熱海で発生した土石流災害、遺族ら「人災」と主張

ZEN(ゼン)ホールディングス,新幹線ビルディング,さくら共同法律事務所,加藤・浅川法律事務所

事件|2022年03月18日

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土石流発生直後の様子(写真提供:マチモリ不動産)

 2021年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害が人災だとして裁判が起こされた。多くの被害を出し、いまだ復興も計画段階の中、遺族らは盛り土を行った不動産会社の責任を問う。

土地の新旧所有者を提訴

遺族ら84人が訴訟賠償請求58億円超

 21年7月に静岡県熱海市にて発生した土石流災害について、21年9月に起こされた民事訴訟の第一回口頭弁論が5月18日に行われる。

 原告は土石流災害の遺族ら84人。「災害は違法な盛り土が原因の人災」とし、盛り土を行った土地の新旧所有者である新幹線ビルディング(神奈川県小田原市)とZEN(ゼン)ホールディングス(東京都千代田区)およびその関連企業を含む5社と、各社社長を含む役員ら8人を訴えた。損害賠償請求額は58億1948万円。

 同訴訟に先立ち、21年8月には業務上過失致死と重過失致死容疑で、21年11月には殺人容疑で、遺族らによる刑事告訴が起こされている。ともに被告は新幹線ビルディングの天野二三男社長と、ZENホールディングスの大株主である麦島善光氏だ。

盛り土分の土砂減少写真比較で判明

 土石流被害では、98軒の住宅が倒壊・破損。住宅の住人ら27人(災害関連死1人含む)が亡くなった。

 盛り土がされた土地は、宅地の分譲開発を行う新幹線ビルディングが06年に取得。その後、盛り土や産業廃棄物の不法投棄が行われた。11年には不動産の分譲、売買、賃貸、管理などを行うZENホールディングスの大株主である麦島氏に土地は譲渡された。

 元々、盛り土量は熱海市に3万6000㎥と申請されていた。しかし、09年に国土交通省が撮影した写真と19年に静岡県が撮影した写真を比較すると、当初の申請よりも大幅に多い約5万4000㎥になっていたことが確認された。また、土砂災害後の21年7月5~6日に撮影された写真を19年撮影の写真と比較すると約5万5000㎥の土砂が減少していることが判明した。

 そのため、原告らはこの盛り土が土石流災害の原因だと主張している。原告の弁護団代表を務める加藤・浅川法律事務所(東京都港区)の加藤博太郎弁護士は「違法な盛り土や産業廃棄物の投棄が継続的にされており、たびたび行政指導があったにもかかわらず、ほとんど措置がされていない。非常に悪質だ」と話す。

 一方、ZENホールディングスの大株主である麦島氏の弁護を務めるさくら共同法律事務所(東京都新宿区)の河合弘之弁護士は「新幹線ビルディングからの契約書や重要事項説明書に盛り土については一切記載がなく、危険である認識はなかった。天災でもあり、人災でもある。一番責任があるのは前所有者である天野氏。ただ、事故が起きた土地の現所有者であることは重く受け止めている」と語った。

 刑事告訴、民事訴訟ともに、争点は土石流が人災であるかどうか、またどれだけの責任の所在があるかだ。原告側は、人災であることの立証ができるかがカギになる。

(2022年3月21日24面に掲載)

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