京町家の再生に強みを持つ八清(京都市)は、個人住宅や貸家、宿泊施設などへの改修を行う。物件の仕入れ・企画・建築・販売を一気通貫で担当する体制で、年間62件を再販。ウェブサイトを充実させ、購入者をインターネットで集客してきた。不動産再生を通じ、暮らしと資産運用の提案を行う会社を目指している。
売上高は31億円 多様な不動産再生
ー京都市に本社を構え、京町家の再生を主力事業としています。
当社は京町家の再生を軸に、まちづくりも行う不動産会社として事業を広げています。京町家をリノベーションし、住宅だけでなく、宿泊施設、シェアハウス、別荘などへ転用し、多様な不動産再生を手がけてきました。2025年6月期の決算で、売上高は約31億6900万円でした。事業構成比は、買い取り再販事業が約83.6%、売買仲介事業が5.4%。次いで、マスターリースを含めた家賃収入が7.6%、管理収入が0.9%です。ほかに賃貸仲介事業などもあります。
ー年間の取扱件数は。
買い取り再販が62件、売買仲介が78件でした。所有物件は、マンションやビル、京町家など25棟あります。25年6月期は過去最高益でした。今後は利益を物件の購入費用に充て自社で保有し、ストックとしての賃料収入を手厚くしたいと考えています。売上や利益の拡大ばかりを追い求めるのではなく、事業や会社の持続性を優先するためです。社員が仕事に追われることなく、自己研さんの時間を確保し、ゆとりを持って仕事に臨めるような環境を重視したいと思っています。
ー交流型の賃貸住宅を供給しています。
床面積が100㎡を超える大型京町家の再生手法としてシェアハウスへの転用を行ったり、新築でコレクティブハウスを展開してきました。コレクティブハウスは自社所有物件の付加価値を高めるために取り組みを開始。その後、相続対策用に販売するため、メゾネット型のコレクティブハウスを新築しました。京町家の再生を手がける中で、災害時や防犯、子育てにおいて、コミュニティーが重要であることを実感しています。
祖業は新築分譲 9割がネット集客
ー祖業は新築の住宅分譲と聞いています。
当社は1956年の設立で、当時の主力事業は新築分譲事業でした。創業者は私の祖父です。私の父が社長を務めていた2000年ごろ、中古住宅のリフォーム・再販事業へ舵を切りました。中古住宅を取り扱い始めた頃は、亀岡市や宇治市など京都府やその近郊を商圏としていましたが、収益性にばらつきがありました。偶然仕入れた京町家を販売したところ、大学教授といった普段と異なる属性の顧客が完成見学会に来たそうです。それを機に京町家に着目。無垢材を使用し、左官工事や塗装などで京町家が持つ風合いを生かしたリノベを施工すると想定以上の金額やスピードで売れていき、徐々に案件を増やしていきました。それから07年ごろに、京町家の再生・販売・利活用に特化し始めるようになりました。
ーウェブ集客が強みと聞いています。
京町家に特化し始めた時期に、これからはウェブで集客する時代だと考え、完成物件の見学会や施工事例の情報をインターネットで発信していきました。単なる宣伝ではなく、読み物として楽しめるコンテンツを作り、結果的には「京町家」「町家リノベーション」といったキーワード検索でサイト閲覧数が増加しました。ウェブサイトの制作や運用は自社で行っています。東京都や海外からの顧客も増え、各部署に英語対応できるスタッフを配置するなど、グローバル対応も進めてきました。物件の購入に至る顧客のうち、95%はウェブからの集客です。24年の実績ですが、ウェブの年間問い合わせ件数は2272件でした。
ウェブサイトでリノベーションした物件を多く紹介している
ーほかに強みはありますか。
1人の担当者が、物件の仕入れから、企画、施工、販売までを一気通貫で担当する「プロデューサー制度」による企画力です。京町家をメインに扱うようになり、建築と販売営業の垣根をなくしたのです。それまでは工務部と営業部が2人1組で一つの物件を担当していました。十人十色で社員がつくりたいものをプロデュースしてほしいという思いから体制を変更。不動産と建築の両方の知識が必要なため非常に難しいことですが、その分、社員の企画力や提案力が向上します。最近では狭小ビルや一棟ビルなども扱うようになりました。単なるリノベではなく、違反建築の適法化や金融機関評価を意識した改修提案まで含めて、資産形成の視点で価値を高めることを意識しています。
