家賃債務保証会社「賃貸借契約解除権」認められる

統計データ|2019年07月01日

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保証契約条項差止訴訟における判決までの流れ

大阪地裁 差し止め訴訟に判決
消費者契約法違反の主張を棄却

家賃債務保証会社のフォーシーズ(東京都港区)が適格消費者団体のNPO法人消費者支援機構関西(以下、KC's:大阪市)から差し止め訴訟を起こされていた件で、6月21日大阪地方裁判所は、家賃債務保証会社による賃貸借契約の解除権を認める契約条項は消費者契約法に違反しないとの判決を出した。この判決により家賃債務保証会社をはじめ、オーナーにとっても家賃滞納発生時の対応の負担を減らすことが期待できる。賃貸業界に大きな影響を与える判決となった。

今回の裁判では原告のKC'sがフォーシーズの保証契約条項の一部が消費者契約法に違反すると主張。大阪地裁は、原告側の請求を、一部を除いて棄却した。

裁判で注目すべきは次の2点。一つ目は「有効」と認められた「家賃債務保証会社の賃貸借契約解除権」の条項。フォーシーズの保証契約第13条には、家賃滞納分が3カ月以上に達したときに同社は催告なしで賃貸借契約を解除することができるとある。二つ目は、「無効」とされた「明け渡しがあったものとみなす」という条項。2カ月間以上賃料を支払わず賃借人とも連絡が取れない状況の下、物件を相当期間利用していないと認められ、賃借人に再び物件を使用しない意思があるといえる場合に、建物の明け渡しがあったものとみなすことができ、残置した動産類はフォーシーズが搬出・保管をすることに賃借人は異議を述べないなどとするものだ。

判決が「家賃債務保証会社の賃貸貸契約解除権」を有効と認めた条項のポイントは、賃貸借契約から生じるリスクを負担する家賃債務保証会社に自らの負担するリスクをコントロールすることができる権限を与えることに合理性を認めたことにある。
判決では「本件被告(フォーシーズ)解除権付与条項は賃借人が賃料などの支払いを賃料3カ月分以上怠り、原契約(賃貸借契約)を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合に限り、被告が無催告で解除権を行使することができる旨を定めた規定と解される」と述べた。その上で、このような解除の条件は、一般的な賃貸借契約の無催告解除特約と比較して賃借人にとって格別不利益なものではなく、賃貸借契約の解除権が家賃債務保証会社に付与されることによる賃借人の不利益は限定的なものにとどまると判断し、原告の主張を退けた。

同条項の有効判決の意義についてフォーシーズ代理人の岩田拓朗弁護士は、「これまでは家賃債務保証会社の保証がついている場合でも、賃貸借契約を解除できるのはオーナー(賃貸人)のみであった。そのため、賃貸借契約を解除するためにはオーナーの下で家賃の滞納が存在する必要があると考えられ、滞納が発生しても家賃債務保証会社はすぐにオーナーに家賃を支払わず、家賃滞納を理由にオーナーが賃貸借契約の解除権を行使した後、滞納家賃分を支払う保証会社が多かった。オーナーとしてはその間家賃が入らず困るケースもあった。だが、今回の裁判では家賃債務保証会社に賃貸借契約の解除権を付与する契約条項が有効と認められ、保証会社が家賃の支払いを止める理由がなくなったので、他の家賃債務保証会社もこの条項を使用するケースは増えるだろう」と話す。

今回の訴訟は適格消費者団体が、不特定多数の消費者の利益を擁護するために個別の事例を離れて契約条項そのものの差止めを求めた訴訟であるため、この判決が確定した場合には、今後広くこの条項内容は有効と判断されるものと思われる。

一方、今回無効とされた「賃借人の明け渡しがあったものとみなす」条項について判決では「本条項の適用により、いまだ原契約が終了しておらず、賃借人の占有が失われていない場合であっても物件内の動産類の搬出・保管を行い得ることとなる。このような行為は、原契約が終了しておらず、いまだ賃貸人に物件の返還請求権が発生していない状況で、被告等が自力で賃借物件に対する賃借人の占有を排除し、賃貸人にその占有を取得させることに他ならず、自力救済行為であって、ごく例外的な場合を除いて不法行為に該当する。(中略)賃借人が『異議を述べない』との文言は、賃借人の被告に対する損害賠償請求権を放棄するとの趣旨を含む条項を解するものが相当である」とし、同条項について使用停止を命じた。

フォーシーズはこの点を不服とし、控訴する予定だという。
同条項については、賃貸人側のみでなく、賃借人側にとってもメリットがあるものだと岩田弁護士は説明する。なぜなら、賃借人が家賃の滞納などに陥り無断で物件から退去したとしても、賃借人が賃貸人に物件をきちんと明け渡さない限り、家賃債務保証会社が賃借人に代わって立て替えることになるが、そのような場合でも最終的には立て替えた家賃を支払うのは連帯保証人だからだ。賃借人に物件に戻る意思がない場合でも明確な明け渡し連絡が取れないことを理由に家賃の立て替えを続けざるを得ないとすると、賃借人や連帯保証人の負担がも大きくなる。本条項は、そのような場合に適用することを予定しているものであり、賃借人の意思に反してその占有を排除するためのものではない、という。

フォーシーズは今後控訴し、高裁で争う構えだ。

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