電気、ガス、水道に続く第4の生活インフラとして、不可欠なインターネット。賃貸住宅において、入居者が無料で利用できる全戸一括型ネットサービスは、当たり前の設備になりつつある。各社はネットを活用した付帯サービスの強化に取り組む。
付帯サービスを強化
579万戸に導入 既築建物は鈍化
ICT(情報通信技術)市場の調査・コンサルティングを行うMM総研(東京都港区)は、7月に「全戸一括型マンションISPシェア調査」の結果を発表した。3月末時点で、全戸一括型マンションISP(インターネット接続事業者)が集合住宅にサービスを提供する戸数は579万戸だった。前年同月比で58万戸増え、11.1%の増加率だった。集計の対象は、全戸一括型のみで、各戸の住人が個別で契約する任意加入方式のネットサービスは含まない。
提供戸数は年々増えているが、増加率は微減傾向にある。MM総研の小野寺つぐみ研究主任は「新築の建物は2022年度と同等以上の棟数で竣工し、ネットの導入も進んだ。一方で、新型コロナウイルス禍によるネット需要が落ち着き、既存建物での導入ペースが鈍化したことが考えられる」と分析する。
事業者別のシェアでは、つなぐネットコミュニケーションズ(東京都千代田区)が18.4%で7年連続首位となった。新築の賃貸・分譲集合住宅を中心に提供戸数を伸ばした。2位は9.6%の東京電力グループのファミリーネット・ジャパン(東京都港区)。次いで、前回4位だったファイバーゲート(同)が3位にランクインした。
市場全体で提供戸数が増加する一方、ISPの乗り換えが見られるようになっている。各社はネットを活用した付帯サービスを強化する。入居者や管理会社にとって利便性が高いツールをセットで販売することで、付加価値向上を図る。
小野寺研究主任は「通信品質の向上もさることながら、周辺商材の取り扱いを増やし、競合他社と闘う動きが顕著だ。IPインターホンや、再生エネルギーの活用と電気使用量の可視化ができるサービスをセットにした商材などを扱うケースが目立つ」と話す。