65歳以上の高齢者の入居を受け入れるにあたって、見守りサービスの契約を必須としたり、健康状態のヒアリングに時間をかけたりと、各社がさまざまな工夫を行っている。地域・規模の異なる3社に、審査の方法や孤独死リスクへの対応方法を聞いた。
受け入れ対策、家主から評価も
明光トレーディング、年20件居室内死亡 電球で安否確認
東京都を中心に3545戸を管理する明光トレーディング(東京都渋谷区)では、管理物件での孤独死の増加を受け、2023年から見守りサービス契約を高齢者が入居する際の必須条件とした。今後も増え続ける単身高齢者を入居者として受け入れる体制の構築を進める。
同社が見守りサービスの導入を検討し始めたのは、23年に管理物件での孤独死が年20件を超えたことがきっかけだ。利用する見守りサービスは、運輸大手のヤマト運輸(東京都中央区)が提供する「クロネコ見守りサービス ハローライト訪問プラン」。電球の点灯・消灯の有無で入居者の安否を見守る。利用料金は月額4400円(税込み)、初期費用は不要だ。明光トレーディングでは、25年6月時点で高齢入居者のうち60〜70人ほどがサービスを契約している。65歳以上の既存入居者に対しても、更新時に契約を勧めている。更新の場合は任意ではあるが、勧めた人の7割ほどが契約するという。
全入居者に占める高齢者の割合は5〜10%。65歳以上の入居審査に関しては、見守りサービスの契約が必須となる以外はほかの年代と変わりない。緊急連絡先は必須だが、友人・知人など親族以外も認めている。親族であっても万一の際につながらないことは多いため、緊急連絡先の登録は単に家賃債務保証の審査に必要な項目として捉えているという。
賃貸管理部・資産活用コンサルティング部の武澤和哉統括部長は「受託営業時に高齢者入居の体制を整えていると話すと、オーナーから良い反応をもらえることも増えてきた。国内で人口の約3割を占める高齢者を入居させないのは逆にリスクだと考えている」と話す。
福徳不動産、親族の保証人条件 年齢で条件変えず
長崎県で1万8900戸を管理する福徳不動産(長崎市)では、全年齢の入居希望者に対して保証人を立てることを入居条件とし、入居後のトラブルや孤独死のリスクを低減する。24年、同社の管理物件での孤独死発生件数は0件だった。
同社の管理物件における高齢入居者の割合は、親族による代理契約を含めて全体の8.4%だ。孤独死は2年に1回あるかないかだという。孤独死発生の頻度が低いことから、見守りサービスは導入していない。社長室の野口亨室長は「親族の保証人がいれば孤独死が発生しても契約解除や残置物処理をスムーズに行うことが期待できるため、管理会社として65歳以上だからという理由で入居を拒否することはない。最終的にはオーナーの判断となるが、高齢を理由として入居を拒否するオーナーはほとんどいない」と話す。
入居審査も、高齢者とそのほかで変えることはない。収入や預金が賃料に対してどれほどあるか、保証人はいるか、接客時の受け答えが乱暴といった問題はないかなどを総合的に確認。入居者の年齢にかかわらず、保証人には第三親等以内の有職者を立てることを求める。一定以上の規模の法人契約を除き、保証人は必須としているという。
高齢者の場合は、健康状態や親族とのコミュニケーションの頻度も併せて審査時にヒアリングする。「収入や保証人といった情報に加えて、当社が直接話してわかった情報も合わせてオーナーに伝えることで、安心して入居者を受け入れてもらっている」(野口室長)
丸伊不動産、65歳以上入居36% 日常相談受け付け
売買を中心に不動産事業を行う丸伊不動産(長野県須坂市)では、154戸の管理物件の入居者のうち35.9%が65歳以上の高齢者となっている。入居審査時および入居後に入居者としっかりとコミュニケーションをとることで、高齢者の入居を進める。
同社は65歳以上の入居希望者に対しては、入居審査のタイミングで健康状態に関する面談を行う。仲介事業者から入居希望者を紹介された場合も必ず丸伊不動産に一度来店するように伝えてもらい、同社社員が直接面談する。持病や介護サービス利用の有無・頻度などをヒアリングしたうえで、親族や頼れる人が近所にいるかなども考慮して審査を実施する。伊藤公一社長は「当社の管理物件には80代後半の単身入居者がいる。軽い認知症の症状が見られるが、すぐ近くに子どもが住んでおりコミュニケーションも頻繁だということがわかったので、オーナーに説明して入居に至った」と話す。
同社は、高齢者の入居後も入居者とのコミュニケーションを行う。同社には高齢入居者からの電話問い合わせが月に100件ほどあるという。内容は、設備の不具合やトイレに物を落としてしまったなどといった困り事の相談だ。入居者の健康状況にもよるが、2〜4カ月ほど電話がない人には、同社から電話をかけるという。
同社の管理物件で孤独死が発生した事例はまだないが、見守りサービスの導入は検討している。「須坂市では、雪かきや庭の手入れが負担になってきた高齢者が持ち家を手放し、賃貸に入居したいというニーズが年々増えている。自治体による補助も使いながら見守りサービスを導入することで理解・協力を得られるオーナーを増やし、より多くの高齢者が入居できる環境をつくりたい」(伊藤社長)

(中村)
(2025年9月22日24面に掲載)




