コロナ禍の影響は?エリアルポ~高知編~

タクシン不動産, シエルホーム, ファースト・コラボレーション, ヤマモト地所

管理・仲介業|2021年08月27日

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 全国で人口が3番目に少ない高知県だが、人の出入りが少なく賃貸マーケットは安定している。新型コロナウイルス禍前との比較も含め、地場で管理や仲介を行う不動産事業者やオーナーに話を聞いた。

人の出入りが少ない土地柄で市況安定

 高知県は人口が68万3634人(7月時点)と全国47都道府県中45位。さらに県庁所在地である高知市に人口の約半数が集中している。年々、人口が減少する一方で毎年新築が増えており、入居物件と空室物件とで二極化が進んでいくだろうと関係者は話す。コロナ禍において、大きな変化を感じていない不動産事業者が多く、賃貸市況も安定している。

 

タクシン不動産、転勤のファミリーが減少 入居率や家賃変わらず

 高知市全域をメーンに約2700戸を管理するタクシン不動産(高知市)では入居率は94%程度。コロナ禍前とほとんど変化はなかった。

 賃貸仲介においては、今繁忙期は県外企業からのファミリーの転勤案件が減ったという。その一方で単身の転勤客は増えており、結果的に入居率はほぼ変わらなかった。

 一方、学生は例年通りの動きだった。同社では2020年夏より、ウェブ案内を導入。徐々に利用が増えていき、現在では内見の約1、2割を占める。学生や県外遠方の顧客による利用が多い。

 高知市中心部は社会人向けの1Kやファミリー向けの物件が多い。同社の入居者は社会人が7割、学生が3割。社会人は地場企業の従業員が多く、従業員数が100人以下や50人以下規模の中小企業が中心のため、借り上げ社宅は一部にとどまる。単身者とファミリーの比率は6:4程度。学生の顧客は県外からが中心だ。

 同社の管理物件では築20~30年程度のアパートが多い。また戸建て賃貸も全体の1割程度だ。賃料は単身者向けの1K、1DKで4万円程度。カップル、DINKS向けの2DK、2LDKで5万~6万円、ファミリー向けの3LDKで6万~7万円程度が相場だという。営業本部の秋月良介本部長は「戸建て賃貸は安くて4万円程度からある。高知県はもともと独自性が強い県。県外企業の支社も少なく、地場企業がメーンなので他県の経済の影響を受けづらく、家賃への影響もない安定したマーケット」と語る。

 さらに「21年の下半期もそう変わらず横ばいになると予想している。契約関連業務にウェブ活用を強化していき、申し込みもペーパーレスにするなど時代の流れにあったサービスを増やしていく」と秋月本部長はコメントした。

 

シエルホーム、津波の危険度で相場変動 山方面のエリアが人気

 高知市朝倉エリアを中心に約120戸を管理するシエルホーム(同)ではコロナ下において例年よりファミリーの退去が減少した。20年の繁忙期では例年の半分以下の退去数だった。21年のゴールデンウイーク明けから再度動き始め、例年通りに戻った。

 同社の客層はファミリーが6割、社会人の単身者が2割、学生2割だ。

 また、朝倉エリアは高知市の山側に位置し、津波が来ないエリアなため、水防法改正によりハザードマップの改訂が行われた5年前から同社の商圏内への引っ越しが増加。家賃相場も高知市中心地より単身者向けで2000~3000円、ファミリー向けで5000円ほど上がった。単身者向けのワンルームや1Kで4万円台、ファミリー向けの1LDKで約6万円、2LDKで7万円を超える程度が朝倉エリアの相場だ。一方、反対に海に近いエリアでは約10年前から東日本大震災の影響で、1万円程度相場は下がり、ファミリー向け物件であっても4万円台からある。

 高知市の賃貸住宅はアパートが7割近くと多く、マンションが3割もない程度で戸建て賃貸は少ない。県外企業が少ないので県外からの出入りが少ないのも特徴だ。同社の社会人顧客の9割が地場の中小企業に勤める。

 「コロナ禍の影響で来店前にすでに物件を決めて来店する場合が多くなった。そのため、360 度カメラによる写真を導入するなどホームページの情報の充実を行わないと下半期は厳しいのでないかと考えている。電子申し込みも取り入れて、非来店型で済むようにしていく予定」と池畠社長はコメントした。

シエルホーム 池畠佳子社長の写真

シエルホーム
高知市
池畠佳子社長(43)

 

 

ファースト・コラボレーション、道路開発で立ち退き 引っ越しや建築の需要

 県全体で約4700戸、そのうち南国市内では1235戸管理するファースト・コラボレーション(同)はコロナ禍で家賃変動や空室に影響はなく例年通りの動きだった。

 南国市は市街化調整区域が多いため駅の周りに住宅地域と商業エリアが密集しているのが特徴。

 高知県は南海トラフ地震が想定されているため、津波を気にする人が多い。南国市はハザードマップ的にも、津波や洪水・土砂災害などの恐れが低いこともあり、住宅エリアは限られるものの安全を求めて南国市を選ぶ顧客が多い。また、高知市まで車で15分程度ということもあり、高知市より家賃が安い南国市に住んで、通勤する顧客もいるという。高知市周辺エリアには複数の大学や高知工業高等専門学校もあり、学生需要が高いのも特徴だ。同社では南国市の学生仲介は年間2割程度を占める。残りは社会人で、単身者よりファミリーの方が2割程度多く、20代から40代がメーンだ。地場の中小企業に勤める地元の顧客が多く、県外からの出入りは高知市と比べると少ない。また、アパートが多く、マンションはあまり多くない。

