不動産の共有はトラブルの元 問題解消に向けた5つの手法【賃貸住宅フェア2025 東京セミナーレポート】

森・濱田松本法律事務所

税務・相続|2026年04月17日

長谷川 博一

講演者
森・濱田松本法律事務所
外国法共同事業
長谷川 博一 氏

複数の相続人、不動産共有の危険性

物件価値を下げる 共有が持つ弱点

 不動産の共有はしないほうがよい、というのはよく聞く話だ。何が良くないのかといえば、まず共有は不動産の価値を下げる。例えば、1億円の評価の不動産を二人で分けたとしても、5000万円ずつにはならない。相共有者(共同相続人)がいる不動産は使用に関して制限がかかり、価値が目減りする。次に、管理が大変である。最後に、一度共有になると、簡単に解消することができず、解消する際に余計なコストがかかる。

 不動産の共有が発生するケースとして最も多いのが相続時。不動産を相続する際に何も対策をしないと自動的に共有になる。これは一般的には相続共有と呼ばれる制度で、相続人が複数いる場合、各々の持ち分が共有になってしまう。しかし、単独で所持しようとしても、また別の問題がある。相続財産に不動産以外の資産がない場合、自分以外の持ち分を現金で支払う必要がある。これを「代償金」といい、先ほどの1億円の不動産を二人で分ける場合なら、もう一人の相続人の取り分となる5000万円の代償金を相手に払わなければならない。そのような大金は簡単に用意できるものではないため、相続人同士の関係性が悪くないのであれば一時的に共有しようとなり、後で困るというケースが多い。

換価分割の推奨 早期決断、資産守る

 対策として、きちんと遺言を残すこと。誰に何を相続させるか生前から明言しておく。ただし、相続には「遺留分」といって、指定された人以外にもある程度の遺産を渡さなければならないという制度があり、金額の大きい不動産を特定の個人に相続させようとすると、ほかの相続人との間にトラブルが発生する可能性がある。このようなケースで推奨しているのが、換価分割の指定という遺言の方法だ。これは不動産を売却し、売却代金を相続人同士で分けるというもので、相続人側の売却の意思は関係なく進められる。

 すでに共有になっている場合は、できるだけ早めに共有状態を解消すべきである。今は高齢化の時代で相続人も高齢であることが多く、一時的に不動産の共有をするつもりでも、さらに相続が発生してしまいかねない。こうなると、ねずみ算式に共有者が多くなっていく。売却はもちろん、大規模修繕をするにも全員の意思統一が必要だが、人数が多いと連絡が困難で、現状維持すら難しくなる。

 実際に共有を解消するにはどうするか。最もシンプルな手段は売却で、共有持ち分を売ることによって共有関係から離脱する。これは手持ちの現金からの金銭的なロスが出にくい一方、売却金額が目減りしてしまうという欠点がある。

熱心に講演する長谷川氏

熱心に講演する長谷川氏

 次に放棄。共有の関係では、一方的に自分が現在持っている共有持ち分を放棄して、ほかの共有者に持ち分を移すことができる。意思表示だけで放棄が可能だが、金銭面で何も得るものがないのが難点だ。放棄をすると権利を押し付けることにもなるので、人間関係についても何かしらの影響が及ぶことも考えられる。

 最後に分割。共有を分割して持ち分を明確にし、共有を解消する。これも一方的な意思表示で手続きできるが、弁護士、土地鑑定士、土地家屋調査士、登記する際の司法書士など多方面への依頼と報酬が必要になるうえ、時間がかかる。さらに土地だけでなく建物が立っていると、物理的に分割することは難しい。

 いくつか対策があるものの、いずれの手段にもメリットとデメリットがある。また、不動産の共有持ち分は評価額や税の取り扱いなどが複雑なので、税務会計の専門家に相談したほうがよいだろう。

 繰り返しになるが、不動産の共有は避けたほうがよい。どうすれば共有状態を避けることができるのか、どうすれば解消することができるのかを知り、あらかじめ相続時の対策を立てておいてほしいと思う。

(2026年4月13日17面に掲載)

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