【2022新春特別寄稿②】事故物件ガイドライン ポイントと注意点

ことぶき法律事務所

法律・制度|2022年01月06日

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宅建業者の調査義務範囲を明確化

ガイドライン制定の背景

 不動産において過去に人の死が発生した場合、売主・貸主・媒介会社は、事案の内容・時間の経過・社会的影響等に応じて、買主・借主に対して心理的瑕疵(かし)として告知する必要があります。

 しかし、告知義務の対象となるかどうかの基準は必ずしも明確でなく、宅地建物取引業者によっては、人の死に関する事案のすべてを告知しているケースもあり、負担が過大であるという指摘がありました。

 今回、国土交通省から発表された「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」とする)は、現時点で妥当と考えられる一般的な基準を示すことで、告知義務の対象を明確化し、トラブルの未然防止を図ることを目的としています。

 ガイドラインでは、「宅地建物取引業者の対応を巡ってトラブルとなった場合には、行政庁における監督に当たって、ガイドラインが参考にされる」とされており、ガイドラインを遵守している限り、行政による監督処分の対象とならないという意味で、宅地建物取引業者の負担軽減が期待されます。

告知義務が否定される場合

 ガイドラインでは、次の場合には、人の死について告げなくてもよいとされています。
①賃貸借・売買取引において、取引の対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥(ごえん)など)。ただし、長期間にわたって人知れず放置されたこと等に伴い、特殊清掃や大規模リフォーム等(以下「特殊清掃等」という)が行われた場合は告知義務の対象。
②賃貸借取引において、取引の対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で①以外の死または特殊清掃等が行われた①の死が発生し、事案発生(特殊清掃等が行われた場合にはその発覚)からおおむね3年間が経過した後である場合。
③賃貸借・売買取引において、取引の対象不動産の隣接住戸・日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した①以外の死および特殊清掃等が行われた①の死。

告知義務が肯定される場合

 前記①~③以外の場合に宅地建物取引業者は、人の死に関する事案が、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合には、これを告げなければならないとされています(④)。

 告知義務の対象とされた場合、事案の発生時期、場所、死因(自然死・他殺・自死・事故死等の別)および特殊清掃等が行われた場合にはその旨を告げるものとされています。しかし、氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はなく、貸主・管理業者から不明であると回答された場合、あるいは無回答の場合には、その旨を告げれば足りるとされています。

死因・死亡場所期間の経過

 ガイドラインを死因・死亡場所・期間の経過という観点から整理すると、次のとおりとなります。

1.死因
 自殺・他殺の場合、告知義務の対象となります(前記④)。自然死・事故死の場合は、原則として告知義務の対象外ですが、発見が遅れ、腐敗等の事情により特殊清掃や大規模リフォームを行った場合には、告知義務の対象となります(前記①)。

2.死亡場所
 取引の対象不動産の隣接住戸・日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した場合は、自殺または殺人、自然死による特殊清掃等、事故死による特殊清掃等の場合でも、告知義務の対象外となります(前記③)。

3.期間の経過
 賃貸借取引の場合、告知義務の対象となる場合でも、発生後3年を経過すれば、原則として告知義務の対象外となります(前記②)。

宅地建物取引業者の業務への影響

 宅地建物取引業者は、不動産取引の媒介を行う際、告知義務の対象となるかどうかについて調査義務を果たす必要があります。もっとも、ガイドラインでは、宅地建物取引業者は、原則として、自ら周辺住民に聞き込みを行う、インターネットサイトを調査するなどの自発的な調査を行う義務はなく、売主・貸主に対し、告知書(物件状況等報告書)その他の書面に過去に生じた事案についての記載を求めることで調査義務を果たしたものとするとされています。

 また、調査の過程において、照会先の売主・貸主・管理業者より、事案の有無および内容について、不明であると回答された場合、あるいは回答がなかった場合であっても、宅地建物取引業者に重大な過失がない限り、照会を行った事実をもって調査はなされたものとして扱われます。

 宅地建物取引業者としては売主・貸主による告知書等への記載が適切に行われるよう必要に応じて助言するとともに、売主・貸主に対し、事案の存在について故意に告知しなかった場合等には、民事上の責任を問われる可能性がある旨をあらかじめ伝えることが要請されます。

 なお、前述の基準①~③に基づいて告知義務の対象外と判断される場合であっても、買主・借主から問われた場合や、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案については、告知義務の対象となるので注意が必要です。

 

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弁護士
塚本智康

 

 

2009年ことぶき法律事務所入所
13年公益財団法人日本賃貸住宅管理協会相続支援研究会委員
14年公益財団法人日本賃貸住宅管理協会法務委員会委員
14年全国賃貸管理ビジネス協会コンプライアンス委員会顧問
15年賃貸不動産経営管理士試験作問委員

(2022年1月3・10日29面に掲載)

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