投資用マンションの開発・販売を軸に、グループで管理やリノベーションも行う不動産デベロッパーのNITOH(ニトウ:東京都渋谷区)。販売力を強みに、直近5年間で売り上げを14億円伸ばした。宮園泰人社長に急成長の理由を聞く。
設立18年目、販売力で成長
社員の6割が営業
NITOHは、東京都23区を中心に投資用マンションの開発や販売を行う。2023年9月期のグループ全体の売り上げは、93億円。19年の79億円から5年間で売り上げを14億円増加させ、急成長を続ける。このうち、22年から23年にかけては、投資用マンション販売戸数の増加により1年間で売り上げを12億円積み増した。
強みは、販売力だ。販売営業の担当には、従業員数の約6割を占める55人を配置する。宮園社長は「多種多様な営業手法を構築している。電話営業一辺倒ではなく、インターネットを活用した広告営業やウェブセミナーでの営業を実施。その中で士業の人から不動産知識をお知らせし、投資家に対して啓蒙(けいもう)活動を行う営業で、顧客の購買欲を向上させている」と話す。
06年にマンションの販売事業で創業した同社は、6月で設立18年を迎える。宮園社長は「自分たちで販売するものをつくる『地産地消』の領域へと成長を目指した」と語り、開発と販売、その後の商品管理まで事業を拡大してきた。
グループで展開する事業は、投資用マンションの開発・販売、リノベ、商業用ビルの買い取り再販、賃貸管理、建物管理、賃貸仲介、23年10月に新たに展開を開始したクラウドファンディング事業の、計七つ。
売り上げに対する事業構成比率は、開発と販売が45%を占める。次いでリノベが35%、残りの管理やその他事業が20%となる。全従業員は約90人。本社のほかに、賃貸仲介店舗を2拠点構える。
1800戸を管理
開発する商品は、1棟30〜80戸規模のワンルームマンション。これを年間平均200戸ペースで区分販売する。販売価格は2500万〜3000万円。表面利回りは4.2%程度だ。エリアは東京23区のほか、神奈川県の川崎市と横浜市をメインとする。販売対象は、サラリーマン系投資家。販売後に管理もセットで受託し、3月末時点で約1800戸を管理する。このほとんどがサブリースとなる。
事業部制を導入
同社の成長の理由の一つが、事業部制を敷く組織体制だ。「売り上げ拡大の背景には、事業部リーダーの活躍が大きい」と宮園社長は語る。
七つの事業にそれぞれ責任者として「リーダー」を配置し、社内ベンチャーのように一つの事業部ごとに経営の目線を持って主体的に動ける環境を整える。
「事業部のリーダーは、PL(損益計算書)が読める人材でなければならない」(宮園社長)という。KPI(重要業績評価指標)の設定から新たな業務の進め方、人材の補充といった判断を、現場の最高責任者として実行する。会社全体の売り上げを高める戦略や手法は、すべて現場から生まれているという。
各事業部へのリーダーの配置は、8年以降、事業の多角化を開始してから順次行ってきた。
宮園社長は「全社で定める経常利益率・額の目標に対し、それ以上を求めて結果にコミットすれば、自身に利益が還元される。そんな、社員の成果を正当に評価できる会社づくりを目指してきた」と語る。この思いを具現化したのが、事業部ごとに自走して利益向上に取り組める事業部制だった。
今後は人事考課の見直しを計画し、社員のやりがいを向上させる環境の整備に意欲を示す。
付加価値で差別化
住宅開発というものづくりに情熱を注ぐ宮園社長。「今後は、付加価値となる特徴を持たせた物件を供給していきたい」と話す。例えば、公園の少ないエリアで屋上ドッグラン付きのマンションを開発するなど、特徴を付けて差別化し、商品の認知度向上を図りたいとする。
中長期的な視点では、開発件数を増やし、スケールメリットを出すことで投資家への販売価格を下げ、競争力のさらなる向上を狙う。現在は年間200戸ペースの開発・販売を行うが、「少なくとも年間500戸ペースまで伸ばしたい」(宮園社長)
(齋藤)
(2024年5月6日20面に掲載)