コロナ禍の影響は?エリアルポ~福島編~

リブシティ, ドロップス, 浅沼産業

企業|2021年09月14日

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 東北6県の中でも宮城県の次に首都圏にある企業の営業所が多くある福島県。新型コロナウイルス下における人流制限や、同時期に水害や地震が発生し賃貸マーケットに影響を与えている。地場の管理会社4社とオーナーに取材した。

水害地域にコロナが追い打ち、1万5000円の家賃減額も

 福島県統計課が発表している県内の推計人口によると、2021年8月1日時点での福島県の人口は181万5537人。5年前の16年10月1日と比較して6万5845人減少した。世帯数は21年8月1日時点で74万4160世帯で、16年10月1日と比較すると1854世帯減少。人口・世帯数ともに減少傾向にある。

 同じく県が公表している21年8月の経済動向では、建設需要が高水準ではあるものの動きが弱いと見られるとし、全体的にもコロナ禍の影響で景気は厳しい状況が続くとした。東建コーポレーション(愛知県名古屋市)が運営する部屋探し情報サイト「ホームメイト」(21年9月3日掲載時点)によると、福島県の新設住宅着工総戸数1万8422戸のうち、賃貸住宅が8814戸となっている。

 県全体の景気がコロナによる影響を受ける中、賃貸市場はどう変化しているのか。福島県は大きく三つのエリアに分かれており、郡山市がある中通り、会津若松市がある会津、いわき市がある浜通り。それぞれ気候も人口も異なる各エリアにおける影響について、地場の管理会社とオーナーに聞いていく。

 

リブシティ、初期費用交渉増加 家賃3000円の値下げも

 福島県の経済の中心となる郡山市を拠点に1457戸を管理するリブシティ(福島県郡山市)では、初期費用の減額交渉や入居する管理物件での家賃減額交渉が増え、コロナ下における不況の影響を感じている。

 同社の商圏である郡山市は、県内で最も人口が多い中通りと呼ばれるエリアに位置し、人口は約33万人。私立大学や専門学校、民間の医療機関が集中しており、若者から高齢者まで幅広い年齢層が住むエリアだ。また、首都圏にある企業の営業所が多く拠点する場所で、工業製品の出荷額が高いという。人口は減少傾向にあるものの、県内のその他市町村と比較した際、減少の速度は緩やかだ。

 同社の管理物件の入居者属性は、個人が80%、法人が20%を占める。個人の内訳は、学生から社会人をまんべんなく網羅。法人の内訳は、単身が74%でファミリーが24%。家賃相場は、単身向けが約4万3000円、ファミリー向けが約6万円だ。

 熊田春夫社長は「当社はもともと敷金をもらっておらず初期費用の安さが売り。しかし、コロナ不況の影響か、新規に部屋探しをする顧客からの家賃交渉が問い合わせの7~8割を占めるようになった。コロナ下以前は3~4割だった」と話す。

 さらには、入居済みの物件で家賃の値下げ交渉が3件発生した。理由はコロナ禍により仕事がなくなった、または収入が不安定になったというもの。20年5月、7月、21年4月にそれぞれ3000円程度の家賃値下げに対応したという。

 今後も、予期せぬ災害などにおいて、状況に応じ対応していく方針だ。

リブシティ 熊田春夫社長の写真

リブシティ
福島県郡山市
熊田春夫社長(58)

 

 

ドロップス、地震被害で工事受注増加 法人の動きが鈍る

 同じく郡山市を拠点に1030戸を管理するドロップス(福島県郡山市)は、コロナ下の21年2月に発生した地震の影響で、大きい被害だと管理物件の外壁崩れが起こり工事受注件数は50件に達した。20年同時期の同等の修繕工事受注件数は14件程度だったという。

 また、21年1~3月における成約件数が例年の7割にとどまった。入居者属性の1割にあたる法人と、個人入居者のうち3割のファミリーと2割の学生の問い合わせが減少したことを理由に挙げた。コロナ下で提携している専門学校のオンライン授業の導入推進や、法人の転勤に伴う移動の自粛による影響を感じているという。

 同社の管理エリアは郡山市全域。中でもJR「郡山」駅から車で10分ほど離れた住宅街エリアが中心のため、法人に人気の高い駅前物件は少なく、入居者属性は個人が9割、法人が1割。個人の入居者の内訳は、社会人が8割で学生が2割。社会人のうち、単身や2人暮らしが6割で、ファミリーが4割を占める。

 家賃は、単身向け1DKや2DK、1LDKが2万9000~5万5000円。ファミリー向け2LDK~4DKが3万9000~7万5000円となる。コロナ下における家賃の推移はない。

 管理営業部の永山佳奈マネージャーは「入居率はコロナ下以前と比較し約2%減少の91~92%。一部の入居者から問い合わせが減少したものの、コロナ下で移動が制限された法人などの退去も少なかったため、管理事業に大きな影響は見られなかった」と話す。

 21年2月の地震の影響で受注が増加した管理物件の工事については、主に外壁への被害だったため退去に至るケースは発生していない。

 今後は、すでに積極的に行っている住宅確保要配慮者の受け入れをさらに推進していく方針だ。これに該当する既存入居者のコロナ下における家賃滞納や退去は0件だったという。外国人や生活保護受給者からの相談件数が増加している背景も鑑み、ニーズを見込んでいる。

