社の学生情報センターグループに会社分割により事業を承継させ、その株式を東急不動産HDが100%取得する。
株式の授受は11月14日に行う予定だ。
東急不動産HDは、傘下に賃貸管理を行う東急不動産住宅リース(東京都新宿区)があり、管理戸数は7万9000戸。
対して、学情の管理戸数は8万8000戸あり、今回の買収により東急不動産グループの管理戸数が一気に約2倍の16万7000戸にまで増える。
本紙の2016年管理戸数ランキングの数値で見ると9位のミニテックに迫る勢いだ。
学情は売上高115億8800万円で従業員数は単体で348名だ。
学生マンションの管理だけではなく、学生のアルバイトや就職支援など事業内容も幅広い。
買収の経緯は、学情が会社の譲渡先を探しているという情報を得た東急不動産HDがアプローチ。
学情との話し合いを続け、合併への合意に至ったという。
学情は1988年に設立。
建設会社を経営していた北澤俊和社長が立ち上げた。
大学の意向をくんだ物件開発や下宿相談会を行い、全国の大学の信頼を得て拡大してきた会社だ。
今回の株式取得により、東急不動産HDは賃貸管理市場での事業拡大を目指す。
加えて、学情が有する大学など幅広い顧客との関係を生かし、グループ各社への派生事業獲得や、新たな事業機会の創出を狙う。
不動産会社のM&Aの数は増加の一途をたどる。
日本M&Aセンター(東京都千代田区)が手掛けた建設・不動産セクターのM&A件数は、昨年度で80件強と5年で2倍になった。
大山敬義常務は「賃貸管理のようなストックビジネスは数の勝負。だからこそ、サービス業などと違い、企業の買収によりそのまま規模を拡大できるため、効果が大きい。今後はスケールメリットを大きくするか、規模が小さくとも地元に密着するしか生き残りの方法はなくなる」と話す。
家主の相続が進んでいることも、大手によるM&Aの後押しをすると予測する。
これまで昔からのつながりで管理を任せていた家主の代替わりにより、知名度の高い、全国区でブランド力のある大手への管理流出が進む可能性が高いという。
「他業界では、ドラッグストアが15年ほどかけて大手数社に集約された。賃貸業界でもすでにその動きが出始めているのでは」(大山常務)