企業研究vol.025 山岸 延好 社長

「賃料査定システム」でシェア1位を目指す

 IT企業・ターミナル(東京都目黒区)は今、「賃料査定システム」の会社として急成長している。前社長の中道康徳氏が蓄積した賃貸住宅データを使い、2018年5月に代表に就任した山岸延好社長が「データを生かしたビジネス」をスピーディーに仕掛けている。同社の賃料査定システム『スマサテ』は、「成約賃料に近い数値」を含む400万件のデータベースをもとにAIが査定する。精度の高さの他、家賃の内訳と根拠、類似物件のデータが瞬時に分かる点が売り。月5件まで無料で利用でき、アカウント数は1年で300社に増えた。シェア独占を狙う山岸社長に話を聞いた。

賃貸住宅フェアに出展した同社のブース。山岸社長は左から2番目。

――家賃査定サービスの利用アカウント数が300社までに増えました。今後の戦略は。

山岸 まずはサービスの浸透です。査定サービスで圧倒的ナンバーワンを目指しています。現状競合が複数社あるものの、賃貸管理会社から多くの評価をいただいており、製品の質には自信を持っています。あとは広げるだけ。まだ磨ける部分はたくさんあるので、そこは磨き込んでいきつつ、9日にリリースした有料化プランの会員を増やしていければいいですね。もちろん、月5件までの無料プランは継続します。

――どのレベルに到達したら、「圧倒的ナンバーワン」といえますか。

山岸 賃貸管理会社でいえば、管理戸数2000〜3000戸以上の会社がターゲットになり、周辺業種も含めると、国内の対象企業は1000社くらいあると見積もっています。ランチェスター戦略でいえば、ナンバーワンになるにはシェア率42%ほど占める必要があり、それにのっとれば400社くらいが目先の目標になります。

――今のアカウント数が300件ですから、もうすぐ達成しますね。

山岸 そうですね。さらにシェア率約74%なら「独占的優位」になれるので、最終的にはそこを目指したいですね。400社は今夏で達成、700社は1年後には到達したいです。営業活動だけでなく、賃貸管理ソフト会社と協業しながら、進めていきます。

――マネタイズのめどは立っていますか。

山岸 現状300社の大半が無料アカウントなので、今月リリースした有料アカウントを、これからどれだけ増やせるかに左右されてくるでしょう。手応えはかなりあり、有料化がリリースされる前から手を上げる既存企業が何社も出てきている状態です。

――『スマサテ』の展開は非常にスピーディーです。どう組織をつくっていますか。

山岸 とにかく一番重要視しているのが、機動力とスピードです。『スマサテ』は、まだ投資のフェーズなので、機能の改善や、新機能の追加、そこをどれだけクイックにやっていけるかどうかが大切です。不動産会社の意見を吸い上げるスピード、その中で何を優先し実装していくのかという意思決定のスピードもそうです。そのためにも当社は、少数精鋭でやっています。

――少数精鋭がポイント。

山岸 そうですね。現状のコアメンバーは3人です。私と、新谷取締役、高澤取締役です。ただ、実際ものをつくっていく段階では外部のエンジニアなどに関わってもらっていて、合計すると10人くらいの人たちと、複数のプロジェクトを走らせています。

――入れ替わりはありますか。

山岸 今は落ち着いてきましたが、入れ替わりは結構ありました。スピード感を重視しているので、そこに合わない人は変えたりすることはありました。今のチームをつくるのには9〜10カ月くらいかかりました。

――機動力、スピードで求める水準は何ですか。

山岸 直近の大きなリニューアルでは1カ月単位のプロジェクトとなりましたが、小さな改善であれば基本数日、長くても1週間という単位でどんどん回していきます。

――スピーディーな組織をつくれた秘訣(ひけつ)は何ですか。

山岸 私が長らくIT企業にいたので、そのバックグラウンドは関係していると思います。エンジニアとある程度会話ができる点は、進行上、有利に働くポイントです。まったく会話が成り立たない会社と働くのは、エンジニア側にとっては厳しいじゃないですか。その辺の会話が成立するかどうかは、ひとつ大事だと思いますね。

――財務的な事情は?

山岸 この1年間で数千万円規模の投資をしてきました。『スマサテ』の売上はこれからだと思います。それ以外でいうと、不正注文の検知システムで契約中の会社があるので、そこで多少売上はありますが、全体でいえば、やはりまだ先行投資の段階です。基本、資本金9000万円を原資にやっています。

――『スマサテ』が浸透した後は、どんな未来を描いていますか。

山岸 二つの方向性があります。一つは同じ管理会社向けに違うサービスを展開する方向性。もう一つが、査定システムと新しい技術を生かして不動産会社に対して、違う形で事業を展開する方向性です。基本、データとAIを使って何かを推定していくことに関しては、かなり知見もたまってきているので、賃料査定以外の形で展開していくことにはなると思います。

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