【賃貸管理会社の経営分析 ~受託営業編~】「お試し管理1戸から!」を入り口に年間360戸管理

オーリック不動産,朝日住宅

管理・仲介業|2022年07月04日

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 本企画では「受託営業」に焦点を当て、各社がどのように管理戸数を増やしているのかを調査。あえて仲介店舗の店長がオーナーの相談に対応するほか、お試しで1戸を管理受託することで他物件の管理も受託するなど各社の工夫が見られた。今号では2社の取り組みを紹介する。

オーリック不動産、各エリアの店長が相談対応

リーシング力で訴求

 管理戸数1万7917戸のオーリック不動産(鹿児島市)では、仲介店舗の店長を中心とした受託営業で管理を獲得している。2021年度は、約1500戸の増加となった。

オーリック不動産の会社情報

 管理物件のエリアは鹿児島県内全域。管理を受託するオーナーは約900人。

 オーナーの属性は、個人投資家が約95%、地主が約5%で、管理する物件の傾向は、一棟賃貸マンション・アパートが全体の約9割を占めている。

 新規の管理受託のうち、既存オーナーの追加受託や新規顧客紹介が7割、地元設計会社からの紹介が3割だ。

 管理業務担当者は65人だ。管理物件を拠点のある五つのエリアで分け、各拠点内では、一次対応した社員が相談内容に応じて案件ごとに担当業務の部門に振り分けている。

 管理受託営業は専任の担当は置かずに、県内9カ所にある賃貸仲介店舗の店長を中心に行っている。

オーリック不動産 管理事業部拠点の外観写真

管理事業部拠点の外観

 賃貸仲介店舗の店長が受託営業を担当するメリットは、入居者ニーズの知識量が一般社員よりも多く、家賃査定やリフォームなどの相場などにも精通していることで、オーナーや設計会社へ説得力ある説明ができる、という点が挙げられる。

 他業務との兼務のため、管理受託営業の時間は意識して確保しているという。

 既存オーナーへの自宅訪問は基本的に行っておらず、空室時の提案などの際に、電話やメールなどでコンタクトを取る。その際に、自主管理物件の有無についてヒアリングを実施し、追加受託につなげているという。飛び込みで相談にきた新規オーナーにも基本的に店長が対応する。

 地元設計会社への営業は、15年ごろから本格的に開始。店長が足しげく通い、リーシング力などの同社の強みを説明しながら、関係を構築。

 その結果、近年は設計会社から同社へ指名での紹介で、新規オーナーから家賃査定の依頼がくるようになり、新築物件の管理受託に至っている。

 実際に管理受託の相談に進んだ際は、店長と管理業担当の2人で担当。来店、訪問のどちらにも対応している。

 同社は鹿児島県で唯一のエイブルネットワーク加盟店であり、その全国的な知名度による安心感と、社内で入居率の目標を掲げる。リーシング力の強みを、受託時の訴求ポイントとする。

 中村一竜取締役は「今後も支店のあるエリアを中心に、鹿児島県内でさらに戸数拡大していきたいと考えている。空室時のリフォーム提案を積極的に行い、入居率を上げ、リーシング力をさらに向上させていく。22年度は入居率97%を目標にする」と話した。

朝日住宅、お試しで1戸から提案

管理4000戸を目指す

 島根県松江市を中心に3550戸を管理する朝日住宅(島根県松江市)では1戸をお試しで管理受託することを入り口に信頼を得て、そのほかの物件での受託を獲得。直近1年間で360戸増、6戸減と純増は354戸だ。

朝日住宅の会社情報

 同社の商圏は松江市。管理を受託するオーナーは約400人で地主系が約7〜8割、投資家系が約1割。

 管理受託営業の専任は1人。そのほかに、管理営業などとも連携し、会社全体で管理戸数を増やしている。管理受託増加のうち、既存オーナーからの追加受託が40%、新規オーナーからが35%、新築物件の受託が20%、その他が5%だ。

 受託営業に当たって、20年から、1戸の管理をお試しとして受託する手法を開始。その後、それをきっかけにほかの物件の依頼につなげている。

 今まで管理を受託していなかった物件であっても、客付けをした時や家賃滞納などの困りごと相談など、何かしらの接点ができた際に担当スタッフが、お試しでの管理を勧めている。

 営業にあたって専任スタッフが注力しているのは、オーナーリストの作成だ。自主管理オーナーや募集のみを行っているオーナー、他社に管理を委託しているオーナーの一覧を作成する。

 そのために、市内を週ごとにエリアを決めて周り、空室が目立つ物件や、共用部の清掃が足りていない物件を見つけてリストアップしている。

 そのオーナーリストを下に訪問し、空室が目立つ物件に関してはまずは募集を任せてもらい、成約すれば1戸からでも管理を受託。そこから信頼を得てほかの物件の管理も受託している。

 そのほかにも、月に1回にはオーナー向けの勉強会を開催。社員が講師として、相続や今期の繁忙期市場などをテーマに解説する機会を設けている。勉強会は既存オーナだけでなく、管理外オーナーにも門戸を広げ、オーナーとの接点を作っている。

 同社では2、3年後には管理戸数4000戸を目標に掲げる。そのために今まで注力できていなかった、JR山陰本線松江駅の北側のエリアに関して、受託を注力していく予定だ。4年前には北エリアに新店舗を出店し、同エリアでの知名度向上に努めている。

 営業課の芝野祐貴課長は「新規オーナーを増やすのも大切だが、管理を増やすだけ増やしても管理が行き届かず、既存オーナーの管理離れにつながる。新規獲得と既存オーナーのフォロー両方をバランスよくやっていきたい」とコメントした。

(2022年7月4日5面に掲載)

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