企業研究vol.132 リライフ 鈴木 卓人 社長

リライフ

インタビュー|2021年11月09日

リライフ 東京都千代田区 鈴木 卓人 社長(38)

 賃貸仲介を中心に事業を展開するリライフ(東京都千代田区)。創業より拡大主義を掲げ、賃貸仲介店舗を年3店舗ずつ出店。同時に、自社システムやRPAの導入により、業務の効率化を実現している。新規出店と業務効率化の二本柱を両立する鈴木卓人社長に、今後の展開について話を聞いた。

業務効率化で賃貸仲介3割増の3000件

賃貸仲介15店舗を展開 年500件ペースで成約増加

―毎年、賃貸仲介件数が増加していると伺いました。

 この2~3年では毎年500~800件ずつ賃貸仲介件数が増加しています。直近の3年間では、2018年が1746件、19年が2243件、20年は3035件でした。21年の実績は10月までで3571件です。新規出店を進めるかたわら、RPAを導入することで入力作業などの業務負担を減らし、社員が営業に専念できる環境を整えたことが要因だと思います。

賃貸仲介数の推移グラフ

―なるほど。やはり御社の主力事業は賃貸仲介業ですか。

 そうですね。売上高は非開示ですが、売り上げ比率としては賃貸仲介が70%を占めており主力といえます。そのほか、売買仲介とリフォーム事業がそれぞれ10%ずつ、建築請負と賃貸管理が5%ずつという構成になっています。

―賃貸仲介店舗は現在何店舗目ですか。

 高円寺店、高田馬場店を5月に出店し、全部で15店舗になりました。基本的には東京都内の23区への出店が中心ですが、一部国立市にも店舗があります。

データ管理の専門部署 属人的な体質から脱却

―賃貸仲介件数を伸ばした理由を詳しく教えてください。

 店舗拡大も理由の一つですが、19年にRPAを導入したことが大きいと考えています。導入の結果、分業化が進み、本来接客にエネルギーを注ぐべき営業社員が、書類の作成といった事務関連の業務を行わずに済みました。具体的には、ポータルサイトへの出稿業務をRPAに振り分けました。これまでは、自社スタッフが月間400~500件の物件情報を手作業でポータルサイトに入力していたのをRPAが自動化。1店舗あたり月間約10時間の業務削減につながりました。その結果、営業社員1人当たりの成約件数は10%程度増え、接客や追客に時間をかけた分が数字に表れています。加えて、RPAを通してどのポータルサイトでどの物件の反響が多かったのかなど、より効果的なアプローチ方法を考える材料が得られたのも賃貸仲介件数増加の要素の一つと考えます。

―鈴木社長がRPAにこだわる理由は何ですか。

 事業を広げていくうえで、属人的な要素を取り除くことでより効果的な結果を得られると考えたからです。例えば、ポータルサイトの出稿作業に関しても、多くの賃貸仲介会社ではどの物件を出稿するのかは各店の店長が決めるのではないでしょうか。ただ、店長の経験則に頼るよりも、RPAによってはじき出された数値で根拠づけする方がより精度の高いアプローチを行えます。当社では、独自システムの開発にも力を入れています。RPA内で家賃や住所など基本的な情報を自動で入力するシステムや、反響の多い物件を識別し、ポータルサイトへ自動で出稿するといったシステムを構築しました。自社開発し内製化することで他社の開発したシステムを利用するよりもコストを抑えられます。

―システムの構築にはどれほどの時間をかけましたか。

 およそ3カ月ほどです。taneCREATIVE(タネクリエイティブ:新潟県佐渡市)というシステム開発会社の社長に、社外取締役として入ってもらい、システム構築についてのアドバイスを受けました。システムだけに頼らず、人手によるチェック体制も充実させています。19年4月には、佐渡島にデータ管理を専任で行う部署を設立し、RPAによって入力された内容に間違いがあった場合の手直しなど、RPAで補いきれない部分のカバーを担っています。

―業務効率化に注力しようと思ったきっかけはなんですか。

 前職の賃貸仲介会社で、システム構築がうまくいっていなかったことがきっかけです。顧客に記入してもらった申込書の内容をファクスで管理会社へ送りつつ、自社でも情報を控える必要があるので社内のシステムに申込書の内容をそのまま入力し直しており、紙離れできていないという印象でした。当時の風潮もありますが、直接利益に結びつかない作業で他の業務が圧迫され、繁忙期は2カ月間家に帰れないなんてことも多かったです。そういった自身の経験から、起業後に業務効率化に着手しました。

システムの外販視野 マニュアル作成に注力

―成長持続のための戦略を教えてください。

 今後の展開としては、店舗数の拡大を続けるかたわらで、行いたいことが2つあります。一つは、構築したシステムの外販です。現在当社の自社開発システムは先述した出稿システムを加えて7つあります。物件管理、顧客管理、業績分析、ウェブ掲載戦略分析、入居者専用アプリ、物件検索サイトです。これらを一つのシステムとしてパッケージ化して、ほかの不動産会社に販売していきたいです。システムが普及することで、不動産業界自体がアナログからの脱却に近づくのではと思います。もう一つは、業務マニュアルの作成です。例えば、営業社員であれば接客応対から契約手続きなどをマニュアル化することで、不動産業界未経験者や社会経験が浅い人材でも、ある程度の成果を得られるようにしていければと思っています。能力や技術に大きな差が出なくなることで、社員の採用時に人格面を重視した選考が可能になります。

起業前に世界各国回る

 起業前の14年に世界各国を巡ったという鈴木社長。アメリカやヨーロッパなどの先進国から、南米やボリビアなどの途上国も含め40カ国以上をバックパッカーとして渡り歩いた。「旅をしながら、これから社長として社員を養っていくという現実に向き合い、自分に覚悟があるのかを確かめたかった」と理由を話す。自身が苦境にあっても本当に自分が行いたいことを貫けるかを確認したかったという。出立の半年後、見事世界一周を果たした。「旅と同じように、起業当時の『いい会社をつくりたい』という思いを貫きたい」と話す鈴木社長だった。

ウユニ塩湖での写真

ボリビアのウユニ塩湖を訪れた際の写真

 

会社概要

社名:リライフ
所在地:東京都千代田区九段南3-7-14 VORT九段8階
設立:2014年10月
資本金:1000万円
事業内容:賃貸仲介・売買仲介・賃貸管理・リノベーションなど

会社メモ

2014年に設立。賃貸仲介事業を中心に、売買仲介、賃貸管理、リノベーションなどを行う。東京都内23区を中心に年3店ほどのペースで出店を続けている。 21年5月には杉並区へ15店舗目を出店した。

社長メモ

1983年6月17日生まれ。神奈川県出身。インテリアと接客が好きだったことから、近しい業種の賃貸仲介会社へ新卒で入社。賃貸仲介における接客ノウハウを身につけ、2014年10月に起業。毎年着実に仲介件数を伸ばしながら、社内のシステム構築を進め業務の効率化に注力する。

(11月8日15面に掲載)

おすすめ記事▶『企業研究vol.130 ジェイネッツ 荒井 真弓 社長【トップインタビュー】』

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