【賃貸仲介会社の経営分析】ウェブ申し込み導入で業務効率化

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管理・仲介業|2022年02月21日

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 賃貸仲介会社の契約関連業務の実態を探る本企画。今回は4社に取材した。中には外部システムを採用することによるセキュリティ低下を懸念する会社もいた。

コロナ禍で電子化ニーズ

ロコプランナー、申し込みは紙が6割

大手と地場に対応の違い

 千葉県柏市を中心に年間1200件の仲介を行うロコプランナー(千葉県柏市)では、申し込みの6割以上を紙で行っている。地場の管理会社の約5割がファクスを使い、大手と地場で契約の電子化に関して二極化が進んでいるという。

 同社の年間の売り上げは1億5000万円。事業別売り上げ構成比率は、賃貸仲介が80%、賃貸管理が5%、そのほかの付帯サービスが15%。全社員12人のうち、賃貸仲介の営業スタッフは9人だ。

ロコプランナー柏市店の内装

ロコプランナー柏市店の内装

 商圏は千葉県柏市を中心に、流山市、我孫子市、松戸市、白井市で、仲介店舗は2店舗。物件は、ワンルームや1K、1LDKの単身者向けが60%、カップルやファミリー向けの2LDK、3LDKが40%ほど。それに伴い入居者属性も単身者が多く、そのうち学生は約20%。流山市エリアでは新婚カップルやファミリー層が70~80%を占めるという。

 賃貸仲介事業の売り上げは年間1億2000万円。内訳として仲介手数料が約65%、AD(広告費)が約35%だ。仲介手数料は家賃1カ月分。仲介営業担当1人あたりの平均契約数は年間133件。平均成約単価は約10万円だ。

 同社では2020年4月頃からオンライン内見やIT重説などの環境整備を始めた。現在、同社の内見後の申し込みは紙が60%、電子が40%。主に客付けを行っているため、管理会社によって申し込み方法が異なり、大手の管理会社のみオンラインに対応している状態だ。

 家賃債務保証会社は主に日本セーフティー(東京都港区)を使う。審査の書類などは6割が紙に記入し家賃債務保証会社にファクスしている。メールでの対応も徐々に増えてきているという。

 重説と賃貸借契約は同日に実施し、対面が約9割、非対面が約1割。IT重説はZoomを使用し、遠方からの顧客対応に使用。保険会社は全日ラビー少額短期保険(東京都千代田区)の代理店となっており、申し込みはメールで行う。

 申し込みから契約までの所要期間は1週間前後。鍵の受け渡しは店頭で行っている。同社の國峯忠弘社長は「内見から契約までの過程でファクスを使用している管理会社が5割ほどある。完全電子化にはまだ時間がかかるだろう」と語った。

 同社は地元出身者の採用を強化し、地元ならではの情報を顧客に提供できる人材を増やしている。今後、オーナーとの関係構築にも注力し迅速なリーシングを徹底していく。

ロコプランナー 國峯忠弘社長

ロコプランナー
千葉県柏市
國峯忠弘社長(43)

  

  

川商ハウス、21年にウェブ申込システム導入

契約書類の出力を簡略化

 年間4000件の賃貸仲介を行う川商ハウス(鹿児島市)は、21年にウェブ申込システムを導入したことで、申込業務だけでなく、契約書の出力作業も簡略化され、業務効率が向上した。

 売上高のうち、事業構成比は賃貸管理が30%、賃貸仲介が20%、売買仲介が10%を占める。鹿児島市内を中心に10店舗を展開。従業員は200人で、そのうち40人が賃貸仲介に従事している。

川商ハウスの会社情報

 賃貸仲介事業の売上高には、仲介手数料とADを計上。保険などの代理手数料は含まない。仲介手数料は、家賃1カ月分を基本とするが、大学と提携した割引や、同社の管理物件への住み替え対象者の割引を実施し、家賃の0.5カ月分とすることも少なくない。

 営業スタッフ1人あたりの賃貸仲介件数は年間100件。成約単価は平均7万6000円だ。専任媒介が7割、一般媒介が3割を占める。

 入居申し込みの実施比率は紙が6割、電子が4割になる。電子申し込みに対応した不動産会社が周りで増えている状況もあり、21年9月にイタンジ(東京都港区)のウェブ申込システム「申込受付くん」を導入した。主に自社管理物件の仲介時に利用。他社管理物件、高齢者、法人の申し込み以外で対応している。

 新型コロナウイルス下では、来店せずに内見場所で営業スタッフと待ち合わせをし、内見後に現地解散を希望する顧客が増加。内見後に入居を希望する顧客には、現地で電子申し込みの案内を顧客のスマートフォンに送ることで、店舗に戻り顧客が紙の申込書に記入する時間を省けた。

 家賃債務保証会社は、アルファー(鹿児島市)、ジェイリース(大分市)などを利用する。入居審査に関しては電子申し込みの場合だとオンラインで行い、紙での申し込みはファクスとなる。

 重説は対面が9割、非対面が1割だ。IT重説はコロナ下で増え始め、現在は遠方客を中心に対応。同社は各店舗でZoomのアカウントを保有し、利用する際は日時が被らないようにスケジュールを組んでいるほか、本店ではIT重説専用の小部屋を設けている。

川商ハウス本店の内観

川商ハウス本店の内観

 賃貸借契約は、重説後、同日に行っている。申し込みから契約までの所要期間は1~2週間だ。

 保険会社に関しては、東京海上ウエスト少額短期保険(大阪市)の代理店となる。支払い方法は、月額払いと2年分の一括払いを用意している。

 鍵の受け渡しについては原則的に店舗で入居日に行っている。本店の揚村貞貴店長は「物件や顧客情報を管理する基幹システムと申込受付くんの連携で情報の手打ち作業が減り、契約書の出力が10分ほどで完了するなど、業務時間の短縮につながっている」と語る。

(2022年2月21日5面に掲載)

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