コロナ禍の賃貸市場への影響は?エリアルポ~島根編~

大丸不動産, 日建, 不動産システム, 朝日住宅

管理・仲介業|2021年07月15日

 全国で人口が2番目に少ない島根県だが、人口が減少する中でも世帯数は増加しており、賃貸住宅には根強い需要があるようだ。島根の賃貸市場の現状を、コロナ禍前との比較も含め、地場で管理、仲介を行う不動産事業者と地主系オーナーに話を聞いた。

世帯数増加で市場安定

 全国47都道府県のうち人口が2番目に少ない島根県だが、地場の不動産会社からは「賃貸市場は安定している」との声が上がる。

 島根県の人口は2019年1月の67万8664人から、21年1月には66万5702人と1万2962人減った。一方で世帯数は19年1月の29万244世帯から29万2134世帯と1890世帯増えた。

 新規供給のペースはにぶい。国土交通省によると島根県の貸家の着工数は1293件程度と全世帯数の約0.4%にとどまる。全体的には動きの少ない落ち着いたマーケットだ。だが、コロナ禍においては、法人の動きに変化があった。

大丸不動産、家族帯同の転勤減り単身世帯が増加

 出雲エリアを中心に3200戸を管理する大丸不動産(島根県出雲市)ではコロナ下においては多少成約の減少があった。現在入居率は約90~91%だが、コロナ禍前の約93%に比べ微減だ。

 勝部達夫社長は「大手企業の異動控えにより県外からの入居者が減った。20年には転勤での家族帯同がほとんどなくなり、代わりに単身赴任が約2割増加したが、これはコロナ禍の影響だと考えている。また、結婚延期などによる二人向けの物件への引っ越しが減少した」と語る。

 出雲市は出雲村田製作所(同)をはじめとして島根富士通(同)、島根島津(同)など大小あわせて20~30程度の大規模工場があり、そこに勤める従業員の需要が大きい。そのため、賃貸市況も工場の業績に左右される。従業員も正社員から派遣社員までおり、その中には外国人労働者もいて県内外・国内外問わず人の出入りがある。

 これらの工場の規模拡大と共に雇用も増加しているため、県内でも出雲市は唯一人口が微増するエリアだ。「近年は、大型スーパーや家電量販店が進出している。地元の店舗はこれらの大型資本のあおりを受け撤退しているので、テナントに関しては年々厳しくなっている。さらにコロナ禍で地元の飲食業と観光関連の店舗は相当な打撃を受けている」と勝部社長は話す。

 収益不動産については毎月2、3件は問い合わせがあるので需要はあると考えているが、手放す人が少なく、ハウスメーカーによる土地活用の新築が中心なので流通に乗ることはまれだという。同社は約500人のオーナーから管理を受託するが投資家系は1割弱で9割以上が地主系オーナーだ。

 「今後はコロナの影響がなくなれば一定の活気は戻ってくると予想している」(勝部社長)

日建、学生の需要が半分 発電所建設特需が続く

 浜田エリアを商圏とする管理戸数約600戸の日建(島根県浜田市)ではコロナ禍の影響はほぼなかった。

 寺井智美氏は「大学生の入居は今春も例年通り。コロナ禍で懸念される外国人労働者の帰国による空室も聞かない。浜田市では水産関係の工場で働く中国人労働者がいるが、会社所有の寮に入っているので特に影響はなかったのでは」と話す。

 同社が賃貸管理を行う浜田市は島根県立大学のキャンパスがあるために、同社の管理物件のうち学生向け賃貸の需要が約半数を占める。また、山陰本線「浜田」駅前に独立行政法人国立病院機構浜田医療センター(同)があり、医療関係者が1割、残り4割を一般と法人契約が占める。

 学生が多いこともあり、管理物件の6割がワンルームだ。島根県立大学は学生寮もあるが、入寮期間が1年間限定のため、毎年10月ごろから2年生になる学生から問い合わせがあるのも特徴で、春と秋の年に2回繁忙期があるという。

 2年前より浜田市で火力発電所の大規模な工事が行われており、工事関係者の入居も1割程度あり、社宅として利用されている。今後3年は継続して工事による需要は続くという。ただ、同社では古い物件のリフォーム提案などで空室対策をしているため、入居率は工事開始前から変化なく、98%を保っている。同社に管理委託するオーナーも9割が地主系だ。

 「下半期についても、特に変わりはなく、例年通りの動きになるとは思う。しかし、リモートワークが増えているので企業の異動がどう変化していくかが少し不安」と寺井氏はコメントした。

不動産システム、入居率98%キープ家賃の変動もなし

 2348戸を管理する不動産システム(島根県松江市)は東は松江市から西は益田市まで手広く賃貸管理を行う。

 松江市は県庁所在地ということもあり、企業の支店などが多く、法人契約のニーズが高い。

 20年の繁忙期は緊急事態宣言前の3月に終わっていたためコロナ禍の影響は特になかった。21年の繁忙期では企業の異動の動きがなかったが、3月に大阪の緊急事態宣言が解除された途端、動き始めた。しかし、退去からの原状回復工事が間に合わず断ることも多かったという。

