『浅草橋アパートメント』は、2016年12月に竣工した8階建ての賃貸住宅だ。道路面に対して開口部を広く設けるなど「町家」の利点を現代の住まいに合う部分を取り入れてつくられた住まいだ。満室稼働の人気物件である。
東京都台東区にある『浅草橋アパートメント』は、東面約11m、西面約5mの道路に面した場所に立つ。1階は店舗とし、2~4階は1R・3戸、5・6階は2LDK・2戸、7・8階はオーナー住戸となっている。
この周辺は以前、町家風の問屋や加工所が集まった繊維の町として栄え、関東大震災や東京大空襲で焼け残ったエリアだ。そのため昔ながらの雰囲気が残る店と新しいオフィスなどが入り交じっている。そこで同建物の建築・監理を手掛けたアトリエ・ワン(東京都新宿区)は、同建物に「町家を現代の集合住宅に当てはめたらどういうことができるか」という視点を取り入れ住まいづくりに生かした。
窓を木枠で縁取り景色を絵画のように楽しめる
間口を広く取る町家の知恵を取り入れ、路地に面した間口を約5.1mとした。それに伴い上階は「間口いっぱいの窓」を採用。4本の柱を梁でつなぎ強度を保ちつつ、エレベーターを建物の真ん中に設けることで開口部を広く確保したのだ。
さらに梁の一部を高さ約36㎝、奥行き50㎝ほどある窓台として利用。インテリア小物を飾るほか、イスとしても活用できる。同社の玉井洋一氏によると「躯体がRCなので冷たい印象になりがちです。そのため人のいる場所には木を使っています」。そこで窓台やフローリングにはナラ材を使用。窓全体も木枠で縁取ることで、障子を開けると絵画のように外の景色が楽しめる工夫がされている。
幅5.1mの窓ガラスが醸す開放的な空間が好評
東面からはスカイツリー(一部住戸除く)や、祭りの日には神輿(みこし)の練り歩く姿が楽しめる。ちなみにこの窓には4枚の窓ガラスが使われ、幅5.1mもある。落下防止のため、障子の木目に合わせて用意されたバーを取り付けている。