 家賃は1Kで4万~4万5000円程度、1LDKが5万~5万5000円、2LDKで6万5000円程度で、高知市に比べ5000円ほど相場が低い。だが、ハウスメーカーは設備を充実させるなどして家賃をここ10年程、平均市況価格より上げている。反対に所有物件が築古で客付けに困ったオーナーは家賃を下げている。南国市は土地活用でアパートを建てる地主や農家が多く、新築の8割はハウスメーカーによるものだ。もともと自主管理するオーナーが多い地域だが、ハウスメーカーの台頭により空室に悩んだオーナーから管理を任されることが増えてきた。

 南国市では現在道路の拡張工事が進んでおり、空港に直通できる高速道路の計画や都市計画も進む。開発に伴う立ち退きが増え、引っ越しの需要や、土地の収用の収入を使い地主に土地活用の提案をハウスメーカーが行っている。

高知空港に直通する高知南国道路

高知空港に直通する高知南国道路。21年2月に全線開通した。(写真提供:国土交通省四国地方整備局土佐国道事務所)

 賃貸事業部の秋吉智文部長は「長い目で見ると賃貸マーケットはじり貧だとは思うが、今年の下半期においてはそう変化はないと思う。現在、IT化が世の中の常識となってきているので、積極的にウェブ接客やウェブ内覧、IT重説などを取り入れていく予定」とコメントした。

 

ヤマモト地所、コロナ下で退去控え 現在はむしろ好転

 四万十市で624戸を管理するヤマモト地所(高知県四万十市)ではコロナ下で退去が激減した。20年4月には退去の数が19年の半分以下に減少。また、新規入居に関しても同じく20年4月から徐々に減少し、21年の1~3月は成約件数が20年の約3分の2にまで落ちたという。4月以降からはコロナ禍慣れから消費活動が戻りつつあるため、回復傾向にあり、むしろ例年より成約件数が伸びているという。家賃はコロナ禍の影響も関係なく変動はない。

 四万十市には大学がないため同社の入居者はすべて社会人。ファミリーが8割程度を占め、特に20代が中心だ。単身者は実家住まいが多いため、全体の2~3割程度と少ない。入居者の多くは地場企業に勤める。

 四万十市の物件は全体的にアパートが多く、木造が多くを占める。山本祐司社長は「50㎡前後の物件が多く、ハウスメーカーが建築した物件が築浅で駐車場も込みで6万~7万5000円程度。自社管理している築20年程度の同程度の広さの物件で4万後半~6万5000円ほど」と話す。新築アパートのほとんどは大東建託によるもので、現在約550戸あるという。

 入居率はコロナ禍前から一貫してよく、全体的に好調で9割ほどと山本社長は推測する。「21年の下半期もゆるやかに良くなっていくと思っている。今後はアウトソーシングや、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進めてスタッフの時間を生み出し、オーナーや地主、中古住宅の所有者と直接会って話をする機会を作る方針を立てている」と山本社長は意気込みを語った。

ヤマモト地所 山本祐司社長の写真

ヤマモト地所
高知県四万十市
山本祐司社長(46)

 

 

新築の多くはハウスメーカー

約半数がペット共生住宅

 高知市と南国市に物件を6棟71戸所有する志磨村輝オーナーはコロナ禍の影響は特に感じなかったと言う。

 志磨村オーナーが所有する物件のほとんどはワンルームや1Kの単身者向け物件ということもあり、入居者の多くは学生や比較的若い20代から30代の地場企業に勤める単身の社会人が多い。家賃も築古の物件ということもあり、高知市の最低ラインである3万円台の物件が多くを占める。一方、志磨村オーナーの両親が所有する高知市の新しい物件では家賃の高さから転勤族や医者など高収入者が入居している。「新しくて家賃の高い物件には転勤族が、築古の物件には地場企業に勤めている人が入居しているイメージがある。家賃が高いと会社が家賃補助を出してくれないと厳しい。入居者の層が違うので特に新築物件に脅威は感じない」と志磨村オーナーは話す。空室率も現在4%程度を維持、コロナ禍で入退室の増減はなく、家賃の減額交渉もされなかった。

 収益不動産の建築はハウスメーカーが軽量鉄骨のアパートを建てることが多い。特に地主系のオーナーは積水ハウスを利用していることが多い。新築の約半数がペット共生住宅として建築されている。

 「今後は自分もペット可の物件を持ちたい。戸建て賃貸をペット可にしているが、物件をきれいに使ってくれる人が多い」と志磨村オーナーは話す。

志磨村輝オーナーの写真

志磨村輝オーナー(46)
高知市

 

(8月23・30日7面に掲載)

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