入居希望者の「入り口」設計重視
WAGSPACE
小宮 康裕代表
愛玩動物需要、増加 「三つの設計」で準備
ペット飼育者の増加と共に、賃貸住宅におけるペット対応は避けて通れないテーマとなっている。ペット飼育可能賃貸を運営するために欠かせない考え方として、当社が大事にしているのは「三つの設計」だ。それうと、その後の運用や収益設計で工夫を重ねても、改善に限界が生じやすい。ペットを飼っている入居希望者が物件探しの際に、「この物件は自分たが入り口設計、運用設計、収益設計になる。
入り口設計は、どんな物件にするか、どう募集をするか、入居審査や契約ルールをどう整えるか、といった最初の準備の部分。運用設計は、ルールの策定や清掃、トラブル対応、コミュニケーション体制の確立など、入居してからの生活を支える仕組み。収益設計は、賃料や初期費用の考え方、原状回復などのリスクへの備え。これらをどう設計するかがポイントになる。
三つの設計のうち、入り口設計について詳しく見ていく。これが不十分なまま運営を始めてしまうと、その後の運用や収益設計で工夫を重ねても、改善に限界が生じやすい。
ペットを飼っている入居希望者が物件探しの際に、「この物件は自分たちに合う」と感じてもらえなければ、そもそも選んでもらえない。具体的には、建物や設備といったハード面と、募集の訴求方法、審査のプロセスなどのソフト面に分かれる。
まずはハード面の物件のつくり方。ペット用の設備には、足洗い場、リードフックやドッグラン、キャットドア、キャットタワーなどいろいろなものがあるが、これらは「この物件はペットと暮らす人を歓迎します」というサインになる。ただし、ただ設備を設置すればいいというわけではない。ペットと飼い主の動線や、しっかりした生活のゾーニングを意識しないと、全く使われず、ただそこにあるだけの設備になってしまう。大切なのは設備自体ではなく、入居者とペットにどう暮らしてもらうかを意識した配慮と設計だ。やみくもに設備を増やしてもオーナーや管理会社の手間が増える一方、設備に頼りすぎると確実に過剰設備になって建築コストが上がり、賃料に反映しきれなくなるケースも考えられる。まず「どんな住まいと生活を入居者に提供するのか」というプランを立て、必要な設備と不要な設備をしっかり見極めていかなければならない。
セミナーには、150人の聴講者が集まり、立ち見も出た
募集戦略の重要性暮らしの安心構築
続いて、募集戦略。ここで最初に考えるべきはターゲットの設定で、入居者がどんな飼育者か、どんなペットかを想定するかによって打ち出す魅力と訴求ポイントが変わってくる。ここで飼育動物の種類や頭数の上限、付帯条件による追加費用の有無などを具体的に示すことが、入居者の安心感や信頼につながる。
次に入居審査とペット審査。飼い主のモラルとマナーをチェックするため、散歩の頻度や、清掃などの飼育状況を確かめる。ペットの種類や性格も大切だ。またしつけの状況も確認しなければならない。この審査は、ほかの入居者に安心して住み続けてもらうためにも必要で、ペットを通じて良質なコミュニティーを形成するために欠かせない。
最後に、契約条件とルールの明文化。ペット可物件では、ここを曖昧にしてしまうと必ずトラブルにつながる。最初に「どんな条件で、どんなルールで住んでもらうのか」をはっきりさせておかなければならない。先にも話したが、飼育できる動物の種類と飼育頭数の上限は契約書に明記するべきだ。さらに、ペット飼育に関する特約をきちんと作り、退去時のクリーニング費や修繕費の負担範囲などを入居者と合意しておくことも重要。こうしたルールを明文化しておけば透明性が生まれ、入居者との信頼関係の基盤となる。
今後の賃貸住宅に求められるのは、人とペットが共に安心して暮らせる新しいスタンダードの構築だ。その住環境を実現するためには、オーナーや管理会社をはじめとした不動産関係者一人一人の取り組みが、これまで以上に重要になってくるだろう。
(2026年2月9日12面に掲載)




