189社の出展と91講演を実施
8月6日・7日に開催した「賃貸住宅フェア2024in東京」は、過去最高となる1万7026人が来場した。91のセミナーと189社の出展ブースが一堂に会し、不動産事業関係者らを中心に全国から「東京ビッグサイト」へ足を運んだ。「リフォーム産業フェア」「住まい×介護×医療展」を含めた3展の延べ来場者数は3万7324人となり、大盛況の中幕を閉じた。
記事参考に来場 直接聞き理解深める
「新聞の紙面に載っていた出展企業の話を聞きにきた」と話すのは、築古物件の再生や賃貸管理を手がける満室ラボ(愛知県一宮市)の傍島啓介社長だ。
目当ての出展者は、外国語でライフラインの取り次ぎ代行を行うRenxa(レンサ:東京都豊島区)。自社物件を所有するオーナーとしても、管理を受託する管理会社の目線からも、今後、外国人や高齢者などの入居促進を図っていく必要があると考えている。一方で、ガスや電気などの申込書、振り込み依頼書が日本語しか対応できないということも少なくない。そこで、全国賃貸住宅新聞に掲載されていた外国語対応が可能な同社のインタビュー記事を読んで資料を請求し、さらにフェアで直接商材の話を聞きに来たという。「直接話を聞くことで、理解が深まってよかった」(傍島社長)
武蔵コーポの講演 自社戦略に生かす
類似のビジネスモデルで急成長を遂げた競合他社のセミナーに関心を持って来場したのが、1200戸を管理する不動産バンク(北海道札幌市)の大広祐司社長だ。経営者向けセミナーに登壇した武蔵コーポーレーション(さいたま市)の大谷義武社長のセミナーを聴講した。
大広社長は「賃貸仲介事業で創業し、管理拡大に向けて売買事業の強化を図ってきたという事業展開において類似点を感じており、急成長の理由に興味があった」と話す。大谷社長がセミナー内で説いていた「三方よし」の考え方について、「当社でできていない点があった」と、発見があった様子の大広社長。成長の理由を経営のヒントにつなげたいという。
新しい選択肢 考える機会に
三富英夫オーナー(茨城県神栖市)は、所有する不動産の規模を縮小させる方針があり、今後の戦略のヒントを得ようと来場した。ほぼ毎年当フェアに来ており、今回は、不動産投資に取り組んでいる10年来の友人と来場した。
三富オーナーは、アパートなど約300戸を所有するまで規模を拡大してきた。だが、ビル・パーキンス氏の著書に感銘を受け、「不動産を減らしていこう」と決意。現在所有する不動産は約150戸となっている。
今回のフェアでは後藤商事(茨城県ひたちなか市)の後藤光夫社長によるセミナー「管理事業譲受で1500戸突破 事業成長のカギは周辺会社との関係構築」を聴講した。「建物を一つずつ売るのではなく、会社ごと売るということは発想になかった。今後の選択肢の一つとして考えたい」(三富オーナー)
内定者らと参加 人材教育に活用
渡辺住研(埼玉県富士見市)は、来春入社予定の内定者ら5人が研修の一貫としてフェア会場に来場し情報収集に励んだ。10年以上前から行われている恒例の研修だという。
内定者らを引率したのは、業務管理部ソリューショングループ兼総務人事グループ採用担当の阿部知浩課長だ。同社が最近力を入れているのは若手の人材育成。阿部課長は「賃貸住宅フェアはトレンドを知ることもできるし、なにより熱気がある。内定者がフェアに参加することで、不動産業界に明るくワクワクするイメージを持ってもらえることを期待している。フェアで自分が得てきた情報を、入社後、主体的に業務に生かしてほしい」と話した。
漏水対策に関心 リフォーム展回遊
前田(東京都渋谷区)のPM事業本部、管理受託事業部2課の向井優花さんは、前回に引き続き今回も来場した。以前の賃貸住宅フェアで出展していた巡回アプリや契約書作成アウトソーシングを実際に導入したこともあり、今回も積極的に新たな設備やサービスの導入を検討をしたい考えで参加した。
