2日間で1万6758人が来場【賃貸住宅フェア2023 開催レポート】
関東工務店,桂不動産,渋沢テクノ建設,スマサポ,SIRE(サイアー),LIFULL(ライフル),スマサテ,フィル・カンパニー,三菱地所,家いちば,On-Co(オンコ),0円都市開発,メイクスビュー,スターリンク,BoxBrownie.com(ボックスブラウニードットコム),DOORCOM(ドアコム),マサル
その他|2023年08月10日
7月19日・20日に開催した「賃貸住宅フェア2023」には、1万6758人が来場した。171社の出展ブースと、約80講座のセミナーを設けた会場は、全国から集まった来場者の熱気に包まれていた。今回は全国賃貸住宅新聞社、リフォーム産業新聞社、高齢者住宅新聞社による3社合同開催で、会場の東京ビッグサイトには延べ3万5000人が訪れた。
空き家の活用事例を1170人聴講
管理業参入を検討 外国人入居に活路
不動産売買を行う関東工務店(神奈川県海老名市)の営業部、久保井雄太さんは、空き家に関する情報収集を目的に来場した。今回が初めての来場だという。
主力事業の売買で知り合った家主から、所有する空き家の活用方法について相談を受けることが増えた。そのため同社では、空き家改修後に管理会社として、物件の管理を行っていくことを構想している。
フェアでは空き家活用サミット基調講演「世帯減少時代に住宅ストックをどう生かす? 空き家ビジネスの可能性と課題」を聴講し、空き家の再生事例について学びを得たそうだ。
久保井さんは「当社の商圏である海老名市は、スリランカ人などの外国人労働者が多いエリアだが、外国人は賃貸住宅への入居にハードルがあると聞く。空き家を賃貸住宅に改修することで、外国人の入居につなげられるのではないかと考えた。外国人対応に強い家賃債務保証会社の協力を得て、取り組んでいきたい」と話した。
関東工務店
神奈川県海老名市
久保井雄太さん(33)
バスツアーで家主50人と来訪
管理戸数2万1753戸の桂不動産(茨城県つくば市)は、約50人のオーナーと共に来場した。オーナーらは賃貸経営セミナーをいくつか聴講し、所有する物件の入居率向上などに役立つ情報を得たという。
バスを1台チャーターし、ツアー形式でオーナーを引率。希望者を募り、先着順で招待した。
2020年から、新型コロナウイルス下の影響で、オーナーらは賃貸住宅フェアに来ることができずにいた。参加者の多くは4年ぶりの来場で、最新情報に触れることができた。
渡邉宗明社長は「初めてツアー形式にしたこともあり、今回はバスを1台しかチャーターしなかった。だが、10組ほどのオーナーが先着順から漏れてしまい、『ツアーに参加できる人数を増やしてほしい』と要望があった。24年はそれに応え、より多くのオーナーと来場したい」と話した。
桂不動産
茨城県つくば市
渡邉宗明社長(48)
自社セミナーの講師候補探し
賃貸マンションや戸建て住宅の建設を手がける渋沢テクノ建設(群馬県前橋市)企画営業部の渕柳裕樹さんは、賃貸市場動向の情報収集や、同社で月1回主催する土地活用セミナーに登壇出演する講演者の発掘などを目的に、賃貸住宅フェアに来場。20日に行われた賃貸経営セミナーで登壇した半田啓祐氏、半田満氏によるセミナー「築古マンションを引き継いだ兄弟の建築、地域の価値アップ術」に参加した。「自社セミナーは家主向けに企画しているため、入居者が定住しやすくなるリノベーションの方法など、家主の実体験を聞くことができて参考になった」と感想を話す。
渋沢テクノ建設
群馬県前橋市
渕柳裕樹さん(39)
スマートロックの最新性能を体感
福本育夫オーナー(島根県松江市)が出展ブースで注目したのはスマートロック。所有物件に導入しているスマートロックのサービスが終了するため、その代替品を見つけることを目的にブースを巡ったという。「もう少し個別にコントロールできる製品が欲しいと感じたため、フェア会場での商談までには至らなかったが、近年、この分野もますます技術が進んでいることを感じた」と話す。
福本育夫オーナー(56)
島根県松江市
電球での見守りシステムに注目
九州大家の会会長を務める小場三代オーナー(福岡市)は、昨年に続き今年もフェアに来場した。「賃貸経営も時代の変わり目に来ているのではないか」と感じたという。「今回もIoT住宅設備関連を多く見かけた。災害大国の日本において、仮に電力がダウンした際に、どのように対応できるのか。今後、注視していきたい分野」と話す。
また、「クロネコ見守りサービスハローライト訪問プラン」には興味をひかれたという。電球自体にSIMが埋め込まれているため、追加で登録や設定が不要な見守りサービスだ。「Wi‐Fi環境のない居室に住む高齢者向けにも、このサービスであれば簡単に導入ができる」(小場オーナー)
小場三代オーナー(62)
福岡市
リノベ・修繕の企業選定を学ぶ
東京都内で賃貸住宅を約30戸所有する、加藤行康オーナー(東京都渋谷区)は、管理会社からの紹介で来場した。リノベーションや空室対策に関するセミナーを聴講するのが目的だ。
加藤オーナーは、先代が行っていた家主業に3年ほど前から関わるようになり、最近本格的に事業を引き継いだ。2代目、3代目オーナーの成功事例や、築古物件の再生事例などの話に興味を持ち、当日は「入居率20%でも満室に! 築古物件管理のコツ」のセミナーなどを聴講。
「特に築古物件の再生についての話は大変参考になった。経営立て直しの具体的な方法や、優良なリノベ業者・修繕業者の選定方法など、有益な情報を得ることができた」(加藤オーナー)
加藤行康オーナー(60)
東京都渋谷区
不動産テックピッチコンテスト
