投資家から資金を集め、不動産を担保として事業者に貸し出すクラウドファンディングで業界最大手であるmaneoマーケット(マネオ:東京都千代田区)の瀧本憲治社長が登場。同社のクラウドファンディングサイト『maneo』の貸付総額は2017年12月に1000億円を超えた。投資家会員は1万3000人にまで増え、対象になる不動産は、マンションから老人ホーム、パチンコホールまでと多彩だ。瀧本社長は「投資家の選択肢を広げていく」と思いを語った。
20億円の案件にも融資 分配利回りは5~8%
亀岡 会社名はmaneoマーケットというのですね。貸金業と聞きましたが。
瀧本 当社は不動産を担保にして事業者に貸し付けを行っています。仕組みとしては『maneo』というクラウドファンディングサイト上で投資案件の募集を行い、投資家から資金を集めます。投資家と匿名組合契約を結び、集めた資金を不動産を担保として事業者に貸し付けます。事業者への金利は15%で、利益を投資家に分配します。投資期間は10カ月間ほどで投資家への分配利回りは5~8%がメーンですね。2017年のファンド組成数は4038件で貸付残高が300億円ほどになりました。事業開始当時1000万~2000万円だった案件は、大型で20億円と額が大きくなり事業効率もよくなっています。
亀岡 どのような事業者が借りるのですか。
瀧本 さまざまですし、幅が広がっています。老人ホームの開発に資金を募ったり、M&Aの資金がすぐに欲しいということで、パチンコ運営会社がパチンコホールを担保に借りていったり。現在進行中のプロジェクトは、廃業した病院の再生です。そもそも、通常の金融機関はストライクゾーンが狭い。不動産事業についても借り入れのために事業のストーリーが必要になってきます。土地を購入して、戸建てを分譲してエンドユーザーに販売するというシナリオがあればオーケーですが、転売目的の売買のための資金提供は認めません。ただ、不動産会社の中には、割安な案件がすぐにほしいが融資がつかず手をこまねいているケースも多々あります。当社から取得資金を借り、物件を取得してから担保にして銀行から融資を受けています。明日にでも必要な資金を20億円すぐに出せる金融機関はないでしょう。そういう意味で、当社は規模の拡大とともに、独自の立ち位置を持てるようになってきた実感はあります。
亀岡 貸金業は奥が深い。出資法の関係などがあり、理屈一つで合法か非合法かに分かれることもあります。私は記者時代にサラ金大手の創業期から銀行への合併までを見てきました。武富士の武井保雄氏には事業資金を貸したこともあります。
瀧本 貸金の大元ですね(笑)。
亀岡 それぞれの経営者の軌跡を見ていくと興味深い。プロミスの神内良一氏とは、神内氏がバイクでお金を配っていた時代からの知り合いでした。銀行に事業を売却した後、北海道に土地を買い、牧場を始めて神内牛ブランドで有名になりましたね。
瀧本 サラ金の大御所にはまだまだかないませんが、当社の売り上げは、前期の21億円から、今期は27億円ほどを見込んでいます。投資家会員は1年で倍の1万3000人になり、不動産クラウドファンディングでは業界でも最大手だと自負しています。資金の調達力が付いたことで、上場企業からの借り入れ依頼も増えています。
中小企業コンサル会社で独立 事業再生から貸金需要を発掘
亀岡 御社は瀧本社長の創業ですか。
瀧本 7年前に創業者から事業譲渡を受けました。私自身もまさか金貸しになるとは思っていませんでした。フランチャイズビジネスに興味があったので、大学を卒業してからセブン-イレブン・ジャパンに入社しました。ですが、5カ月間で仕組みを学び、もういいかなと思っていたところ、旅行会社を経営していた父から誘われ、父の会社に入社しました。そこで会社を継ぐことになるだろうと思っていたのですが、会社の経営方針で父と意見が合わず大ゲンカばかりしていて、結局退社しました。その後、中小企業診断士とアメリカの公認会計士の資格を取得し、30歳の時に、中小企業向けの経営コンサルティング会社を始めました。
亀岡 そこから一度独立したのですね。
