築41年の古さ生かし街のランドマークに
2016年02月26日 | リノベーション
築41年のマンション「砧くらすたーふらっと」を、ビンテージマンションとして相場よりも2、3万円も高い家賃で入居が決まる、町のランドマーク的な存在に変えたのは、不動産管理会社の市萬(東京都世田谷区)だ。
入居ターゲットを、クリエイティブな職種に絞り、外観と室内をリノベーション。
古さの中にも洗練されたオリジナリティを感じさせる住空間を追及したことで、賃料アップをしても完成前に入居が決まるようになった。
同物件の管理を引き受けたのは3年前で、全18戸中4戸が3年以上空室だった。
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「築古でいつまで保つか分からないため、修繕費用をかけたくない」というオーナーの要望で、14万円だった家賃を12万円まで下げ満室にすることで、いったん収入を確保。
そのうえで、今後の退去防止やリーシング対策を提案した。
まず、現入居者の属性や、仲介店舗の反響をヒアリングし、今後の運用戦略を組み立てたという。
「建物や設備は古いが、エントランスなどの共有部が広く、ひさしや窓が大きい雁行型の構造で、デザインを気に入り長期入居する人が多かった。また建物の調査をすると旧耐震だが、躯体がしっかりしているため、すぐに建て替える必要はないことが分かった」と賃貸事業部の久保明大課長は現状を把握。
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古さに味を加えて、物件の付加価値を高め、最終的に家賃を17~18万円まで上げる目標を定めた。
まずはすべての入居者が使用する共用部分で、費用負担の少ない項目を優先。
古い集合ポストを修理し、ダイヤルロックを取り付け、見た目と利便性を改善した。
エントランスに続く長いアプローチにはフラワーポットを設置して彩りを添え、木の板だった掲示板もマグネット式に取り換えた。
3カ月後の第2期の工事では、外壁をすべて塗り替え、清潔感のある真っ白な外観に一新。
木材と金属製のテラスの柵は朽ちかけていたため、木を模した色のステンレスに取り換えた。
物件の顔となるアプローチも地面をコンクリートで整備し、夜はムーディーな印象になるようにダウンライトを設置した。
外観デザインの監修はARIWRKS(アリワークス・東京都豊島区)が務めた。
一方、室内のリノベーションは配管やガス管の劣化が激しく、原状回復に多額の費用が掛かる部屋から着手。
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間取りは3LDKから、20帖以上の広いリビングが使いやすい2LDKに変更した。
畳だった個室を含め床はすべて無垢フローリングに張り替え、外観と同じように経年によって味が出るようにイメージを統一。
華美になり過ぎないようにステンレス製のシンプルなシステムキッチンを設置した。
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これまでに施工したのは7室で、1部屋あたりの費用は400~500万円。
共有部の大規模改修の進捗も加味し、徐々に家賃を上げていった。
昨年夏頃に施工した部屋は、13万円から15万円、16万5000円にそれぞれ値上げをして完成前に入居が決まった。
2月24日に完成する部屋は18万円と、新築時に近い賃料になった。
リノベーション後に入居したのは、映像制作会社を経営する30代前半の新婚カップルをはじめ、クリエイティブな職に就く、DINKS世帯が多いという。