構造物の耐震診断、補強工事に特化して事業を展開するキーマン(大阪府東大阪市)は、旧耐震物件専門の不動産情報サイト「1981+(プラス)」を運営。リノベーションも手がけながら築古不動産を刷新し、流通促進を図る。
専門サイトで流通促進
キーマンでは、東京支社で1981+を運営している。補強工事を加えることで長期使用が見込める旧耐震基準の物件情報を配信しながら、付加価値を高めるリノベ工事も提案。1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)を中心に、全国の物件を対象とする。
同サイトでは、オーナーや不動産会社から掲載物件を募集している。掲載プランは二つ。「プレミアムプラン」の会員は、物件情報に加え、建物の補強に必要な費用を算出するサービスと、物件周辺の環境調査サービスを利用することができる。同社が買い手に詳細な情報を届けつつ、物件の魅力を発信する記事の作成も行う。サービス利用料は55万円(税込み)から。
1981+のサイトトップ画面
「ライトプラン」は物件情報の掲載は無料。物件記事作成のオプションを選択した場合のみ料金が発生する。いずれのプランも物件掲載時の費用はかからず、成約した際にサービスの利用料や、買い手側から物件価格に応じた報酬を受け取る。掲載対象物件は木造以外の一棟ビルやマンションとする。
1981年5月以前に建築確認を受けた旧耐震基準の物件は、震度5程度の地震で倒壊しない建物として建築されたものだ。震度6強から7の地震で損傷しないことを目指した新耐震基準の建物と比較すると、耐震性能の面から価値が低く見積もられ、運用や流通に課題があった。
一方、古くからある物件は角地や交通アクセスの良い場所など、好立地に立っているケースも少なくない。建て替えの場合は現行法にのっとると建築面積が減ることもあるが、改修であればそのままの建物を生かすことが可能。建築費が高騰する中、建て替えよりも費用を抑えながら物件を取得し、刷新できることが大きなメリットになる。
同社は耐震診断から設計、施工までを一貫して手がけることで、工期の短縮やコスト抑制を実現しつつ、築古の物件を新耐震基準の物件と同じ土俵で競争できるようにする。片山寿夫社長は「古い建物ならではの特徴を生かしたリノベと組み合わせることで、新築にはない魅力を引き出すことができる」と話す。
1993年創業の同社は、橋梁(きょうりょう)やトンネルなどのインフラのほか、集合住宅、商業ビル、学校などの耐震補強や長寿命化工事を行ってきた。これらの実績を生かし、2021年より新規事業としてスタートしたのが「REDO(リド)」だ。
同事業は「旧耐震基準建築物の再生・運用」と「旧耐震基準の不動産の流通促進・活性化」の二軸で展開しており、後者にあたるのが1981+となる。一方、前者の事業では、旧耐震基準のビル、オフィス、古民家などの改修において、耐震診断から構造設計、デザイン提案および施工、施工後の運用までを包括的に手がけるプロジェクトチームを組成。各分野の専門家と協業し、歴史のある建物に付加価値を与えて再生している。
これまでの再生事例は3件ある。そのうちの1件が、都営地下鉄新宿線神保町駅から3分の場所に立つ「REDO神保町」だ。RC造5階建てのオフィスビルとして74年に竣工。1階が貸事務所、4~5階をオーナーが使用していたが、2~3階は空室だったことから収益性が低かった。
通りの角地に立つREDO神保町
同社はこの物件を2019年に取得し、耐震補強工事を実施した。屋上に設置されていた貯水槽とその土台を、給水方式を変更したうえで撤去し、建物自体の重さを減らして揺れを抑制。これにより、本来大規模な補修工事が必要となるところを、柱まわりの補強工事のみに抑えながら耐震性を向上させた。内装も一新し、1階を店舗、2階をコワーキングスペース、3階から5階を全9戸のシェアハウスとして貸し出すことで収益性を高めた。
コワーキングスペースに改装した2階フロア(REDO神保町)
総工費は1億円程度かかったが、改修後の賃料収入として年間1800万円、工費の回収期間は約5年を見込んでいる。
今後は再生事例を増やしながら、改修後に投資家らへ販売していく考えだ。
(2025年2月24日12面に掲載)