瀧本 その時考えていたのは、ビジネスのヒエラルキーがあるとしたら、そのピラミッドの頂点は金融で、これは自分で作った言葉ですが、「ファイナンス村」の住人になりたいと考えていました。そのために、まず不動産業界を経験してみようと考え、資産運用会社UBIの木村勝男会長に、一緒に登山した折に入社を頼み込みました。現在の事業のきっかけになったのは、大阪市のビジネスプランコンテストで企業再生のアイデアで優勝したことでした。再生支援先の顧客から事業資金を貸してくれないかという申し出があり、資金を提供していたら、きちんと返してくれる。しかも15%の金利が利益になる。これはビジネスになるのではと思いました。08年に、ちょうど母から「こんな会社があるらしい」と新聞記事を見せられたのが、maneoのサービスでした。当時は、個人投資家から資金を集めて個人事業主に貸し出す事業が中心で、面白い会社だなと思っていました。11年に、UBIが主宰する早朝勉強会の講師としてmaneoマーケット創業者の妹尾賢俊氏に来ていただきました。同じ年に、maneoマーケットを買わないかとの打診があり資本参加。13年9月には社長に就任しました。
存在意義は顧客の金もうけ 親に勧めたい商品作り目指す
亀岡 気になっていた会社が、まさにやってきたわけですね。
瀧本 当時は3人から始め、土地を担保に1000万円を貸すような事業でしたが、実績が増えるにつれ、会員の数も増えてきました。今年に入ってからも1月だけで1300人の登録があり、10%増えています。社員はグループで40人の所帯になりました。
亀岡会社を大きくするのは、組織強化が一番重要です。そのためにやるべきは人事の活性化ですね。よく、大手企業は子会社をたくさんつくりますが、それは事業の収益のためというより、ポストをつくるためです。キャリアを積んだがこれ以上本社で上に行けなくなった社員を子会社の社長に据える。そうすることで、次の若手が活躍する場ができ、会社に革新性が生まれるのです。
瀧本 なるほど。私自身は、会社にとって誰が大事かを考えながら評価するようにしています。会社が伸びるためには、仕事をつくることが重要です。バックオフィス業務も大切ですが、ヘッドハンティングで人材を集めることは可能です。当社では、プロジェクトを発掘してくる営業社員の報酬を高く設定しています。ハングリー精神を持って、案件をとってくる人材がいるからこそ、次の事業を生み出せるのです。
亀岡 これからどのような会社にしていくのですか。
瀧本 貸出残高が1000億円の会社を目指しています。そうすれば、他の金融機関でできない100億円クラスの案件に貸し付けができ、さらに収益を高めていけます。リートへの売却を前提にした不動産の取得を行うプレリートファンドという新しいサービスも始めました。インカムとキャピタルで合わせて13%の分配金利回りを投資家に提供できます。私が大切にしていることは、「自分の親にも勧められる投資商品を作ること」です。以前知り合いの経営者に言われた「あなたの仕事は投資家をもうけさせることでしょう」という言葉がずっと残っています。顧客に胸を張れる商品を提供し、融資をした事業者にも喜ばれること。それが当社の存在する意義だと考えています。
亀岡 気合は十分ですね。オフィスが近いのですから、また遊びに来てください。
瀧本 ありがとうございました。
maneoマーケット
瀧本 憲治 社長
1972年1月3日、東京都立川市生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後にセブン-イレブン・ジャパンに入社するも5カ月で退社。父親の経営する旅行会社に入り、大ゲンカし飛び出す。その後、アセットマネジメント会社のUBIに入社。2011年に個人投資家から集めた資金を個人事業主に貸す事業を行っていたmaneoマーケットに資本参加。13年9月、代表取締役就任。
- maneoマーケット
- 本社所在地 : 東京都千代田区内幸町1ー1ー7 NBF日比谷ビル24階
- 設立 : 2007年8月 社員数 : 40人(グループ連結)人 資本金 : 3億800万円円
- 事業内容 : 『maneo』をはじめとしたソーシャルレンディングサービスサイトの運営、募集取り扱い、投資家の管理
経済評論家 亀岡 大郎 氏
大正15年京城生まれ。新大阪新聞経済部長を経て、経済評論家となる。文藝春秋、サンデー毎日など一流紙で、経済・財界問題を中心に、精力的な活動を続ける一方で「自動車戦争」「ゲリラ商法」「IBMの人事管理」などベストセラー多数。