創業75年の塗料メーカー、日研工業所(大阪市)が、浴室リニューアル事業を立ち上げた。耐久性が高く、肌に優しい、風呂改修専用の塗料を開発し、全国で施工する体制を整える。真田直彦社長と、事業を統括する山本匡赳氏に話を聞いた。
高耐久、肌に優しい専用剤開発
3年で1000件施工 URでも採用
日研工業所が浴室リニューアルサービス「frocoat(フロコート)」を事業化したのは、山本氏が入社した2022年だ。山本氏は、10年ごろからfrocoatの元になる工法の開発に関わり、浴室リニューアルの実績を重ねてきた。日研工業所としてこれまでに約1000件を施工した。このうち6割が賃貸住宅で、民間アパートに加え、独立行政法人都市再生機構(以下、UR:神奈川県横浜市)が管理する物件の施工実績が多くを占める。
UR物件で施工するためには、URが定める「全国共通仕様書」に、工法が採用されなければならない。frocoatは、ユニットバスの吹き付け塗装工法として採用されている。「URの厳格な基準をクリアしたことが、われわれの自信となっている。これまでの3年間で剥がれが発生したケースはない」(山本氏)
ユニットバスから在来工法の浴室に至るまで、幅広い構造に対応するのが特徴だ。これを可能にしているのが、塗料開発で実績のある日研工業所が新開発した、高い密着性を保持する塗料「バイオコートエコ」だ。タイル、ホーロー、FRPといった市場に流通する幅広い浴室に対応する。
価格は、ファミリータイプとして一般的な1坪サイズの浴室を23万円で施工する。材料費、施工費、床面に使用するシート貼りなどを含むパッケージとなっており、新品と交換する場合と比べて3分の1から半分程度の費用で済むという。
シンナー不使用 防カビ性能も
バイオコートエコは、浴室という特殊な環境に対応するため、三つの特徴を備える。
一つ目が、低臭性だ。一般的な塗料を使った場合、施工後数日は刺激臭が浴室内に残ってしまう。同製品は、原料にトルエン、キシレンを使用していないため、塗料特有の刺激臭がしない。
二つ目が、防カビ性だ。一般社団法人抗菌製品技術協議会(SIAA)の防カビ抗菌認証を取得した、抗菌剤を配合した塗料を使用する。社内試験では、カビの発生を確認したことはない。塗膜がある限りカビは生えず、22年の事業化以降、カビの発生に関するトラブルも起きていないという。仮にカビが発生しても、塗膜の上に乗っているだけで定着しておらず、中性洗剤で拭き上げるだけできれいに除去できる。汚れもつきにくい。
三つ目が、安全性だ。シックハウス症候群の原因物質となるホルムアルデヒドの放散が最も少ないF☆☆☆☆(フォースター)基準をクリアしている。特定化学物質障害予防規則に該当するトルエン、キシレンといった化学物質を含んでいないことが評価された。試験結果では、施工24時間後に水質検査を実施しても有害物質が検出されなかった。
「浴室リニューアル用の塗料は、施工後、硬化してからも、半年近く揮発が続くのが一般的だ。だが、業界では、承認された材料を使用する法規制やシステムが存在せず、消費者の安全性を担保する基準がない。われわれはこうした課題に応える体制を整えている」(山本氏)
特殊塗装の老舗 安全性能に実績
山本氏が浴室リニューアルに出合ったのは、個人事業主として土木関連の仕事を受けていた15年前にさかのぼる。とある現場で他社のスタッフから浴室塗装の話を聞き、興味を持った。その後、そのスタッフと共に事業化した。3年ほど続けると、初期に施工した現場で、剥がれなどのクレームが発生した。「同じように施工しても、剥がれが起きる現場と、起きない現場があった。その原因を探る中で工法の研究に進むようになった」(山本氏)
URの浴室吹き付け塗装工法の仕様書作成に携わったのは13年ごろだ。URとのやりとりで、施工までに2年を要した。
日研工業所に入社するまでは、塗料メーカーが販売する既存塗料の中から最適なものを選定していた。山本氏は、浴室リニューアルに適した塗料開発をメーカーにも掛け合ってきたが、開発には至らなかった。専用塗料の開発に着手したのは、真田社長と山本氏が出会った19年ごろだ。高温多湿な環境で劣化することなく、肌に直接触れても人体に悪影響がない塗料は、日研工業所の技術力により実現した。
同社は、特殊な用途で使用される塗料の開発と工業塗装技術を得意とする塗装専門企業だ。例えば、子どもが口に入れてもすぐに吐き出すよう、人体に影響なく苦味を感じる玩具用の特殊塗料の開発と塗装技術を持っている。カテーテル手術で医師が装着する医療用防護メガネのフレーム塗装では、樹脂成形品にエックス線を遮断する塗料を使用している。これも同社が開発した特許技術だ。同社の元にはさまざまな事業主から相談が入り、何万点もの素材を扱ってきた。そのたびに顧客のニーズに合わせた特殊な塗料と施工技術を開発してきた。
「山本から浴室リニューアルの話を聞き、面白そうだと思った。塗料の原型は1年程度で出来上がったが、苦労したのはどんな浴室の材質にも密着する施工技術の確立だった」(真田社長)
25年の年商は約12億5000万円だった。浴室リニューアル事業の年商は5000万円程度だが、今後10億円規模に育てることを目指す。
浴室リニューアルの主な方法と特徴
浴室リニューアルには主に三つの方法がある。浴室の劣化状況によって選択すべきものが変わる。
一つ目が、最も安価なグラスコーティングだ。日研工業所は、1坪タイプの場合10万円程度で施工する。初めに、浴槽や浴室パネルの表面を特殊研磨剤で研磨する。きれいになった表面を、自社開発したガラス被膜で保護する。透明なので劣化が進み傷や変色している場合は適さない。使用開始から10年程度の浴室であれば、グラスコーティングで再生できる場合が多い。
二つ目が、frocoatによる塗装だ。浴槽や浴室パネルに傷や変色箇所があっても、塗料で表面を覆うためきれいに仕上げることができる。20年以上使用した浴室には、塗装が適している。
三つ目が、新品交換だ。ユニットバスが壁から剥がれてきたり、異音がしたりするなど、構造上の問題がある場合には、新品への入れ替えが推奨される。
日研工業所
大阪市
真田直彦社長
日研工業所
大阪市
山本匡赳氏
(2026年1月19日13面に掲載)





