顧客からの信頼を獲得することでリピーターを増やしている誠不動産(東京都渋谷区)の鈴木誠社長。最終回では申し込み後の対応とリピーター獲得の秘訣(ひけつ)を聞く。
信用が生む自然な紹介
内見後の関係構築
内見後の追客は行わず、その場で申し込みか、別の物件を再度提案するかを明確にしている。一般的に多用されがちな「考えます」という顧客の言葉について鈴木社長は「実質的には断りであり、待っても良い返事は返ってこない」という。そのため、現地で申し込みに至らなければすぐに別の物件提案へ切り替える。この判断が顧客にとって「気持ちを理解してくれている」という安心感を与え、信頼関係を深めるという。その際には「どこがクリアされれば申し込みになるのか」を顧客と具体的に共有し、条件を明確化。その基準に合う物件を再提案することで、前向きな部屋探しを継続できるようにしている。
入居前支援を徹底
申し込み後は、家賃債務保証会社やオーナー審査の進捗(しんちょく)をこまめに連絡し、顧客の不安を最小限に抑える工夫を徹底する。審査通過後には、冷蔵庫や洗濯機、カーテン、エレベーターや玄関ドアの幅まで細かく採寸。契約書類と併せて顧客に共有する。大型家具が入らないといった入居後のトラブルは、引っ越し全体の満足度を大きく下げかねない。事故を未然に防止することも仲介事業者の重要な役割だと考えている。
契約や重要事項説明(重説)では、専門用語をかみ砕き、事例を交えながら説明。「難しい」ではなく「楽しかった」と感じてもらうことを重視する。県外からの転居者には、エリアデータやハザードマップ、人口動態などをまとめた資料を提供し、生活イメージを具体化させる。加えて、住民票の異動や免許証などの住所変更が必要な手続きを網羅した引っ越しチェックリストも渡し、入居準備を包括的にサポートする。
信頼の積み重ね
鈴木社長は「契約はゴールではなく、入居後こそが本当のスタート」という。管理会社の領域に近い内容であっても、入居者からの相談には可能な限り対応。トラブル解決のワンクッション役を担う。小さな困り事でも迅速に対応することで、顧客の安心感は大きく高まる。
結果としてリピーターや紹介は自然に生まれているが、「紹介してほしい」と頼んだことは一度もないという。「目の前の顧客に誠実に向き合い、住んだ後まで責任を持つ。その積み重ねこそが、信頼と紹介を生む最大の要因」と鈴木社長は語った。
誠不動産
東京都渋谷区
鈴木誠社長
茨城県かすみがうら市出身。高校卒業後の1995年に陸上自衛隊へ入隊。その後、2000年に大手アパレル会社を経て、02年に不動産業界に転身。新築マンションの販売、賃貸仲介を経験後、09年11月に誠不動産を設立、代表取締役に就任し現在に至る。1人の顧客に本気で向き合うべく、集客・広告掲載を一切行わない「完全紹介制」がコンセプトの賃貸仲介を展開。「住んだ後に幸せになっていただける空間」を提供するこだわりと実績を持つ。
(最終回)
(2026年1月19日15面に掲載)