LIFULLが優勝 営業支援ツールに高評価
19日の午後、フェア来場者の注目を集めたのは、不動産テックピッチコンテストだ。独自性や社会貢献性を持つ不動産テックサービスを、開発者がプレゼンするイベントで、2年ぶり2回目の開催となった。エントリーをした13社のうち、書類選考を通過したのは、スマサポ(東京都中央区)、SIRE(サイアー:東京都目黒区)、LIFULL(ライフル:東京都千代田区)、スマサテ(東京都品川区)、フィル・カンパニー(東京都中央区)の5社。会場では、サービスの魅力や業界課題に対する有用性を、1社7分間のピッチで訴求し、審査員や聴講者が評価した。
優勝したのはLIFULLの「住まいんど診断」。心理学、統計学に加え、ポータルサイト「LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)」内の行動分析結果をもとに、入居検討者の性格を診断し、適切な提案方法を営業スタッフに示すサービスだ。審査員を務めた三菱地所(東京都千代田区)の井上和幸新事業創造部長は「これも不動産テックかと思わせられる斬新なアイデアだと感じた」と評価した。
LIFULLの石塚泰斗氏は「(賃貸仲介における内見数を含めて)1000万件の顧客体験がある中で、自分にあった暮らしの実現を支援できるよう引き続き取り組んでいきたい」と話した。
準優勝は、オーナーが大手ポータルサイトを使って自ら入居者を募集できる「ECHOES(エコーズ)」を展開するSIREだった。
空き家活用サミット
可能性探り、ニーズを紹介 3社合同企画、6講座盛況
全国賃貸住宅新聞社、リフォーム産業新聞社、高齢者住宅新聞社の3社合同の初イベントとして「空き家活用サミット」を7月19、20日の2日間にわたって開催した。6講座を延べ1170人が聴講。立ち見が続出し、住宅ストック活用に対する関心の高さがうかがえた。
初日のトップバッターとして、横浜市立大学国際教養学部の齊藤広子教授が基調講演を行った。テーマは「世帯減少時代に住宅ストックをどう生かす? 空き家ビジネスの可能性と課題」とした。245人が集まり、集中して耳を傾ける姿が見えた。
齊藤教授は「空き家が問題なのではなく、空き家に対する私たちに問題があるのではないか」と提起。「空き家をうまく活用することにより、地域をつなぐことができる」とその可能性について語った。
2日目は空き家マッチングサイト運営会社3社による座談会を実施。家いちば(東京都渋谷区)の藤木哲也社長、On-Co(オンコ:三重県桑名市)の水谷岳史社長、0円都市開発(北海道旭川市)の中村領代表が登壇した。
テーマは「空き家活用の本当のニーズとは」。各社が空き家のマッチング事例を紹介し、多種多様な活用方法があることを伝えた。
出展者の声
メイクスビュー、ホームページ制作を周知
ホームページの制作・運営を行うメイクスビュー(大阪市)は、仲介会社向けの完全オリジナルホームページ制作サービス「PENGUIN2(ペンギンツー)」を周知するため出展。
後日商談につながりそうな約20社と情報交換ができた。ブースには、ホームページ制作や集客で悩んでいる会社が多く相談に来たという。光田亮介社長は「出展者同士でつながりができ、一緒にセミナーをやろうという話も生まれた」と語る。
スターリンク、事業用保証、認知に手ごたえ
オフィスビルなどの事業用不動産を専門に、家賃債務保証サービスを提供するスターリンク(千葉県船橋市)は2回目の出展。
後藤雄一郎執行役員は「これからは、会社間の保証内容の違いにオーナーの関心が向かうだろう」と考えている。2日間でおよそ350人を接客する計画はほぼ達成。スターリンクが強みとする充実した保証内容、テナントの入居審査や、滞納発生時の初動対応などを周知できたよう
BoxBrownie.com、高品質の写真編集を訴求
画像編集やパース制作を手がけるBoxBrownie.com(ボックスブラウニードットコム:東京都千代田区)は、今回初出展。
展示サービスは、入居募集用の写真編集と、空室写真に家具画像を配置するバーチャルホームステージング。高品質な制作物を短納期・低価格で提供する。2日間で100人以上と名刺交換を行った。「コストの低さや注文の簡単さなどに絞ってサービスを説明できた」(上野志帆社長)
DOORCOM、セキュリティー機器を展示
住宅設備を提供するDOORCOM(ドアコム:東京都港区)は、スマートロック、スマート宅配ボックスといった設備と、それらを統合管理するクラウドシステムを提案した。
来場者層は、管理会社やオーナー、デベロッパー、施工会社など。オーナーはスマートロックなどのセキュリティー商品、管理会社は設備の管理システムを通した業務効率化に関心を持っていた。2日間で名刺交換枚数は400枚ほどだった。
マサル、漏水・防水施工を提案
漏水・防水施工をはじめとした集合住宅の大規模修繕事業を手がけるマサル(東京都江東区)は、今回のフェアが初出展だった。
個人オーナーを対象に、集合住宅の修繕を提案する。名刺交換枚数100枚に加え、収集した来場者情報は53件。ブース訪問者は、特に漏水施工の内容や金額などに関心を持っていたという。施工事例の写真をブース内に多く飾るなどして来場者に事業内容をアピールした。
24年は東京・大阪で開催
「賃貸住宅フェア2024」
【開催日】
東京会場 2024年8月6・7日(火・水)
大阪会場 12月5・6日(木・金)
【会場】
東京会場/東京ビッグサイト
大阪会場/インテックス大阪
【主催】
全国賃貸住宅新聞社
【入場】
無料、事前登録制
(2023年8月7日30・31面に掲載)