地上4階建ての『QUAD(クワッド)』は、オーナー住戸を含む全10戸のマンションだ。2、3階のバルコニーには、光を取り入れつつ視線を遮る工夫を施した。デザイン性の高さから、竣工後から満室が続き、退去者が出てもすぐに次の入居者が決まるという。
仕事場利用も想定し生活感排除した1R、家具配置する壁側の床は磁器質タイル
『QUAD(クワッド)』の設計を手掛けたカスヤアーキテクツオフィス(KAO:東京都目黒区)の粕谷淳司代表は、「起業をする人は最初から事務所用物件を借りるのではなく、まずはマンションの一室で始め、ステップアップしていくことが多い」と語る。そのため同建物は、仕事場としても使いやすく、住居としても心地よい空間を目指した。1階はオーナー住戸、2〜4階が賃貸住戸となっている。オーナーは古くからこの場所に住んでおり、地域住民と交流があった。そこでオーナー住戸を1階とし、あいさつなどを通して近隣住民との交流を保ちやすい環境とした。
オフィスとしての使いやすさにも考慮し、賃貸住戸は全戸ワンルームとした。システムキッチンの収納は事務所として使う場合は持て余しがちなため、下部収納のないステンレスキッチンを採用。代わりにキッチンの壁にタオルをかけたり洗剤が置けるようポールや棚を設けた。入居者には好評で、退去する際は「同じようなキッチンを自分の家に造りたい」との声もあったという。
住居利用ならば冷蔵庫置き場となるキッチン横の空間には、小型の複合型コピー機が置ける程度の広さ(幅約720㎜、奥行き約650㎜)を確保した。同機器で使用することを想定して、キッチン奥にはマルチメディアコンセントを設けている。
床は無垢材のフローリングを採用。本棚などを置くと想定される壁側の床面には、床が傷みにくいように磁器質タイルを使用した。天井には長さ約1250㎜のLEDライトを3本配置することで、部屋全体が明るく見えるように工夫。最上階には入居者が利用できる芝生のある屋上を設けた。