インターネットとつながった家電製品や住宅設備を備えたIoT賃貸マンションが全国で増えつつある。入居者の利便性や住まいのセキュリティー性能が向上することから家賃アップや、高い入居率の維持が期待できる。賃貸住宅をIoT化するサービスはどのような形態があるのか、提供会社を取材した。
最新機能で家賃アップの期待高まる
人気設備にランクイン
本紙2020年10月19日号で掲載した『人気設備ランキング』では「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても決まる」単身者向け物件設備の15位に「IoT機器」がランクインした。19年版では14位で、一つ順位が落ちたものの、賃貸住宅においてIoT設備が認知され、ニーズが高まっていることを示す。リクルート住まいカンパニー(東京都港区)の『2019年度賃貸契約者動向調査』では、満足度の高い設備として「スマートキー」が大幅に上昇した。機種によって異なるがスマートフォンなどで解錠操作ができる商品もあり、身近なIoT設備の一つといえる。
IoTとは「Internet of Things」の略で「モノのインターネット」を意味する。照明やテレビなどの家電、エアコン、給湯器などの住宅設備がインターネットにつながり、コントロールすることができる機能を持った住宅を一般的に、IoT住宅と呼ぶ。スマートフォンの専用アプリケーションや、音声認識マイクと連動し、住宅内にある複数の家電・設備を一括もしくは遠隔で操作できる。入居者にとって便利なだけでなく、高齢者やペットの見守り、セキュリティー対策としての役割を持つため、住宅の付加価値になる。本特集では、家主が入居者にIoT賃貸住宅を提供するために、利用できるサービスについて各社に取材した。
IoT住宅にはインターネット環境が欠かせない。そのため、賃貸住宅にインターネット環境を整備する企業が、セットでIoTを提案するケースが増えている。
つなぐネットコミュニケーションズ、スマートロックセットで販売
マンション全戸一括インターネットサービスを提供するつなぐネットコミュニケーションズ(東京都千代田区)は、インターネットインフラの品質強化とともに、IoT製品の提供を通じた入居者へのサービス向上に注力していく。
これまで主に分譲マンションへ高品質のインターネットサービスを提供してきた同社は、20年6月に小規模集合住宅を対象にした一括ISPサービス『Five.A(ファイブエー)』の販売を開始した。IPoE方式の接続で高品質の通信を実現した『Five.A』は、テレワークの普及も後押しとなり、順調に受注を獲得している。
今後、ネットインフラの提供とともに進めていくのが付帯サービスの提供だ。第一弾と位置付けるのがスマートロックのセット販売となる。25日にスマートロックのシステム開発を手掛けるビットキー(東京都中央区)との業務提携を発表。インターネットサービスにビットキーのスマートロックも組み合わせ、全戸一括で提供していく。
管理会社からの需要が高く、入居者の利便性向上につながるスマートロックの提供を通じて、インターネットサービスにとどまらない付加価値の提供と資産価値の向上を図る。つなぐネットの大橋一登社長は「将来的には生活に関わるプラットフォームをつくっていきたい」と話す。マンション入居者向けの総合サイトを通じてさまざまなサービスの提供を想定しており、入居者との接点を増やしていく。IoT関連サービスもその一環に位置付ける。
イーブロードコミュニケーションズ、Wi-Fiプランの契約に無料付帯
イーブロードコミュニケーションズ(大阪市)では『e-Broad(イーブロード)光マンション with IoT(ウィズアイオーティー)』を提供している。自宅に『eリモコン』を設置し、イーブロード独自のアプリケーションをダウンロードすれば、自宅だけでなく、外出先からも家電を遠隔で操作することが可能。室内に設置した『eリモコン』が、専用アプリ経由の指令をキャッチして赤外線を発信し、家電を操作する仕組みになっている。入居者はテレビやエアコンなど赤外線リモコンの家電をスマート家電として利用することができる。
『e-Broad光マンションwith IoT』は設置工事などが不要で、手軽な点が特徴だ
これは同社のインターネットサービス『e-Broad光マンション』のWi-Fiプラン契約物件の全住戸に無料で付帯されるサービスだ。関西で賃貸経営を行う図越寛オーナー(大阪市)は、新築した物件に同社のインターネットサービスとセットで『e-Broad光マンション with IoT』を入居者に提供している。入居者が利用を希望した場合のみ、室内に置く『eリモコン』を発送する予定だったが、図越オーナーは全ての住戸へ入居前に配布をした。「利便性が高いサービスのため、機会損失がないよう全ての入居者に使ってみてもらいたい。そのためには事前に全戸への配布を済ませておく方が効率的だと考えた」と経緯を語る。優れたインターネット環境とセットでIoT設備を提供することで、物件の付加価値向上になると考えている。
(1月25日4面に掲載)
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