物件不足で対応しきれず
熊本地震の被災地で賃貸住宅不足が深刻化している。
一方、管理会社の物件確認も遅々として進まない。
熊本市に管理物件を持つ不動産会社らに現状を聞いた。
熊本地震発生から3週間、住めなくなった自宅や避難所から賃貸住宅に移りたいと、仲介店舗に人が押し寄せている。
未だに余震が続く中、ゴールデンウィークが終わっても復旧作業は継続している。
地震の被害が甚大だった熊本市益城町の水道復旧はまだ6割。
日々の生活にも困る状況の中、住まいを求め、人々が不動産会社に足を運ぶ。
大東建託(東京都港区)は熊本エリアに2700棟を受託する。
同社は「空室がない。仮設テントを設置し、熊本支店を開いているが、部屋探しに来る顧客を断っている。もともと管理物件は入居率が高かったので、空室も少なかったがすでにいっぱい」と話す。
エイブルFCの熊本地所(熊本市)熊本中央店は、通常時に1日5~6組の来店だったのが15~20組に急増した。
半壊被害にあったアパートに入居していた12~13名全員に熊本県内で入居できる物件を紹介した。
だが、管理物件の入居者への物件紹介に加え、震災被害で住まいを失った顧客が殺到し、提供できる物件が不足。
問題になっているのは、県が進める建物診断で黄(一定の修理等を行えば使用継続可能)や赤(構造的に問題があり倒壊の危険性が高い)の診断を受けた物件の入居者からあがる「転居したい」との声に応えられていない点だ。
同社は「とにかく紹介できる物件がない」と悩む。
「仮設住宅などの準備が行政主導で進んでいることは把握しているが、その数も不透明。供給時期が見えず、今すぐ入居できる物件の確保が急務」。
進まぬ建物の安全確認
賃貸住宅の被害は未知数だ。
管理物件の確認が終わっていないと話す企業が多く、数社を除き、避難中の入居者を把握しきれていない。
レオパレス21(東京都中野区)はこう話す。
「被災エリアの全物件の安全確認は完了しているため、入居者から『住み続けても問題ないか』という連絡には回答できるが、その一方で、問い合わせが多すぎるためコールセンターで充分に受け切れていない」。
タイセイ・ハウジー(東京都渋谷区)は4月20日に法人営業部の担当者が現地入りした。
「提携する管理会社に話を聞くと、目視での確認はできるが構造をチェックできる専門家が少なく手がまわらない状況。確認できていない物件も多いようだ」という。
入居者の生命の安全をいかに守るか、管理会社の責任は重い。