管理会社がM&A市場の主役に名乗り

2015年12月21日

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事業承継の増加が背景

賃貸住宅市場で徐々に活発になっている管理会社のM&Aや株式売却。
管理戸数の拡大や事業承継、エリア拡大の足掛かりなど、その目的はさまざまだ。
専門家の意見を交えながら、最新動向をまとめた。

M&A市場において、賃貸管理会社が人気だ。
「新築を手掛けるデベロッパー・ビルダーなどからの問い合わせが増えています」と語るのは、中堅中小企業のM&Aの仲介を手掛けるインクグロウ(東京都中央区)の照井久雄取締役だ。

人気の高ぶりを受けて同社は、不動産関連の見積もり比較サイト「スマイスター」を運営するシースタイル(東京都中央区)と業務提携し、12月15日に不動産業界専門のM&A相談窓口「スマイスター不動産業界M&A」を立ち上げた。

人気の理由について照井氏は、「経済動向の影響を受けやすい新築と異なり、管理会社は管理料という安定収入がある。入退去ごとのリフォームや付帯サービスの販売手数料収入もあり、事業基盤を整える上で最適な業種と見る向きが強いようだ」と分析する。

分譲マンションデベロッパーのタカラレーベン(東京都新宿区)は今年、愛媛県松山市の管理会社・住宅情報館(愛媛県松山市)の発行済株式を取得した。
約2200戸の管理物件を得ることで安定した収益基盤を築くとともに、地方都市進出の足掛かりにするのが狙いだ。

また、東京都内に賃貸仲介店舗「ルームピア」19店を展開するAMBITION(アンビション・東京都渋谷区)は7月1日に、神奈川県横浜市のVALOR(バロー)の株式を取得した。
清水剛社長は「1200戸を管理するバローを子会社化したことで収益基盤が強化された。また、地元業者のネットワークが強い横浜へ進出する足掛かりができた」と、株式取得のメリットについて語った。

一方で「買い手を探して欲しい」との問い合わせも多い。
理由のほとんどは事業承継で、後継者のいない創業者が定年を機に、会社を継続・発展できる引き取り先を探すケースが増えているのだという。

社宅管理や福利厚生のアウトソーシングなどを手掛けるリロ・ホールディングス(東京都新宿区)は今年、管理戸数1200戸の大興グループ(埼玉県大宮市)と5800戸のルームグループ(福岡県福岡市)を傘下に加えた。
きっかけはともに事業承継で、従業員や顧客オーナーの将来を考え、上場企業である同社に話が持ち込まれたのだという。
「両社とも法人企業との取引実績が多いため、株式取得は企業向けの社宅関連サービスや福利厚生を手掛けている当社にもメリットがあると判断した。また、グループ会社で提供する家賃債務保証や24時間管理サービスの販路開拓にもつながる」(経営企画室 林佑起氏)

賃貸管理がビジネスとして認知されるようになってから約40年。
当時に創業した経営者の多くは60~70歳台に差し掛かる。
引く手あまたの管理会社は高値で売却できる可能性もあり、事業承継を機に株式を売却しようとする動きは今後、増えるかもしれない。
住宅・不動産・建設に特化したM&Aマッチングサイトを運営するリブ・コンサルティング(東京都千代田区)の谷口氏は「以前はネガティブなイメージだった株式売却やM&Aも、今では事業承継・発展としてポジティブに捉える向きが強くなった。会社を継承するための手段として、需要が増えるのではないか」と推測する。

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