レオパレス21(以下、レオパレス:東京都中野区)のオーナー合計100人が建物修繕の不履行を理由に契約無効とメンテナンス費の返還を求めた裁判で第一審の判決が下り、名古屋地裁、東京地裁ともに原告の主張を退けた。旧契約を新契約に移行する際、大幅に変更した積立金の扱いや、修繕目安表の認識の差から両者は溝を深めた。
「修繕目安表」に実施義務なし
今回判決が出たのは、2017年8月29日、同年9月20日に名古屋地裁、東京地裁にレオパレスのオーナーら計100人が訴訟を提起した裁判。建物修繕の不履行を原因にオーナーらはレオパレスに対し、「建物メンテナンス契約」(以下、「BM契約」)の無効と支払い済みメンテナンス費用の返却を求めた。裁判では、1月27日、同月30日に結審し原告は全面的に敗訴。レオパレス側の主張が認められた判決となった。
今回の裁判の争点は3点。「BM契約」の説明がオーナーに誤認を与え、契約実態と異なる内容であったか、二つめは「BM契約」はオーナーに著しく不利益を与える内容か、三つめは修繕実施の目安として配布された資料の時期通りに修繕を実施していないことは債務不履行にあたるかだ。
争点となっている「BM契約」とは、11年以前にレオパレスがオーナーと締結した「メンテナンス・リフォーム トータルサポートシステム利用契約」(以下、「旧TSS契約」)を切り替えたものだ。「旧TSS契約」では、契約締結時に長期修繕保証金を支払い、さらに月々の修繕積立金として積立口座に1戸あたり約2000円を積み立てていた。修繕が発生した場合は修繕実施の決定権をオーナーが持ち、積立金で修繕費用を賄う。サブリースの契約期間が終了した場合に修繕積立金の残金があった場合は家主に返還される契約内容だった。
ところが「BM契約」では、修繕の有無にかかわらず定額のメンテナンス費用を支払う方法に変更になった。修繕はレオパレス側の判断で実施でき、メンテナンスの実施状況は定期的に報告するというものだ。長期修繕保証金は月々のメンテナンス費に充当。預託済みの修繕積立金は一時返金となった後、サブリース契約の残存期間で残高を案分しメンテナンス費へ合算している。
月々のメンテナンス費の金額と計算式は「BM契約」への移行前にレオパレスからオーナーへ書面で通知されていた。