エリオン、法人との電子契約難航【賃貸仲介会社の経営分析】

エリオン, 全保連, エタニティ少額短期保険, 住宅情報センター, SS Technologies(エスエステクノロジーズ)

その他|2021年12月29日

  • twitter

 2022年5月までに実現する完全オンライン契約。電子申し込みやITを活用した重要事項説明に取り組む不動産会社も少なくないだろう。今回は電子申し込みに挑戦する企業と、今後も紙に徹する企業を取材した。

エリオン、法人契約での導入に難

紙ベース10割、電子化の予定なし

 年間賃貸仲介件数2200件のエリオン(大阪府吹田市)では、主な仲介顧客である法人側での電子契約の導入にハードルを感じている。特に上場企業では、セキュリティ面から新しいシステムの採用に時間がかかるとみているためだ。したがって申込書などはすべて紙面で取り交わしている。

 同社の売上高は3億4000万円で、内訳は賃貸仲介が80%と売り上げの要を占める。次に、賃貸管理が15%、売買仲介が5%だ。賃貸仲介売り上げは2億7200万円。賃貸仲介手数料、広告費、付帯商品売り上げが計上されている。仲介手数料は家賃の50~100%で、広告費は家賃1カ月分だ。成約単価は12万円ほど。賃貸仲介店舗は大阪と東京に1店舗ずつ構える。

 従業員36人のうち、賃貸仲介に従事するのは26人で、営業を行う社員は15人だ。法人契約が9割とほとんどを占める。一人あたりの年間賃貸仲介件数は130~140件で、一人あたり繁忙期で月20~30件、閑散期で月10~15件。来店成約率は9割に上る。一般媒介が9割、専任媒介が1割。

エリオン本社の内観写真

エリオン本社の内観

 同社では入居申込書などの書類の取り交わしはすべて紙で行っている。同社のメーン顧客である法人企業では、電子化の導入は容易ではないためだ。法人顧客の中でも6~7割を占める上場企業では、特にセキュリティ面において厳しい目を持つため、新しいツールやシステムの導入には多くの行程を経る必要があるのだという。

 営業部の下田亮太取締役は、「口座を開設するのでも上長や管理部への確認が多く、時間がかかる印象」と話す。そのため、申込書などを電子化へ一新するのは難しいと感じており、電子化する予定はないとする。

 一方で重要事項説明においては13年ごろにIT重説を導入し、現在ではほぼ100%IT重説を行っている。転勤に伴う部屋探しのため、県外などの遠方顧客が多く対面での重説が難しいためだ。

 賃貸借契約は重説実施後、別日に行っている。

 賃貸借契約は基本的に郵送で行う。入居希望者との契約は法人企業の窓口を介して行うためだ。賃貸借契約と鍵の受け渡しは対面が8割、郵送が2割。

 家賃債務保証会社は全保連(東京都新宿区)など4社を併用しており、家財保険会社はエタニティ少額短期保険(大阪市)など3社を併用する。入居申し込みから契約まで、10日前後で行っている。

 

住宅情報センター、入居申し込みクラウドの導入検討

繁忙期に向けて試験運用開始

 グループで年間1708件を賃貸仲介する住宅情報センター(沖縄県宮古島市)は、入居申し込みクラウドの導入を検討しており、現在社内で試行運用を実施している。ファクスやメールの送信が不要で、顧客が電子フォーマットに入力した情報を入居審査に使用できる体制を構築し、業務効率化を図る構えだ。

 売上高(非開示)のうち、事業構成比は賃貸管理が50%、賃貸仲介が30%、売買仲介が20%を占める。アパマンショップに加盟し、沖縄県の宮古島と石垣島に仲介店舗を1店舗ずつ置く。従業員は約60人で、そのうち9人が賃貸仲介の営業を担当している。

住宅情報センターの会社情報まとめ

 賃貸仲介の売り上げは非開示だが、内訳は仲介手数料が約60%、鍵交換費用や消毒などの付帯商品が約20%、入居者が加入する家賃債務保証会社や保険会社の代理手数料などが約20%となっている。仲介手数料は基本的に家賃の1カ月分としており、成約単価は平均10万円だ。

 営業スタッフ1人あたりの賃貸仲介件数は、年間189件。成約件数は、繁忙期には閑散期の2倍に上る。自社の管理物件の仲介がほとんどだ。

 入居申し込みの実施比率は、紙が10割を占めており、この繁忙期に電子での対応を初めて試みる予定だ。

 同社では、SS Technologies(エスエステクノロジーズ:東京都千代田区)が提供する入居申し込みクラウド「SKIPS(スキップス)」の導入を検討する。SKIPSの運用方法を学ぶべく、11月の初旬には同社の社員数人が福岡県にある「SKIPS」を導入済みのアパマンショップ直営店に出向き、研修を受けたという。

 導入の初期段階では、法人や公務員など、入居審査を通過しやすい顧客を中心に電子申し込みで対応していく予定だ。アパマンショップ宮古島店の佐藤久夫店長は「これまでの入居申し込みは来店時に紙への記入で対応していた。今後、オンライン申し込みを導入した際には、店舗外で顧客が電子フォーマットの入力に手こずった際の対応策が必要と考えている」と語る。

アパマンショップ宮古島店の外観写真

アパマンショップ宮古島店

 重要事項説明は、対面が9割以上を占める。同社では島外から住み替える顧客も少なくないため、宅地建物取引士が対応できれば内見の同日に入居申し込み、重要事項説明、契約手続きを実施する業務フローを理想としている。入居審査の通過後、家賃や初期費用の入金確認を行い、店舗にて鍵の受け渡しを行う。

 IT重説に関しては、遠方客への実施が月に数件ある程度だ。申し込みから契約までの所要期間は2週間程度となる。

 「離島であることや、台風による遅延が発生するため、IT重説や契約に必要な書類の郵送は、顧客のもとに届くまでに最低1週間を見込んで対応している。申し込みや契約業務をオンラインで対応できるようになれば、業務効率の向上が期待できるだろう」(佐藤店長)

(2021年12月27日6面に掲載)

おすすめ記事▶『アメニティーハウジング、DX化に注力し電子契約の準備中【仲介会社経営分析】』

検索

アクセスランキング

  1. 大手不動産会社で入社式

    レオパレス21,大東建託グループ,ハウスメイトパートナーズ,APAMAN(アパマン),常口アトム,武蔵コーポレーション,TAKUTO(タクト),三好不動産

  2. ビューン 大石隆行社長 電子書籍読み放題、13万戸に

    【企業研究vol.246】ビューン

  3. 戸建て賃貸強みに売上33億円【上場インタビュー】

    東日本地所

  4. 不動産業アワード、10社が受賞【クローズアップ】

    国土交通省

  5. 供給増えるZEH ハウスメーカーの最新動向を紹介

    三菱地所レジデンス,ミサワホーム,大和ハウス工業

電子版のコンテンツ

サービス

発行物&メディア

  • 賃貸不動産業界の専門紙&ニュースポータル

  • 不動産所有者の経営に役立つ月刊専門誌

  • 家主と賃貸不動産業界のためのセミナー&展示会

  • 賃貸経営に役立つ商材紹介とライブインタビュー

  • 賃貸管理会社が家主に配る、コミュニケーション月刊紙

  • 賃貸不動産市場を数字で読み解く、データ&解説集

  • RSS
  • twitter

ページトッップ