賃貸住宅のポータルサイト「CHINTAI(チンタイ)ネット」を運営するCHINTAI(東京都港区)は、まちづくりに本格的に参入した。部屋探しのサポートをするだけでなく、顧客が将来住む可能性のある地域を盛り上げていく。
行政と住民の架け橋目指す
道路補修や清掃 物件価値向上狙う
CHINTAIは奥田倫也社長の下、インフラや行政サービスの維持・強化に焦点を当てたまちづくりを進める。
奥田社長は「地域のインフラは老朽化してきている。CHINTAIとして地域の安全性を高め、より良い街にするためになにかできることはないかと考えた」と話す。
まちづくり活動「CHINTAI社会貢献プロジェクト」を2024年7月から本格始動。主な活動は大きく四つ(表参照)
一つ目は道路の不具合調査報告だ。12都道府県59自治体で実施。地域住民の協力の下、道路の陥没やひび割れなどを報告してもらい、10月31日時点で約4000件の報告が集まり、行政が修繕を進めているところだ。
二つ目はまちの清掃活動。27自治体で実施し、地域住民130人が参加した。
道路の補修と併せて、物件周辺が綺麗になることで、物件価値が上がるだけでなく、部屋探しを行う顧客が街に抱く印象もプラスに働くとみる。
イベントを企画 施設の活性化に
さらに、地域の施設に対する支援も行う。
同プロジェクトの三つ目は、図書館や児童館でのオリジナルイベントの開催だ。東京都内や神奈川県、広島県、福岡県の図書館や児童館でCHINTAIが企画したイベントを開催した。
図書館や児童館ではパフォーマーや声優による絵本の読み聞かせや、声優体験を行った。10月31日時点での開催数は10回ほどで、累計490人が参加。すべての回が満員となった。プロによる読み聞かせや職業体験の機会は稀少ということが結果へとつながったとみる。
図書館でのイベントの様子
四つ目は動物園・水族館へのサポートだ。こちらは現在進行形だが、特定の生き物への飼育サポートや、イベントの実施を計画している。打ち合わせ段階だが、計7施設での実施が確定。まずは兵庫県の神戸市立王子動物園で、同社のキャラクター「チンタイガー」のモデルにもなっているトラへサポートを行うことが決まっている。
図書館や児童館、動物園・水族館への取り組みは、部屋探しの顧客や実際に入居した顧客が「住みたい」「住み続けたい」と思えるようまちの魅力を上げるのが狙いだ。図書館や児童館は利用者の減少から閉館となり、動物園や水族館では飼育できる生き物が減り、入場者の減少に苦しめられている。CHINTAIが民間企業としてのノウハウを生かし、課題解決に向け動く。
動物園で掲げる看板
資金源は協賛金 申し出4000口超
同プロジェクトは地域の住民やオーナー、企業からの協賛金を基に実施。24年6月に募集を始め、4000件超が集まったという。
同社から資金を出したり、主導したりするのではなく、地域住民や自治体が主体となって地域の活性化に取り組むことを重要視している。同社と地域とのつながりが強化にされることにも期待する。
「人口減少もあり、駅周辺でしかインフラが維持できない、路線バスを廃止せざるを得ないといった自治体が増えている。今後、行政サービスを受けることができない人が増えるのではないかと危惧している」と奥田社長は語る。ポータルサイトの運営会社として、ただ部屋探しサービスを提供するだけでなく、行政と地域の人の架け橋となり、魅力あるまちづくりをしていきたいとする。
現時点ではCHINTAIの支社があるエリアを中心に実施しているが、25年10月期中には47都道府県にプロジェクトを広げていく予定だ。
CHINTAI
東京都港区
奥田倫也社長(35)
(野中)
(2024年12月16日20面に掲載)