賃貸管理専業のクライフ(京都市)は、管理のクオリティーを上げることを目的に2人1組でオーナー対応にあたる「バディ制」を取り入れている。2人で業務を受け持つことであることから相談し合い、お互いを補い合うことがメリットになっている。
相談し合い社員の成長促す
社員の余力残す チーム重視の方針
京都市で2700戸超を管理する同社は、社員に余力を持たせ、管理の質の維持・向上を重視する。その方針の実現のために採用しているのが、唐津亮社長が考案した「バディ制」だ。バディ制は創業から3年目にスタートした。個人の能力を重視することによる社員間のあつれきが生じていた状況を変えるため、「力のある社員」ではなく「力を合わせられる社員」を重視する方針に切り替えた。
オーナー担当であるPM事業部の6人を2人1組の3チームに分け、1チームあたり50人、合わせて150人を担当している。バディとなった2人で、オーナーへの提案や収支報告などを行っている。
クライフの本社外観
唐津社長がバディ制の実施によって価値を感じているのは、社員の成長スピードの速さだ。おおらかなタイプと几帳面なタイプなどの性格上のギャップや、年齢差、経験の差がある2人をあえて組ませている。「意見が食い違ったときに自分の正しさを主張するのではなく、妥協案を見つけることを促している」(唐津社長)
2人であることで余力が生まれやすく、目の前の業務のブラッシュアップを図りやすい。
社員の定着にもつながっている。例えば、一人が有給休暇をとってももう一人が対応する環境が整えられているため、休暇が取りやすくなっている。1人に業務の負荷が集中しすぎないようにし、ストレスを抑制する仕事環境を整備。離職率の低下にも効果を感じているとする。
管理戸数は年110%前後の成長を続け、2024年1月期で2733戸となった。入居率は96%を維持する。管理戸数を増やすことで工事件数は肌感覚で年平均10〜20%アップしている。
全体の売り上げも10〜20%増加しており、24年1月期は3億3000万円となった。そのうち管理手数料が5割を占め、そのほかは工事手数料などになる。
属人化の弊害防ぐ サービスの質担保
バディ制を取り入れたのは、オーナー担当者の能力の差によって管理のクオリティーに「ムラ」があったことが背景にある。唐津社長は「管理手数料は一律なのに、オーナーや入居者へ提供できるサービスが異なるのはおかしいと感じた」と話す。
バディ制により、一人の判断や能力に依存せず、管理の質が安定すると考えた。
2人1組で行うという発想は、唐津社長自身の苦い経験が生かされているという。「きっかけは起業前に勤めていた不動産会社での出来事だった。当時私は生意気な社員で、入社早々『1年で成績1位になって会社を辞めます』と宣言してしまった。実際にトップにはなったものの、いざ辞める時に誰にも送別会を開いてもらえず、仕事上の喜びを誰とも分かち合えないことへの虚しさを実感した」(唐津社長)
その経験を機に、パートナーとなる存在の必要性を感じ、バディ制の発想に至った。同じ部署に所属していたとしても、担当するオーナーなど状況が違うことで、仕事上の悩みを共有しづらい場面がある。バディ制はほぼ同じ業務を2人が行うことで、お互いの悩みに共感しやすい環境をつくることができるという。
加えて、社員の不満などを早期に発見できるよう3カ月に1度、社長面談も並行して行う。
人材を盤石にし、新規の管理を受託する方針を継続。25年1月期の売上高は10%増の3億6300万円となる見込みだ。
(國吉)
(2024年4月22日9面に掲載)