地域が抱える課題の解決に意欲的に取り組む不動産会社に焦点を当てる。今回は、大阪市24区中、空き家率が最も高い西成区で、地域活性を仕掛ける港不動産(大阪市)の挑戦を追う。
従業員と住民の交流機会生む
西成区を中心に大阪市で約1000戸を管理する港不動産は、地元商店街を紹介する「ひとまちMAP(マップ)」を作成し、地域住民を巻き込んだまちづくりに取り組む。金森匡邦社長は「地域が持続的に活性化していくためには、地元住民の意識改革が必要」と話す。
MAPは、第1弾を2022年7月に完成させ、専用ウェブサイトや冊子として公開・配布している。同社が仲介した賃貸住宅の入居者への配布や、地域の夏祭りでの配布、地元商店街・金融機関に協力を仰ぎ、店頭に冊子を設置している。
ひとまちMAPは、西成区に住む人や店、企業、歴史を紹介するもの。第1弾では、同社が本社を置く南海電鉄南海本線岸里玉出駅周辺の商店街を中心に、街の散策コースなどを紹介した。同社の若手社員数人が店主にインタビューをして、各店舗の魅力をまとめている。
金森社長は「MAP作成の最大の目的は、従業員が地域の中に入り、地元住民との関係性を構築すること」と話す。
同社の商圏である西成区が抱える課題は、空き家の多さと高齢化だ。空き家率は大阪市24区で最も高い22.5%。加えて、65歳以上の高齢者割合も最多の38.7%だ。
一方で、大阪市の西側は工場地帯であることから、西成区には技能実習生などの外国人労働者や留学生も多く住む。
また、中心街へのアクセスが良く、交通利便性が高いことから、1人暮らしの若年層からの注目も集まりつつある。行政による再開発も進み、西成区が持つ治安の悪いイメージを知らない10〜20代が流入してきているという。
「高齢者、外国人、若年層と、複数の入居者属性が集まる場所だからこそ、共生共存ができるまちづくりが必要。住む人を呼び込まないと、空き家を再生しても空き家のままだ」と金森社長は語る。
同社は、西成区の空き家を仕入れ、外国人向けのシェアハウスに再生し、満室稼働させてきた。外国人の受け入れに関する成功事例をオーナーに見せ、空き家の利活用提案を進める。
金森社長は「空き家再生の活動を、当社が単独で引っ張っていくのは限界がある。地域住民に認知してもらうことで、エリア全体の再生やブランディングにつなげていきたい。『ひとまちMAP』は、その目的を達成する手段の一つ」とコメントした。
ひとまちMAPを見た同社の商圏内にある別の商店街から、PR活動の共催依頼が舞い込むなど、徐々に反響を呼んでいる。
港不動産
大阪市
金森匡邦社長(39)
(2023年10月23日4面に掲載)