不動産業界のトレンドの中でも、賃貸仲介・管理会社の新たな商機となり得るのが、商業テナント仲介だ。賃貸住宅よりも案件数が少ないものの、大型案件では仲介手数料が1件1000万円に上るものもある。商業施設と賃貸住宅の複合物件を管理する会社では、テナント仲介提案が差別化につながる。
退店情報キャッチが成約の鍵
異業種からも参入 店舗・人員省力で
小売店や飲食店など商業テナントの仲介ビジネスに、新たに参入する企業が徐々に増えている。不動産分野のニッチな新規事業として注目されているもので、これまで住宅の賃貸仲介・管理に特化していた会社の参入もある。「テナントの窓口」のブランド名で、事業用物件仲介の全国フランチャイズチェーン(FC)を展開している店舗コマース(東京都千代田区)の沓掛一貴社長は次のように語る。
「当社がこのFCをスタートしてまだ2年ですが、これまでに28店が開業しました。賃貸住宅の管理会社の場合、例えば管理物件の2階以上はマンションだが1階はテナントで、その仲介に苦労している時など、当社のFCネットワークへの参加が役立ちます。また、基本的に店舗や人員をあまり必要としない事業なので、全くの異業種からの参加もあります。中には、これまでカフェを経営していた会社も加盟しています」
大手で8年勤務 24年からFC展開
事業用のテナント仲介は、住宅の賃貸仲介とは大きく市場性が異なる。まずは、マーケット自体が限定的なこともあり、物件情報が市場に出回りにくい。そのうえ、契約形態が複雑で専門知識や経験が求められる。さらに、物件探しから交渉までに長期間を要し、テナント出店企業との信頼関係構築も重要となる。このため、従来はともすると営業が属人化してしまい、ますます情報が出ずクローズな市場になっていた。
商業施設テナントでも大型物件の仲介では、物件建設においても高いシェアを持つ大和ハウスグループが市場をリードしている。一方、中小規模のテナントについては、地域ごと、物件ごとの取引がほとんどで、住宅の仲介のような多店舗展開している大手もない。沓掛社長は大和ハウスリアルティマネジメントに新卒で入社し、流通店舗部門で8年間にわたって経験を積んだ後、2023年に店舗コマースを設立。24年1月にFC展開をスタートした。
テナントの窓口の店舗
中小企業が加盟1000社超とパイプ
中小テナント仲介の市場では、エージェント型の仲介専業企業やポータルサイト運営会社、コンサルティング型企業なども存在するが、同社の場合は地域密着型の中小企業を加盟店とするFC展開が特徴。
沓掛社長が大和ハウスグループ時代に培った、全国チェーンの大手企業の店舗開発担当者との人脈をベースに、1000社以上の企業とのパイプを持つ。ここから上がって来る出店ニーズの情報と、地域の加盟店が開拓してきたオーナーの物件情報をマッチングさせる。
これまでの仲介実績では、「はま寿司」「焼肉きんぐ」「日高屋」「セブン-イレブン」「楽天モバイル」「エニタイムフィットネス」などの有名ブランドが並ぶ。
「情報は物件探しをしているチェーン側とオーナー側の両方から上がってきますが、成約が速いのはやはりオーナー側から情報が上がってきた時です。また、情報のうち現在すでにテナントが退店して空いている物件は7割、まだ営業中で退店予定の物件情報が3割です。これも圧倒的に、営業中の物件のほうが決まりやすいですね」
サイトでFCの加盟店や仲介実績を紹介
同社のこれまでの実績では50〜100坪程度のテナントビルの仲介が多いが、中には大型店舗の仲介もあるという。最近の実績では、大手倉庫会社が保有している大型商業施設内の店舗で、800坪の物件もあった。こうした物件は、既存テナントの退店情報をつかんでから、新テナント探しと交渉・調整で大体1年がかりだという。ちなみにこの案件では大手家電店が退去した後に、家具やファッションなどの大手3社が入居の名乗りを上げ、競争の末に1社が決定した。こうした大型物件では、貸し手・借り手からの仲介手数料で報酬は1000万円を超える。
「ここもそうでしたが、仲介実績の9割は居抜き物件です。それだけに、多くのチェーン企業とのパイプを持ち、いち早く退店情報をキャッチすることがポイントになります。一方で今後、全国の不動産会社との連携を一層進め、人口50万人に1店舗、全国200店舗の加盟を目指します」
事業用テナント仲介の市場規模は、正確なデータがないが、住宅仲介市場の10分の1ともいわれる。前述のように市場独特の難しさもあるが、成約単価は高く、市場参入事業者が少なく、地域のマーケットでポジションを築けば、強みを発揮できそうだ。
店舗コマース
沓掛一貴社長
(2026年3月16日9面に掲載)





