短期間でさまざまな場所に住むというライフスタイルが注目を集めている。スマホ一つで部屋を借りられる『OYO LIFE(オヨライフ)』や、定額家賃で多拠点に住むことができるサービスが2019年に入って次々に登場した。これまでの賃貸契約の常識を覆す「短期間で住み替える」サービスの利用者はどんな人たちなのか。新しい潮流を取材すると、これまで潜在的にあった入居者ニーズが見えてきた。
《HafH》定額で国内外138拠点住み放題
《OYO》最長契約半年でも1時間で92戸成約
「定額で世界中に住み放題」。一瞬、目を疑うようなサービスを提供しているのが、『HafH(ハフ)』を運営するKabuK Style(カブクスタイル‥長崎市)だ。4月からサービスを開始。以降、拠点数を拡大し、11月8日現在、国内外に138拠点約3000室を展開している。
月額8万2000円で多拠点に住めるというこれまでにない新しいサービスゆえに、期間限定で利用可能日数が2日間のお試しコースを月額3000円で用意して、利用者を増やしている。4月から9月までの利用は3000泊ほどで、「年内には月間1000泊に届きそうな勢いで、利用者は増えている」と共同代表の大瀬良亮氏は話す。利用者は30代以下が70%ほどを占め、会社員の割合が33%、フリーランスは27%だ。会社員は出張の際に滞在期間を延長して『HafH』を利用するケースもあるという。
『HafH』のコンセプトは「世界を旅して働こう」。「住む」「働く」「旅する」の三つをサービスの基本的な軸として据えている。「コリビング」と呼ばれる職住一体型で過ごせる共有スペースを持つ建物を拠点としているのだ。
今、働く場所を問わないフリーランスが増えている。同社がサービスを提供するにあたり、第一段階として増やしていきたい利用者もフリーランスだ。日本のフリーランス人口は増加傾向にある(右上図参照)。
第二段階として狙う利用者は、会社員。KabuK Styleでは7月に1万5000人に対して同社のサービスの利用意向に関するアンケート調査を行った。その結果が実に興味深い。フリーランス、企業勤め、学生の3属性それぞれ『HafH』の利用意向の結果は、フリーランス15%、企業勤め16%とほとんど差がなかった。さらに企業勤めの中でも大企業で働くミレニアルズ層(1980年代以降生まれの層)の利用意向が高かった。
「リモートワーカーが増えている。リモートワーカー向けのある調査によると、働くストレスが減ったという回答が86%あった。テックの力でこうしたもともとあった不満を解消することができる」(大瀬良共同代表)
働き方の多様化が進む中、「住む」「働く」「旅する」の垣根がなくなっていくだろう。