東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の1都3県を商圏に賃貸仲介を行う誠不動産(東京都渋谷区)は完全紹介制を取り、営業担当の鈴木誠社長1人で年間約240件を成約。平均で月に20件、300万円程度を売り上げている。リピーターと紹介客を増やすことで、安定した売り上げにつなげる。
6回仲介のリピーターも
従業員は2人。営業担当は鈴木誠社長のみで、あとの1人は内見手配や、部屋の採寸などの業務を行う。年間の売り上げは非開示だが、内訳は賃料1カ月分の仲介手数料がメイン。
同社の特徴は大きく二つ。一つは完全紹介制である点だ。既存顧客からの紹介にのみ対応する。紹介制を導入することで、トラブル防止や、費用削減の効果がある。
すでに部屋探しを行った顧客が同社の対応が良いと思って紹介することもあり、トラブルに発展する顧客が来にくいメリットもある。また、顧客は紹介元より薦められて来店しているため、初めての接客時からある程度信頼関係が築けている。その結果、希望の物件のヒアリングなどがしやすい効果もある。
一般的な賃貸仲介会社の集客手法と違い、ポータルサイトへの出稿は行わないため、出稿費用を削減できる利点もある。
二つ目はプロの目線から顧客の要望に合う物件を絞り込む点だ。紹介された顧客が来店した際、まず1時間かけてヒアリングを実施。希望する賃料や間取り、エリアといった一般的なものから、どんな生活を送りたいのか、人生をどう変えていきたいか、今の物件の何が不満かなどを詳しく聞き取る。「引っ越しは結婚や異動、転職など人生のターニングポイントで発生することが多い。物件への希望や、顧客の将来観をより深堀りすることにより、物件を探していて、この物件だったらこの顧客に合うというのがわかる」と鈴木社長は話す。
物件情報の収集は午前7時という、ほかの不動産会社が営業していない時間から行うことで、他社に先んじて優良物件の情報を得られるという。その情報を「LINE」もしくは「フェイスブックメッセンジャー」により顧客への連絡も7時から順次送付。遅くとも10時までには確認してもらうことで、良い物件を紹介しやすくしている。物件探しに費やす時間は1日あたり2時間〜2時間半程度。
提案する物件は顧客1組あたり約10件。その中から3、4件を内見。そこで成約することもあるが、成約しない場合はさらにヒアリングを重ねて、物件探しに生かす。以降は3、4 件を提案し、1、2件を内見することを繰り返し、希望する物件のイメージに修正を重ね、顧客の納得がいく物件が出たところで成約する。内見は平均で2〜4回行っている。
成約までにかかる期間はまちまちで、2日で終わることもあれば、最長で6年間対応している顧客もいるという。たとえ顧客が成約したいと思った物件であっても、鈴木社長が良い物件でないと判断したら契約しない。顧客が住んだ後の良いイメージが湧かない限り、その後の生活に責任が持てないからだ。
顧客と向き合う徹底した姿勢が評価され、リピーターを獲得。中にはすでに約6回、賃貸仲介を行った顧客もいるという。顧客からは「探してもらった部屋のおかげで、仕事やプライベートがいい方向に進んだ」という声が上がる。
今後は、賃貸仲介業界全体の地位向上を目指し、他社との情報交換や、営業マニュアルの製作などを業界全体に働きかけていく。
(2023年4月24日5面に掲載)