銀行や証券、保険などの金融会社は、資産家に出会い、商品を提案して買ってもらうまでの営業工程に莫大(ばくだい)なお金と手間を費やしている。この顧客獲得プロセスを効率化するために生まれた金融プラットフォームが『ZUU online(ズー・オンライン)』だ。同サービスの仕組みからは、同じく資産家をターゲットにする不動産会社も、ビジネス上で多くのヒントが得られる。運営企業であり、設立5年で東証マザーズに上場したZUU(東京都目黒区)の冨田和成社長にビジネスモデルと現状を聞いた。
ZUUの事業は二つ。会員料・広告料を得る「メディア・サービス」と、金融機関などの販促・営業業務を支援する「フィンテック化支援サービス」だ。19年3月期の売上高は前期比40%増の13億1700万円と大きく伸びている。うち「メディア・サービス」は約5億円(同46%増)、「フィンテック化支援サービス」は約8億円(同36%増)だ。
「メディア・サービス」はメーンの『ZUUオンライン』を扱い、複数のサイトを運営し、トータルの月間アクセス数は月内895万人に達している。一般ユーザー向けに資産運用やライフスタイルに役立つ情報を発信し、国内金融系ポータルサイトでは最大規模になっている。
ユーザーが無料会員登録をし、サイトの記事を購読すると履歴データが残る。ZUU側では、ユーザーの購読ニーズをタイムリーに把握できる。これらのデータを基に、企業からの情報をユーザーに直接配信するターゲティング広告や、広告主企業への送客に対する成功報酬が収入源となっている。
冨田社長は、以前勤務していた野村證券での体験からこの事業を立ち上げた。毎日何10件もの見込み顧客に飛び込み営業をしているうち、金融業と顧客の情報の格差を実感したのがその理由だ。