都心部を中心に続く賃料高騰を背景に、子育て世帯向けの住宅確保支援策が動き出す。すでに施策を打ち出したのが東京都と千代田区だ。「アフォーダブル住宅」として市場相場の8割の家賃で物件の供給を目指す。
市場家賃の8割目安 賃料高騰下の子育て世帯支援
定住促す選択肢へ 数年で300戸確保
東京都は、2026年度以降数年で、アフォーダブル住宅を300戸供給することを目指す。
一般的にアフォーダブル住宅とは、公営住宅と民間賃貸住宅の中間に位置づけられる住居であり、低所得者よりもやや上の収入層を主な対象としている。今回、都が推進する同住宅の入居対象は子育て世帯とし、家賃水準は市場家賃の75〜80%程度に設定される。東京都住宅政策本部で住宅企画部企画担当課長の谷迫清氏は「アフォーダブル住宅は、子育て世帯の定住を促すための『選択肢の一つ』として、市場への定着を目指す」とした。
都内では、住宅ストックが世帯数を上回る一方で、住宅価格や家賃の高騰を背景に、子育て世帯が「住みたい場所に住めない」というミスマッチが課題となっている。アフォーダブル住宅の供給で、これを解決していく狙いだ。
肝はファンド運用 民間参入を誘導
都の施策において供給の柱となるのは、官民連携ファンドだ。2月中に、四つのファンド組成を予定し、同ファンドの運営事業者候補として採択された9社が準備を進める。不動産業からはデベロッパー大手の野村不動産、空き家再生を行うヤモリ、賃貸業を主とする萬富、シングルマザー向けの住宅供給を支援するLivEQuality(リブクオリティ)大家さんが参画する。
ファンドの設定額は200億円以上とし、うち100億円を都が出資する。同ファンドが、物件の取得から運営・売却までを行い、収益性を確保しつつアフォーダブル住宅の供給モデルを確立することで、民間主体の供給促進を目指す。
組成を予定する四つのファンドのテーマは、子育て支援や空き家活用、ひとり親支援に分かれる。投資対象も、新築・中古マンションから中古戸建てまでさまざまだ。都への利益分配率を低く設定することにより、ファンド運用を担う民間事業者は利益を確保できる仕組みだ。
谷迫課長は「ファンドを通じた金融スキームを新たなビジネスモデルとして確立することで参入事業者を増やし、都が直接供給するのではなく、民間による供給を誘導する立場をとるのが大きな特徴だ」と話した。
ストック活用が柱 補助金1戸1000万円
千代田区もアフォーダブル住宅の供給に乗り出した。26年度以降数年で、100戸の供給を目指す。
特徴は、ストック活用型である点だ。既存住宅だけではなく、空きビルの用途変更にも対応していく。リノベーションにおいて、1戸あたり最大1000万円の補助金を出す。
入居対象は子育て世帯。特に、住み替えを検討しているが「現状の相場家賃では住み替えが難しいと感じる」世帯とした。世帯年収は区民住宅の所得基準を参考に検討していく。なお、区民住宅の入居に係る所得基準の上限は、1000万円台だ。
26年度は、モデル事業として3件のアフォーダブル住宅の供給を進める。空き家の再生と中古ビルの住宅転用を想定している。
同区環境まちづくり部山内智誠住宅課長は「まずは、千代田区に再生の対象となる空き家・空きビルがどれほど存在するのかの実態把握を行うことが目下の課題だ。これに関わる調査を、26年度から開始する」と話した。25年度内は、東京都水道局から提供される空き家特別措置法に基づいた水道の閉栓情報などを活用し、空き家の抽出とヒアリングを進めている。
千代田区も東京都と同じく、住宅価格の高騰を背景に、子育て世帯向けの住宅確保施策を推進する。山内課長は「子育て世帯にフォーカスした理由は、コミュニティーの維持にある。当区は、伝統的な祭りなどの文化が根付いているエリアで、地域交流が活発だ。そのため、幼少期から地域の伝統・文化に触れることのできる子育て世帯が住み続けることで、地域コミュニテイーの継続・維持につなげたい」と語る。
アフォーダブル住宅の供給には、民間事業者が密接に関わることがわかった。都が民間と連携して進めるファンド運用や、区が実施する空き家数の実態把握など、不動産会社を中心とした民間事業者の参入が供給拡大の鍵といえる。
(齋藤)
(2026年2月16日1面に掲載)