フェアでは設備関係のブースを見て回ったという。「最近はゲリラ豪雨も多く、漏水対策も関心事の一つ。漏水対策を扱う出展ブースで具体的な商品について知り、早速問い合わせをしたいと考えている」(向井さん)
同時開催のリフォーム産業フェアも回ったといい「一緒に開催してくれるのはありがたい。濃密な一日になった」と笑顔で話した。
ドローンに注目 よりよい商品探す
三福綜合不動産(愛媛県松山市)のグループ会社で賃貸管理事業を行う三福管理センター(同)の星川俊一社長は管理事業に役立つサービスを目当てに来場した。
注目したブースはドローンを利用した建物診断や入居者からの問い合わせに対するチャットボットのほか、スマートホーム機器、サウナといった住宅設備だ。
同社の管理物件は4割超が4階建て以上。外壁や屋上の点検を行う際にドローンを使った建物調査の実施を検討中だ。
星川社長は「業務や管理を効率化できたり、物件の差別化ができたりするサービスや設備を探している。すでにドローンやスマートホーム機器は試してみたが、コスト面やサービス面で要検討だったので、この会場で良いものを探したい」とコメントした。
コスト適正化狙う DIY商材を確認
戸建て4戸を所有する杉村八千代オーナー(愛知県名古屋市)は、23年に引き続き知人とフェアに来場した。
今回のフェアでは、オーナー自らが物件を大手ポータルサイトに掲載することができるシステム「ECHOES(エコーズ)」や自分で修理できる床材などに興味を引かれたという。
「AD合戦となっているエリアもある。中には入居者が決まらず、6カ月分のADを積んでいるオーナーもいると聞いた。賃貸経営は年々厳しい状況になっているため、事業者に頼らず自分でできることは自分で行うことでコストの適正化を図らなければならないと感じている。フェアで得た収穫を早速生かしたい」(杉村オーナー)
自主管理へ移行 管理業の知識深化
横浜市や都下にアパートや戸建てを所有する青葉雅和オーナー(東京都立川市)は、賃貸業における最新情報の収集を目的として来場した。
特に関心を寄せているのは自主管理について。退職を機に一部を自主管理へ移行したいと考え、セミナー「建物メンテナンスを賃貸経営の当たり前に 管理会社と家主のBM座談会」を聴講した。実際に自主管理をしているオーナーからの話も聞けたことで、具体的なイメージが湧いたという。青葉オーナーは「管理業務について知見を深められた。今まではすべて管理会社に任せていたが、自主管理への移行について具体的に検討していきたい」と話した。
青葉オーナーは8月、資産管理法人とは別に宅地建物取引業の会社を開業。ダンゴネット(東京都武蔵野市)による賃貸管理システム「賃貸名人」などのITツールや、コールセンターのブースも巡った。
アーバン企画開発、管理バスツアー 5年ぶり企画
他社管理のオーナーも参加
管理戸数約7000戸のアーバン企画開発管理(神奈川県横浜市)は、オーナーへの情報収集の場の提供を目的に、5年ぶりの団体来場ツアーを催行した。従業員とオーナーの約40人で来場。相続に関するセミナーを聴講するオーナーが多かった印象だった。出展ブースやセミナーなど、各オーナーが興味ある情報を得たという。
バスツアーは既存オーナー以外にも募集を行い、実際に他社で管理を委託しているオーナーも参加した。
同乗していたアーバン企画開発(神奈川県川崎市)の三戸部正治社長は「バスツアー前日には従業員で下見を行うなど、しっかりと準備を行った。新型コロナウィルスの影響でバスツアーができずにおり、今回は5年ぶりの開催となった。ツアーを毎年楽しみにしているオーナーもおり、今後も継続的に企画していきたい」とコメントした。
今年は12月に大阪でも開催
「賃貸住宅フェア2024in大阪」
【開催日】12月5・6日(木・金)
【会場】インテックス大阪
「賃貸住宅フェア2025in東京」
【開催日】9月17・18日(水・木)
【会場】東京ビッグサイト
※いずれも全国賃貸住宅新聞社主催、入場無料(事前登録制)
(2024年8月26日6・7面に掲載)