不動産評価額、減額要素を把握
フジ総合鑑定
代表取締役 藤宮 浩
土地特性は個性的 相続税の大きな差
地主や不動産オーナーの相続税は、不動産の評価によって数千万円の差が出てくることも珍しくない。相続税を納めすぎないために重要となる、不動産評価額の減額要素について簡単に説明する。
税務署による土地の評価額は、国税庁が毎年7月に発表している土地ごとの路線価によって決まる。しかし土地の持つ個性を反映させることは難しく、計算次第で評価額が大きく変わってしまうことがある。例えば、路線価が1㎡あたり10万円の整形地が120㎡あるとしたら、その土地の相続税評価額は10万円×120㎡で1200万円になる。
しかし土地には個性がある。実際の土地は形の悪い旗竿地であったり、道路に面していない無道路地であったり、傾斜地、墓地の隣にある忌地であったりと、利用上の制限や心理的なマイナス要因を抱えているケースも多い。
土地は二つとして同じものがないため、これは当然のことで、面積が同じだとしてもほとんどの場合、同じ評価額にならない。減額の要因は複合的に重なり合っており、一つでも見落とすと、評価額に大きな差が生じてしまう。
8種類の評価区分 細かい調査で軽減
相続税評価の減額実例を挙げる。580㎡で鍵型の形の悪い土地があった。路線価図を見てみると、この土地の路線価は1㎡あたり37万円。では、この土地の評価額は37万円×580㎡なのかというと、それほど単純な話ではない。次に住宅地図を見ると、土地の上に建物が何棟か建っており、利用区分がいくつかに分かれている。続いて航空写真を確認する。さらに実地調査を行い、土地家屋調査士による測量も実行。こうした調査により、一筆の土地ながらも全部で8種類の評価区分に分けられることが判明した。
聴講者は熱心にメモをとる様子が見られた
これら8種類の評価区分は、それぞれに適用される評価の考え方が異なる。例えば、通り抜け可能な私道は、不特定多数の人が出入りするものとして非課税になる。行き止まりの私道は私道ではないものとして扱われ、価額の30%として評価。形の悪い旗竿地は不整形地補正率がかかり、評価額が下がる。さらに借地人が建物を所有している賃宅地は、自用地の価額の30%となる。道路に面する部分がない無道路地も評価額が下がる。
藤宮代表が講演している様子
このように一つの土地の中で複数の評価区分がある場合、それぞれの区分をどの範囲で切り分けるかが問題だ。どこまでが私道なのか、どこまでを貸宅地と見るのか。どう切り取って旗竿地と見なすか。やり方次第で、評価額がかなり変わってくる。先のケースで言えば、路線価そのままの計算では37万円×580㎡だったところを、きめ細かく調査することで、評価額を格段に抑えられるわけだ。
専門家の検証重要 納税後、更生請求可
土地評価額の減額要素はほかにもある。敷地内にある稲荷神や道祖神などの御神体をお祭りする場所(庭内神し)は非課税。
実際に測量してみたら土地の面積が違っていたというケースでは、土地の面積が増加した結果「地積規模の大きな宅地」の基準を満たして減額の対象になったり、逆に減少して単純に評価額が下がったりする場合もある。そのほか、崖地、傾斜地、高圧線の下の土地なども評価額が下がる。減額要素は無数にあると考えてほしい。
土地の個別性を織り込むことで、より納得感のある評価額の算出が可能となる。相続税の申告は顧問の税理士にお願いすることが多いと思うが、不動産の評価は非常に複雑であるため、不動産に精通した専門家による多角的なチェックが重要だ。すでに相続税を納めていても、申告期限から5年以内であれば更正の請求ができるため、該当する人がいるようなら検討していただきたいと思う。
(2026年2月16日15面に掲載)




