デジタルツールの実態調査
ICT(情報通信技術)市場の調査・コンサルティングを行うMM総研(東京都港区)が実施した集合住宅の実態調査で、約4割のオーナーがデジタルツールを導入している結果となった。MM総研が定義するデジタルツールとは、オーナーが専有部や共有部に設置する情報通信機器やサービスを指す。具体的には、防犯カメラやスマートロック、スマートセンサー、全戸一括型インターネット、電気自動車(EV)充電器などだ。
回答したオーナーの39%が1棟でも何らかのデジタルツールを導入していることがわかった。導入状況を物件の築年数別に見ると、築年数が浅い物件ほど、導入率が高い傾向にある。築5年以内の物件では7割以上の導入率となっている。一方で、築20年以上の物件の場合、導入率は2割未満だった。
導入しているデジタルツールは、防犯カメラが17%と最も多かった。これに全戸一括型インターネット、宅配ボックス、エントランスのオートロック、太陽光発電システムが続いた。調査を担当したMM総研の小野寺つぐみ研究主任は「傾向として、セキュリティー対策や入居者の利便性を意識した設備の導入が先行している。デジタルツールの導入率と入居率向上の関係性を分析すると、上位四つについては『入居率が上がった』と回答した割合が多く、導入効果も高いといえる」と分析する。
所有物件に導入したいサービスに関する設問では、防災意識の高まりが垣間見えた。「防災・避難訓練の支援サービス」は、オーナーの年代や物件の築年数を問わず、いずれの層でも上位に上がってきた。また、何らかのデジタルツールを導入または検討しているオーナー750人のうち、6割が「防災意識は高い」と回答した。「防災意識の高いオーナーは、災害時の連絡手段や防災情報の提供において、デジタルツールの活用に積極的であるということも、今回の調査でわかった」(小野寺研究主任)
同調査の対象は賃貸アパート・マンションを一棟単位で所有する全国の18歳以上のオーナー。ウェブアンケートにより、2024年11月11〜14日の期間で2189人から回答を得た。
(2025年3月17日5面に掲載)