全400社が掲載された今回のランキングでは、前回未掲載の会社を除くと、仲介件数(2019年10月~20年9月)が増加した会社が153社、減少した会社が189社と、不調だった会社がやや多かった。不調の理由として、124社がコロナ禍などの外部環境を挙げている。感染拡大の本格化は1~3月の繁忙期から外れてはいたものの、多くの会社でマイナスの影響を及ぼしたようだ。編集部では、コロナ禍の中でも仲介実績を伸ばした7社を取材。それぞれの取り組みについて紹介する。
三光不動産、メールや物件登録の分業で来店者増加
三光不動産(北海道札幌市)は、前回から168件伸ばし、年間3552件の賃貸仲介を行った。好調の理由は、65%という来店成約率を保ちつつ、来店者数を対前年比で10%増やせたことだ。20%だった反響来店率は28%まで上昇した。
来店者数増加の背景には、分業化を進めてきた体制構築がある。特に、メール返信を担当するスタッフを配置したことが大きく寄与したという。専門特化させることで、営業担当者が兼務していた頃と比べて返信のスピードが早くなった。
加えて、数年前には、ポータルサイトへの物件情報の登録や物件写真の撮影を行う専任スタッフの配置をしている。これによって、出稿作業のスピードが上がり、物件情報の質も高まったことで、よりユーザーの目を引くようになった。現在は、1物件当たり40枚前後の写真に加え、1分ほどの長さの紹介動画やパノラマ画像を掲載している。
接客の質も上がった。ユーザーを来店させるまでにつぎ込んだ営業資源を無駄にしないために、営業担当者の研修にも力を入れている。一般的なマナー研修はもちろんのこと、さまざまな接客パターンに応じたトーク事例集を用意し、それらを使った接客のロールプレーイングを行っている。そのかいもあって、『アパマンショップネットワーク』の加盟店内で行われている顧客満足度調査では2019年、20年とトップを獲得している。
「仲介の実績は11月末時点では過去最高。今期は件数も売上高も前期比10%増以上が期待できそうだ」と菅原宣弘執行役員は話す。
オクゼン不動産、物件掲載数を絞り更新頻度増
年間賃貸仲介件数が1259件のオクゼン不動産(福岡県春日市)は、ポータルサイトに掲載する物件情報の更新頻度を上げつつ、反響への対応を早めた。来店率は以前の20%から30%まで高まり、仲介件数は前回から290件増加した。
以前は月に一度だった物件情報更新は、今では2週間おきに行っている。具体的にはオーナーに相談して緩和した入居条件を反映したり、新たに導入した設備がユーザー検索にヒットするようにチェック項目を更新したりしている。1件あたりの作業量は増えたが、掲載物件数を300件から200件に絞り込むなどして調整している。
森川誠二店長は、「情報の鮮度はユーザーの関心を引く決め手の一つになるので、更新日時は重要」と語る。
また、反響への対応が遅くならないように、各店舗の店長が営業スタッフに作業を割り振っている。担当者が接客中ですぐに返信できない場合は、事務担当が対応する。
「来店率の向上もあり、直近3カ月の賃貸仲介売り上げも昨対比130%と好調だ」(森川店長)
NextFutures、法人営業の強化が奏功
NextFutures(ネクストフューチャーズ:東京都中央区)は、法人営業の強化が功を奏した。個人は1割ほど減少したが、法人が大きく伸び、全体の仲介件数は前回から3割増の885件となった。
同社の法人営業におけるこだわりは、1社につき1人の担当者を付け、専任で対応すること。拠点は都内に三つあるだけだが、候補物件を見繕ったり、仲介業務を行ったりするだけでなく、内見の際にも全国どこでも同じ担当者が同行する。
「窓口が一つなので、互いにコミュニケーションを取りやすく、より顧客の希望に沿った提案が可能になる。単独では採算が取れない案件もあるが、全社の案件を受けられれば十分メリットがある」と橋口裕貴氏は話す。
現在、提携している法人は100社を超える。規模はさまざまで、年間の物件探し依頼が0件の会社もあれば、150件ほどの会社もある。法人案件が増えたため、2020年から専属スタッフ2人を配置した。
「賃貸仲介だけでなく、管理や売買も拡大し、収益の多角化を図っていきたい」と橋口氏は今後の展望について語った。
(1月4日2面、4面に掲載)
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