賃貸住宅フェア2022セミナーレポート

リーガルスムーズ

管理・仲介業|2022年09月14日

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孤独死、明け渡しに3カ月以上 清掃費用請求は連帯保証人に

孤独死・無断退去で慌てない! 〜残置物撤去から原状回復、契約解除の進め方〜

 夜逃げなどによる無断退去と孤独死が発生した際は、入居者本人不在で契約を解除する必要がある。手続きとしては、通常は明け渡しの裁判を行い、判決が出てから強制執行という流れで進めていくのが主流だ。

 まず、無断退去の場合について説明する。オーナーや家賃債務保証会社(以下、保証会社)、管理会社も2〜3カ月程度は様子を見ると思うが、そこから裁判をして判決が出るのが2〜3カ月後。さらにその後に強制執行の申し立てをする。だいたい9カ月、場合によっては10カ月〜1年近くかかるケースもある。

 孤独死についても裁判をするのは同じだが、まずは入居者の身内や相続人がいるかどうか捜索を行う。続いて管財人を選任し、判決が出てから明け渡しをする。孤独死が起きた場合は3カ月〜6カ月程度かかる。そのうえ相続人が見つかったとしても、スムーズに契約解除まで進むかどうかは、相続人の協力があるかどうかによって変わってくるため、順調にいくとは限らない。

 無断退去と孤独死が発生した際にオーナー側がやることは、残置物撤去と原状回復の二つだ。残置物撤去については、貴重品、残置物の保管場所確保の問題、位牌(いはい)や仏壇など処分に困ってしまうものが出てくるケースもある。

 続いて、部屋の原状回復だが、施工スケジュールがなかなか決まらない、見積もりを取っても適正な価格の判断がつかない、といった問題が発生する可能性がある。孤独死の場合は、発見が遅れると臭いや汚れがひどいこともある。その場合は特殊清掃が必要になり、通常の遺品整理よりも高額になる。

 では、残置物撤去や原状回復が必要なとき、かかった費用についてはどのように対応すればいいのか。

 通常、連帯保証人がいれば、そちらに請求をする。退去の手続きや残置物撤去、原状回復工事などの費用を請求できればいいが、連帯保証人がすべてに応じるとは限らない。

 保証会社を利用している場合には、保証限度額が設定されている。入居者が亡くなった場合はそこで保証が打ち切りになったり、無断退去なら家賃の何カ月分かを支払って保証終了になったりすることがある。さらに、明け渡し訴訟をする場合は保証会社ではなくオーナーが裁判を起こすということになり、オーナー側の負担が増える。

 無断退去や孤独死はめったに起きるものではないが、起きてしまった場合に適切に処理を進めるためにも、常日頃から備えを万全にしておきたい。万が一に備えることで負担を最小限に抑えられれば、オーナー側も安心して部屋を貸すことができ、何か起きたときでも物件の価値を下げずに済む。これが物件を維持するうえでのリスク対策になると考えている。

入居者属性意識し物件づくり 学生向け、家具・家電付き有効

所有物件112戸を満室にする 空室対策10連発

 私は元々都内で働くサラリーマンだったが、29歳の春に祖母が亡くなったことで裏山を相続することになった。体力の衰えとともに、1999年に自分用にワンルームを購入したのが家主業としての第一歩になった。その後さらに銀行から融資を受けアパートを購入することになった。現在は、合計112戸ほどを保有している。

 物件を増やしてきた中で一番簡単な空室対策は家賃を下げること。これが一番簡単かつ稼働率も上がる。ただ、家賃の総額は下がってしまうのでジリ貧の傾向になるが、それでも高い稼働率が維持できれば借金が返済できるという考え方もできる。仲介手数料にも影響するので、仲介会社にとってあまり良い方法とはいえないかもしれない。

 では物件の価値を上げる方法はどうか。特に有効なのはペット飼育可能物件にすること。実際にペット可物件を探してみると非常に少ない。ペット可とすることで稼働率が上がると見込めるが、室内飼い、室外飼いごとに対応が必要になる。特に排せつ物の処理は近所のクレームに発展することがある。これらのトラブルの原因をどう回避し、契約書に盛り込むかが課題となる。

 入居者ターゲットは、生活保護受給者や高齢者にすることがポイントだ。生活保護受給者の中には、恵まれた社会人生活を送れていない人、精神的な疾患などを抱えている人など、普段の生活を送ることが難しい人がいるが、話し合いや近所付き合いで支え合うことはできる。

 通常、入居申し込みの時点で高齢者・独身・年金受給者といったキーワードが出てくると、家主としては孤独死などの問題が思い浮かんでしまう。

 逆にいえばこの層を確実に取り込むことができれば、稼働率が非常に上がる。なぜなら引っ越しをすることが物理的にも精神的にも難しく、長期入居につながるからだ。しかし、そのためには地域や近所の人との付き合いができないと難しい。

 最後に若年層向けの対策は家具・家電付き賃貸住宅にすること。私が保有している家電付き物件には、2ドア冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、トースター、炊飯器、掃除機を設置している。

 特に反応がいいのは学生向けアパートで、風呂とトイレが別物件なのでそれなりの数の内見者があり、保護者同伴での内見が多い。温水洗浄便座も効果が高く、大学生の退去時アンケートから、物心がついた頃には温水洗浄便座がある生活様式だった人が多いことがわかった。学生向けアパートでは温水洗浄便座導入率が少ないので、募集力アップに効果的だ。

 家電付き物件はマーケティングにおいても、初めて賃貸住宅を契約する人や初めて単身赴任する人などの場合に喜ばれることが多い。

 また、仲介会社としては1日で案内できるのは4〜5件だが、その中でお得な物件のほうが決まりやすく、家具・家電付きにすることで案内もしやすい。

小川貞夫オーナーの写真

小川貞夫オーナー
群馬県太田市

 

(2022年9月12日14面に掲載)

おすすめ記事▶『外国人や高齢者受け入れ支援サービスを各社展開~後編~』

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