 片寄英治社長によると、島根県はバブル崩壊以降、今のコロナ禍でも家賃変動があまりないという。一方でバブル崩壊以降、銀行からの融資基準が厳しい状態が続いており地元工務店での建築のハードルが高く、新築の管理受託戸数は減少した。新築はハウスメーカーにより建てられたサブリース物件がほとんどだ。同社の管理オーナーは200人弱いるが約8割が地主系オーナーだ。

 松江市全体の入居率は84%程度、同社のみでは98%程度をキープできており、変動はそうない。

 「今後も人口は減少していくので少しずつ状況は悪くなるかもしれないが、特別変化はないと思う」(片寄社長)

不動産システム 片寄英治社長の写真

不動産システム
島根県松江市
片寄英治社長(56)

 

 

朝日住宅、県外からの流入増え21年は法人仲介好調

 松江エリアを中心に3200戸を管理する朝日住宅(島根県松江市)の管理物件の入居率は、コロナ禍以前よりも高まっている。コロナ禍前で94%程度だったのが20年には95%、21年は96%台にまで上昇してきた。コロナ下の松江市全体の平均入居率も90%程度で保たれていたという。

 21年は、繁忙期の退去が例年と比べ少なかった中、法人や一般共に県外から転入し、賃貸住宅に入居する件数が増えたのが入居率上昇の要因だと同社はみる。

 売買事業部の花咲諒課長代理は「前繁忙期では法人は少なかった。今繁忙期では、例年を超える異動に伴う社宅の借り上げ需要があり、入居率がよくなった。コロナ下で、企業は都心部への移動を少なくし、地方に従業員を分散させたのでは。また、従来よりも遅い時期の5、6月にも法人は異動があった」と話す。

 一般顧客についても在宅ワークをきっかけに賃貸・売買共に東京や大阪などの都市部から移住する動きがあり、入居率好調の一因となっている。「松江市の人口減少は否めないが、全体の契約件数が減っている印象はない。核家族化や一人暮らしによる世帯分離が増えているのが要因。また、松江市は大学、工場もあり、その他にも行政と手を組み、生活弱者に対して入居を強化しているため、需要がなくなることは考えにくい」と花咲諒課長代理は話す。

 同社の管理物件のオーナーは、地主系が7~8割を占める。収益不動産を取得したいという30~40代の投資家もいるが、そもそも収益不動産の流通自体の数が少ない。そのため、土地から購入し、新築する投資家も一部いて4~5年前から徐々に賃貸住宅の供給数の増加傾向がみられる。

 「下半期は上半期同様、入居率は高く推移すると予想している。高齢化も進んでいるが、都心部からのIターン、Uターンも増えている。大規模な分譲宅地を地元工務店が行っており、持ち家が増えると賃貸への入居率が下がる可能性はある。しかし、新築もウッドショックで価格が高騰し、工期も伸びるので無理して買わず、中古物件の流通を買う人が増えるか、もしくは、無理して購入せずに賃貸から出ないのでは」(花咲課長)

40㎡以上の物件にニーズ

 杉原和幸オーナーは地元島根県雲南市と松江市、鳥取県米子市で21棟141戸を所有する地主系のオーナーだ。「島根県では、結婚を機に独立して賃貸に入居する場合が多いので、40㎡以上ある広い物件が好まれる。入居者は30代の夫婦が多く、子どもができると家を建てて退去することが多い」と杉原オーナーは話す。

 エリア別に特徴を見ていくと、松江市は広島、岡山並みに家賃が高く、島根県内の他の地域と比べ、1万~1万5000円程度家賃が高い傾向がある。

 松江市は川があるために、地盤工事が必要になるので建築費が高く、家賃も高くなる。都市計画が綿密なので物件が乱立することもなく、供給が少ないため家賃が高くなる傾向にある。また、支店経済ということもあり、支店に外部から異動してくる人々が多い。

 一方、松江市と同規模の出雲市では元は水田であった土地をアパートにするので供給に困らない。出雲村田製作所をはじめとした工場が多くあり、出雲村田製作所だけで5000人程度の従業員がいる。コロナ禍前はブラジル人従業員が多く賃貸住宅に入居していた。コロナ下で移動・入国ができず20年6月あたりは空室が多かったが、今は落ち着いている。工場の町のため、工場の景気が賃貸市況に影響する。

 雲南市はホシザキ電機(愛知県豊明市)の主力工場があり、工場勤務者の需要がある。

 浜田市、益田市は過疎化が進むが、浜田市で火力発電所が建設中で、賃貸市場は特需状態。建築が終わった後も「法定点検の度に賃貸やホテルは埋まるのでは」と杉原オーナーは推測する。

 大田市は新市長の手腕によりIT企業5社の誘致に成功するとともに、義肢メーカーの中村ブレイス(島根県太田市)があり、それらの従業員による法人の需要が特徴的だ。

 「島根県ではコロナ禍の影響は少なかったと思う。法人関係の出入りが止まったので入退去がなかったのが特徴的だった。ただし、飲食関係の入居者は家賃が払えず安いところに引っ越す場合があった」と杉原オーナーは語る。

杉原和幸オーナーの写真

杉原和幸オーナー(59)
島根県雲南市

 

(7月12日11面に掲載)

おすすめ記事▶『コロナ禍の賃貸市場への影響は?エリアルポ~大阪編・後編~』

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