 

浅沼産業、観光業従事者の退去 コロナ不況に警戒

 会津若松市は人口約12万人。観光業が盛んで、旅館や飲食業などの観光産業従事者が多く、コロナ禍での外出制限や営業時間短縮による影響を踏まえ、地元の管理会社は今後の家賃滞納・退去に関わる動きに注意を払っている。

 管理戸数3120戸の浅沼産業(福島県会津若松市)では、コロナ不況での仕事解雇を理由にした家賃未納および退去が3件発生した。浅沼文英社長は「現時点では賃貸管理事業売り上げに大きな影響はないが、先行き不透明なコロナ下で、観光業や飲食業に従事する入居者の同様の理由による退去が発生することに警戒している」と話す。

 同社の管理エリアは会津若松市全域。大きな温泉街が二つ立地する観光業で栄えるエリアだ。管理物件の入居者属性は、単身者が6割、ファミリーが4割。全体で個人契約が8割を占める。管理物件の平均家賃は、単身向けが4~5万円、ファミリー向けが4~7万円。住居家賃の変動は見られていない。

 コロナ下の変化として、部屋探しをする顧客からの問い合わせ手法を挙げた。浅沼社長は「飛込み来店や電話ではなくメールでの問い合わせが1日5、6件に増えた。コロナ下以前はこれの7割程度」と振り返る。

 外出自粛の影響による在宅時間の増加で、パソコン利用の機会が増えたのではと分析する。来店や電話と違い即効性の低いメールでの対応について、問い合わせからのタイムラグをなくし成約につなげる必要性を感じているという。電子申し込みへの対応やポータルサイトからの流入強化に努めていく方針だ。

浅沼産業 浅沼文英社長の写真

浅沼産業
福島県会津若松市
浅沼文英社長(76)

 

 

家賃滞納1件発生 飲食関係者に影響

 東京電力の発電所が拠点を置き、東日本大震災の復興関係者が住む社宅が立ち並び、地元の中小企業に勤める会社員が多く住むといういわき市。人口は約33万人。駐車場やテナントの貸し出しを事業の柱に置く地場の管理会社では、21年4月から管理を受託したアパートで1件家賃滞納が発生。コロナ不況による影響があった飲食業に携わる入居者だったという。

 管理物件の入居者属性は9割が個人。そのうち社会人が9割。家賃平均は単身向けが3万5000円でファミリー・2人入居向けが4万~4万5000円だ。

 一般媒介物件で客付けした入居者から、住居確保給付金の申請について問い合わせを受けたこともあり、コロナ下における影響を大きくはないが感じるという。

 

川の氾濫の影響続く ファミリー向け低稼働

 福島県郡山市内に全30棟200戸の賃貸住宅を所有する古川広毅オーナーは「19年に福島県を襲った台風19号の影響による阿武隈川の氾濫で、所有物件が立地するエリアがハザードマップに登録され入居率に影響を及ぼし始めた。その中で、コロナ下の人流抑制の影響が追い打ちをかけている」と話す。

 所有物件の7割がファミリー向けで、家賃は5万5000~8万円。単身向けは4~5万円となる。現在の稼働率は85%。コロナ下において稼働率に大きな変動はないが、一部エリアの入居率の低迷を警戒している。

 台風で氾濫した阿武隈川の東側には日本大学のキャンパスが立地するため、東側や西側エリアの物件は学生入居者が多くを占める。

 浸水エリアとしてハザードマップに登録されたことでエリアの人気が下がっている中、コロナ下におけるオンライン授業の導入で学生の引っ越し需要が低迷。さらには、東側と比較した際、浸水被害の可能性が低い西側には競合となるハウスメーカーの新築物件の供給も増え、空室対策に追われているという。

 影響があるのはファミリ―向けも同様だ。古川オーナーは「所有物件のうちの3割が西側エリアに立地する。そのうちのファミリー向け物件1棟の1階について、21年8月に1万5000円の家賃減額を実施した」と話す。21年1~3月のファミリー物件への問い合わせは、コロナ下以前と比較し5割減だった。

 ファミリー物件の動きが鈍っていることについては、コロナへの感染を警戒し、転勤に伴う引っ越しを家族単位ではなく単身で行う社会人が増えたのではないかと古川オーナーは分析する。

 「全体的な傾向として、エリア相場より1万~2万円高い7万円台のファミリー物件の入居率が悪い。先行き不透明なコロナ下において、賃貸にかける費用を節約するためか、4万~5万円台のファミリー向け物件に問い合わせが集まっている印象」と話す。

 今後は、特にハザードマップエリアに立地する物件への入居率を高めるべく、物件の付加価値を模索していくという。2019年頃から所有物件エリアで取り組んでいる地域の価値向上プロジェクト「小原田の里守」で培ったコミュニティーづくりのノウハウを、各物件に踏襲していく。

古川広毅オーナーの写真

古川広毅オーナー(45)
福島県郡山市

 

 

(9月13日10面に掲載)

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