賃貸仲介大手のエイブル(東京都港区)は、東京内科医会と協力して透析患者100人をめどに3カ月間住宅を提供する。医療機関周辺の物件をエイブルが借り上げ、家具・家電等を設置した上で提供する。原則的に敷金・礼金などの入居一時金と家賃は無料。3カ月程度を目安に、患者の事情に応じて最長6カ月程度まで対応する考えだ。自立した生活が可能な人が対象。家族世帯で避難している人についても相談に応じるという。
「被災した人工透析患者の住宅が問題になっている。どうにかならないか」と知人から相談された不動産投資家の藤山勇司オーナーの呼びかけにエイブルが応えた。東京都には福島県から人工透析患者が410人避難しており、都が用意した施設3カ所に宿泊している。
「東京での生活の長期化が予想される中、患者さんの中には体調が悪化している人もいると聞きました。患者さんが今必要なのは、安心して生活できる住まい。こんな時だからこそ、家主としてできることはないか。私なりに考え、『医療難民救済プロジェクト』を立ち上げました」
藤山オーナーは、千葉県木更津市に所有する5室の空き部屋を被災者に無償提供することをツイッターで明らかにするなど、震災直後から個人的な活動を続けている。しかし、一人の力ではまったく物件が足りない。組織的に協力を得られる企業はないかと探す中で声をかけたのが、日ごろ取引のあるエイブルだった。「医療難民の伊達直人になってくれ」。必死の説得が仲介大手を動かした。
東京内科医会から住宅を希望する患者の情報をエイブルに送り、店舗スタッフが通院先の医療機関周辺の物件を探す。同社管理物件などに限定せず、家主の了承を得られた物件を借り上げの対象とする考え。当面は、首都圏にある270店舗の直営店で対応する予定だ。24日の時点で「すでにお問い合わせが来ています」(同社経営企画室)という。
藤山オーナーもエイブルも、提供する世帯数をさらに増やしたいとの気持ちがある。物件数が増えれば、人工透析患者に限らず幅広く受け入れることができる。最大限の住宅提供をしていく予定だが、「安価での借り上げに応じていただける家主さんがいらっしゃれば、ぜひご連絡いただきたい」と協力を呼びかける。
連絡先はエイブルCHINTAIホールディングス経営企画室(03―5770―2602)。