コロナで変わる管理・仲介ビジネス
その他|2020年06月12日
新型コロナウイルスの影響で、管理・仲介事業のデジタル化が加速している。顧客との対面接触を減らしたり、在宅勤務をする必要があるからだ。不動産テック企業3社によるアンケート調査では、内見や契約手続き、オーナーや入居者との連絡業務において、専用ITツールの導入に意欲的な不動産会社が半数を超えることが分かった。すでに導入している企業の取り組みを紹介しながら、アフターコロナ時代の管理・仲介ビジネスを探ってみる。
感染対策でオンライン対応加速
「入居者アプリ」「電子申し込み」「単独内見」、5割以上が導入意欲的
175社に調査「影響あり」が8割
多くの不動産会社が今、導入を検討しているのは、一般的なビジネス用のITツールだけではない。賃貸管理・仲介事業に使う専用の不動産テックの導入だ。表1と表2は、不動産テックツールを提供するイタンジ(東京都港区)、WealthPark(ウェルスパーク:東京都渋谷区)、スペースリー(同)の3社が共同で行ったアンケート調査の結果だ。4月1~3日に、不動産事業者175人に対して、『不動産業界における新型コロナウイルスの影響とテレワーク状況に関するアンケート調査』を実施した。表2を見ると、8割以上が「業務に影響がある」と回答している。その内容は、来店者数や内見者数の減少など、新型コロナウイルスの影響で部屋探しを一時的に延期する動きを懸念するものが目立った。一方で、不動産会社はテレワークの実施によって、賃貸管理・仲介の実務に対する不安を抱えている。管理業務において不安を感じる内容を尋ねる質問では、入居者対応業務に不安を感じるという回答が最も多く51.8%。次いでオーナー報告業務が45.2%、建物巡回が39.3%だった。仲介業務では物件内覧方法が56%、契約手続き方法が44%、鍵の引き渡し方法が39.3%だった。

ITツールを導入し、こうした不安を払しょくしよとする動きが活発になっている。表1では、多くの不動産会社がITツールの導入を検討していることが読み取れる。「電子申し込みツール」「スマートロックや現地キーボックス」「電子契約ツール」「VRツール」「入居者アプリ」「オーナーアプリ/オーナーポータル」「セルフ内見システム」などの不動産テックと呼ばれる専門ツールを、「導入済み」「導入予定/導入したいと考えている」と回答した不動産会社は過半数を超えた。ここからは各ツールを導入した会社や、どのような成果が得られるかを紹介する。

スマートロックで単独内見が可能になる(写真提供:ビットキー)
■接客■
全国で増えている来店不要の部屋探し
新型コロナウイルスの感染対策として、「来店不要の部屋探し」をPRする不動産会社が増えている。本紙3月9日号では、「来店せずに賃貸契約が完結するサービスで集客を強化する動きが出てきた」とフラット・エージェンシー(京都市)やクラスコ(石川県金沢市)の取り組みを紹介したが、後に続く企業は今も全国で増え続けている。

バーチャル内見の利用方法を解説するクラスコの小村典弘社長(写真提供 クラスコ)
メールやLINEでの希望条件のヒアリングや物件提案を行い、必要であればテレビ電話などで顔を見ながら会話をする。内見は動画配信や、360度カメラで撮影した画像を取り込みVRシステムで代用。スマートロックを活用した単独内見もある。入居手続きは紙やFAXを用いることなく、オンラインで済ませる。これらの工程でITツールを部分的に導入する不動産会社も多い。