ー従業員は何人ですか。
38人です。ウェブサイトの制作やSEO(検索エンジン最適化)対策を行うメディアデザイン部の社員が8人で、不動産会社としては珍しいと思います。女性社員も多く、半数以上を占めています。グローバルマーケティングチームを設け、外国籍の顧客に対するセールスマーケティングを実施。アメリカやオーストラリアなどの英語圏の国に加え、ヨーロッパやアジアもターゲットにしています。
2拠点居住を推進 空き家解消に期待
ー今、力を入れているのが2拠点居住の推進だそうですね。
「SymTurns(シムターンズ)」という2拠点居住のプラットフォームを展開しています。同事業は、子会社のSuiTTe(スイット:同)で手がけるインターネットサービスです。住宅を所有するオーナーと、固定家賃を支払う入居者3〜5人で住居をシェアする仕組みです。オーナーと入居者が交わすのは定期借家契約と類似している「共同入居契約」で、オーナーがほかの入居者と同様に予約に基づいて建物を使うことができる内容になります。特徴は多拠点ではなく二拠点に絞っていることと、宿泊でなく入居者として住宅を利用する点です。SymTurnsはマッチングに加え、オーナーと入居者だけで住居を運営できるように清掃管理やチャットの機能などを整えています。
ー空き家問題が深刻化する中で、社会的な意義も大きそうですね。
同事業は、空き家問題を解決する一つの対策になると思っています。単純に1人が2軒の住宅を使うようになれば空き家は減っていきます。以前より、再生した京町家を別荘として購入する需要がありますが、資金的な面でハードルはとても高い。2拠点目の住居を所有するのではなく、シェアする仕組みがあれば金銭的な負担を軽減することができます。
シェアハウスの「京だんらん西陣」の外観
ー10物件が掲載されていますが、どうやって増やしていくのですか。
リブランディングをすることで自社施工以外に、全国を対象に掲載物件を増やしていきたいのです。そのためにまずは空き家の所有者に向けて、新しい貸し方としてPRします。SymTurnsで運用すると、通常の賃貸住宅として貸すより1.5倍の家賃収入を得ている物件もあります。しかし、もうかることをアピールするのではなく、〝セカンドハウス活用〞の需要を掘り起こしていきたいと考えています。所有者が利用しながら複数人でシェアすることができるため、宿泊業とは異なるマーケットで、非常にユニークだと考えてます。
SymTurnsで運用中の物件「洛縁六条表」の居間。同社でリノベーションをした
ー八清の展望を教えてください。
「暮らしの提案」と「資産形成の提案」を両立できる会社でありたいと考えています。今、資産形成のために、木造の古い住宅を購入するニーズも増えてきています。暮らしの提案では、JR京都駅の東側でアートマンションの新築に取り組んでいます。ワクワクする暮らし方を実現できる物件を提供しながら、結果として街全体の活性化を目指しています。当社が企画、施工などで関わった物件を点ではなく、エリアとして面で楽しんでもらえる〝ハチセワールド〞をつくっていきたいと思っています。
会社概要
社名:八清
住所:京都府京都市下京区東洞院通高辻上る高橋町619番地
設立:1956年7月
資本金:3000万円
従業員数:38人
事業内容:京町家・中古住宅の再生販売や仲介など
社長プロフィール
京都市出身の1979年2月生まれ。京都工芸繊維大学院卒業後、精密機器メーカーのSE職を経て、2005年に八清に入社。企画営業、建築設計、総務、専務取締役を経験後、19年にタイムシェア施設の運営を行うSuiTTeを設立し、社長就任。21年に八清の社長就任。趣味は旅行と食事。
(2026年1月19日11面に掲載)





