環境配慮で企業からも相談
三井不動産(東京都中央区)は、毎日新聞社(東京都千代田区)が所有する新聞販売店を、既存建物の80%以上を再利用できる「リファイニング建築」を活用して賃貸住宅へ再生した。2月から入居者募集を開始し、全14戸中13戸が成約済みだ(4月19日時点)。
リファイニング建築とは、青木茂建築工房(福岡市)の建築家、青木茂会長が提唱する再生建築の手法。今回の再生にあたり、設計・管理として携わる。同社は2016年から老朽化した不動産のコンサルティングサービスを開始。リファイニング建築を活用した賃貸住宅の再生を都内で7棟行ってきたが、コンバージョンは今回が初だ。
再生した物件は、東京都板橋区高島平に立つ築26年のRC造地上4階建て。新聞販売店から賃貸住宅へ用途変更して再生できないかと、毎日新聞社から三井不動産へ相談があったという。
収益不動産が老朽化した場合、改修や建て替えが考えられるが、建築費の高騰や法改正により同じ規模で建て替えできなくなるなど収益性が確保できないケースも多い。リファイニング建築の場合、既存建物の80%以上を再利用するため、建て替えより工事期間が短く、コストも抑えられる。賃料は新築物件の90%以上の設定が可能だという。
既存物件を生かすことで、建て替えよりも環境に配慮できる。三井不動産は東京大学との協働研究で、リファイニング建築による再生が建て替えよりも二酸化炭素(CO₂)排出量を約72%削減できることを21年に発表。CO₂削減に取り組む法人からの問い合わせが増えたという。
三井不動産・ソリューションパートナー本部レッツ資産活用部資産活用グループの宮田敏雄チーフコンサルタントは「今後は老朽化不動産の再生やCO₂削減を課題とする法人の利用が増えることが想定される。特に三大都市圏にある旧耐震基準のRC造はリファイニング建築がマッチする可能性が高いと考えている」と話す。
(2024年5月20日2面に掲載)